綾戸智絵 TOUR 2003

CHIE AYADO TOUR 2003 

 

2003 12.1 monday

岡山シンフォニーホール 

 ジャズと私と綾戸智絵

 コンサートの感想を書く前に、ちょっと「綾戸智絵」について、コンサート前の印象について述べたいと思います。彼女はジャズ歌手として、ほんのここ数年のうちに雑誌やテレビで知られるようになったと思います。こんなふうに書くと、そりゃあんたが知らなかっただけだと言われそうですね。ほんとにその通りだと思います。なにせ、歌手やら芸能人の名前なんて特に覚えようと思っていませんし覚えるのがめどくさいと思ってしまう私なのです。知らなかったからといって、現在の生活に影響があるわけでもないですしね。私が歌手の名前を知っているというのは、もう既に有名かよほどインパクトのある歌手なんですね。
 ジャズに限らず、その時の気持ちや雰囲気で音楽を聴いているわけですが、ジャズのジャンルに耳を傾け始めたのはいつ頃だったでしょうか。ジャズ、ジャズ、ジャズという言葉の響きは、何とも大人の音楽!という感じがしてきます。二十代の前半まだ若かった頃、東京の吉祥寺というところにトリオで生演奏を聴かせてくれる店があるというので行ってみました。勿論ジャズにお酒はつきものです。店内の照明は少し落としていたように記憶しています。その頃、ジャズなんてそれほど知っていたわけでもないし本当に好きかどうかなんて分からない頃です。ただ、バーボンが入ったグラスを片手に持ちながら、リズムに合わせてからだを揺らしていた。これが大人の音楽なんだーーー!。店でバーボンを飲みジャズを聴いて、ジャズをこよなく愛しているのではという錯覚を好んで過ごした時期があったように思います。
 その頃アパートに一人でいる時は、ベニイ・グッドマン、グレン・ミラー、ルイ・アームストロング、サラ・ヴォーンなどほんとにオーソドックスで軽いジャズを好んで聴いていたように思います。アパートにいる時まで、部屋を薄暗くしてジャズを聴くほどではなかったようです。根っからのジャズ好きではなかったのかもしれません(~o~)

 怪我をしてリハビリに数年を費やしていた頃は、ジャズなんて忘れていた時期がありました。その頃、精神的に余裕がなかったんですよ。

 今から十五年前ぐらいになるでしょうか、ジャズをこよなく愛してらっしゃる方と知り合いました。その当時既にデジタルの音楽CDというものが販売されていましたが、その方はジャズはやっぱりLPのレコード版で針を落として聴くのが一番で、アンプも真空管でなくてはだめだとこだわりを持っておられました。お宅を訪問するとLP版でジャズを聴かせてくれるのですが、おおーーっと、何やらそれまで忘れていたジャズの芽が目を覚ますのであります。親切なその友人は、私のためにいくつかジャズのアルバムをカセットに録音してくれました。今でも、たまに車のカセットレコーダーでジャズを聴きながら運転することがあります。なぜだか私の車にはCDプレイヤーではなくカセットレコーダーが付いているんですね。たぶん車の購入時にはナビを必要としていなかったのでカセットレコーダーを選択したんですね。現在はナビ付きの車が欲しい(~o~)

 最近はLP版を販売している店もなくなりましたし、オーディオはCDプレイヤーが基本のようです。デジタル音が好きということでもないのですが、時代の流れに逆らってまでLP版だけを聴くほどのこだわりはないようです。ジャズのCDはキース・ジャレット、ジョン・コルトレーンとかマンハッタン・ジャズ・クインテッドなどがありますが、どちらかと言えばやっぱりケニー・ドリューなどの軽めのほうが好きなようです。

 さて、ジャズについてそれほど詳しいわけでも好きで好きでたまらないというわけではない私なのですが、本屋でジャズの本を開いて見ることもあります。数年前、今注目のジャズシンガー綾戸智絵という特集がありカラー刷りで載っていました。けっこう歳がいっているように見えました。二十代には見えなかったな(~o~)
 この時「綾戸智絵」というジャズシンガーを初めて知りました。この本に載るまで、こんな歳になるまで、ぜんぜん名前を聞いたことがなかったけど、ほんまにジャズを聴かせてくれるんかいな、と思いながらそのジャズの本を購入してしまいました。その時にはお金を出してまで「綾戸智絵」のコンサートに行くなんて考えもしていなかったのに。(~o~)

 コンサートの感想

 以前、テレビに出演しているのをパートナーが見て、気に入ったのだろうか。岡山シンフォニーホールでコンサートをするという情報を聞きつけて、チケットの発売当日に電話予約してチケットをゲットした。普段予約したりチケットの購入に積極的でない人なので、オイオイ今回はえらいリキ入ってまんなぁと言うと、なにやら「綾戸智絵」のコンサートのチケットは日本で今もっともゲットし難いのだと教えられた。ほんまかいな(~o~)と半信半疑で聞いておりました。

 いざコンサートに行き始まる前は、生で本人「綾戸智絵」を見られるわけですからやっぱりワクワクしてきます。一曲目、ほんまにこれが本人「綾戸智絵」なんだ、となんだか胸躍るうちに終わってしまいました。
 コンサート会場に遅れてきた方がいました。その方の席がステージに近いところなので後ろにいる私の席からその様子を見ることができました。綾戸さんは、その中年のお客に「ゆっくり慌てなくていいですよ」と優しく声をかけます。言い忘れましたが、綾戸さんは現在大阪に住んでおられるようで、話口調はほとんど関西弁であります。
 東京の下町で神社やお寺を借りて落語家が寄席をやるとき、噺や気持ちに余裕がある落語家が、遅れて来たお客に「よう来なすった、よう来なすった、ささ、ずずいと前の方に来てください。あなたを待っていたんです。あなたがいなければ噺が進みません」などと後から来たお客のバツの悪さを取り払い皆を笑わせるのであります。綾戸さんのトークも落語家のそれと似ているところがあるですが、綾戸さんの場合は「まだ始まったばかりですよ。大丈夫。大丈夫。慌てないでいいですよ。一曲損しただけですがな!」なんて落ちをつけるのです。話の落ちまでつけるところはやっぱり関西人だなと笑ってしまいます。大阪で暮らしていると、話の落ちをつける術が自然と身についてしまうのかもしれません。
 そして、曲の間に話す内容が分かりやすくて面白いのであります\(^o^)/

 今回、各楽器の演奏者達をニューヨークから連れてきたということで、本場ジャズの雰囲気をそのままこのステージで味わってもらいたいというこだったので嬉しい限りです。曲の途中でそれぞれの演奏者のソロがあり、魂のこもった演奏は心に響いてきます。

 いつだったか忘れましたが、テレビの番組のなかで、「声が突然出なくなった時がありました」「その時はほんまにどうしようかと思いました。」と言っていたように記憶しています。綾戸さんはさらりと言ってのけ、また相手もそれほどそれに対して話を掘り下げなかったのでその場はそれですぐに別の話題になったような気がします。その後テレビで綾戸さんを観るたびにこの歳にしてこの健康的な明るさはなんなんだろう。「声が出なかったことがある」ということに起因しているのではないかと想像したりすることがあります。歌手の声が出ないということが、どれほど辛くどれほど悩まれたかなどは想像を絶することであり、私のような歌手でもない者に分かるはずもございません。

 人の運命とは不思議なものであります。そしていつも「幸運」・「不運」がついてまわります。何が「幸運」で、何が「不運」なのか分からないままに、その時を喜んでみたり悲しんでみたり悩んでみたりするようです。ある友人が人生「生きているだけで丸儲け」ということを言ったことがあります。奇跡的に命拾いした体験がありますだけに、今こうしてパソコンの操作を自分でできるということ一つとってみても、この人生「生きているだけで丸儲け」という言葉がなんとなく分かるような気がしてきます。
 しかしながら、私は常日頃、「生きている」というよりも大きなはかり知れない力によって「生かされている」というふうに感じております。「生かされている」という気持ちは、ことあるごとに自分の気持ちを抑えたり感謝の気持ちを生み出したりするようです。時として説明のつかないことがこの世にあると感じますが、自分のおかれた状態を全能の主に又は周りの方に感謝することがしばしばあります。この感謝する気持ちがあれば、なんだか幸せになれそうな気がする今日この頃であります。

 綾戸さんがステージの上で底抜けに明るく、歌っておられる時に楽しくて楽しくてたまらないという顔の表情が、とても幸せそうに感じますし私なりに身近に感じたりしています。まぁ、勝手な私の推測がそう思わせるだけかもしれませんけどね。(^_^)

 ジャズでは楽器での即興というのをよく耳にします。即興というのは、その場の雰囲気やのりで、その場で思いついたメロディを演奏することだと思っています。即興演奏では楽器の巧みな高度の技術だけでなく素晴らしい感性を必要とするようです。ソロでもなかなかできるものではありませんが、他の人と一緒に即興で演奏するのは至難の技であろうと思っています。今までジャズ歌手の即興というのを聴いたことはありませんでしたが、綾戸さんの場合、身体の芯までジャズの血が流れているのでしょうか、即興で歌ってしまうんですよね。綾戸さんのステージはほんとにこちらまで楽しくなるのですが、即興で地元の名物などを入れて歌ったりするのでよけい親しみを感じてしまいます。ジャズ歌手の即興で歌詞をかえて歌うというのを初めて聴きました。のりのりで楽しくて気持ちがいいですね\(^o^)/
 
 また、友人が御三家(郷ひろみ、野口五郎、西城秀樹)の郷ひろみを好きだと言っていた頃、綾戸さんはフランク・シナトラに興味を持っていたという変わった子だったとか。そう言えば、「君達女の子、僕達男の子、ヘヘヘーイ、ヘヘへーイ♪・・・」という郷ひろみのデビュー曲を思い出します。そんな当たり前のこと歌ってどこがいいのかさっぱり理解できなかった。それでもクラスの女の子達は郷ひろみ派が多かったように思います。なんでやねんと思いながら学校に通ったものです。その頃は「郷ひろみ」の良さなんて分からなかった。今でもあまり分かっていないようですが(^_^)
 綾戸さんもそういう女子高生の時期があったようで(^_^)、現在は自分のことをステージで「おばはん」と言っています。それを聞いておもろいおばはんやなぁと感じておりましたら、よーく考えてみますに、わたしのほうが年上のようなのです。あちゃぁーーー、こっちは「おっさん」かいな(^_^;)

 あの若さ?で子供のようにはしゃぎながらステージの端から端まで動きまわり、ほんとに幸せそうに歌うのを見るとこちらまで幸せになって来るようです。
 若い歌手が歌うことが好きで好きでたまらない。という「好き」というのとはまた違った気持ちが伝わってきます。
 綾戸語録で「一日一生」という言葉がライブの途中に出てきます。この言葉をさらっと言ってのける「綾戸智絵」になんだか好感をが持てるような気がします。
 NHKの紅白に出場することが決まり有名になりましたが、「ジャズがちょっと歌えるおばはん」と思ってくださいと言える「綾戸智絵」に親しみを感じたりしています。

 ただ音楽を聴いて楽しむような私に、ジャズという音楽がほんとのこと言ってどういうものかなんて分かりゃしません。しかしながら、「綾戸智絵」のコンサートは楽しくて面白いと感じさせてくれます。
 機会がありましたら、ぜひコンサートに行ってみて「綾戸智絵」の歌とトークと雰囲気を楽しんでみてください。

平成15年 12月上旬現在 

 

 

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