車椅子でイチゴ狩り

(観光イチゴ園 サンシャイン・ヴィレッジ)

SHIGA
STRABERRY FIELD

改良前その1               改良前その2           改良後その1

◎改良前はブロックが地面より高くなっていますが、改良後はブロックが見えない。写真のように標準サイズの車椅子が通れるようになっています。 

平成12年2月18日  写真提供 松井賢一

 ◎イチゴ園の概要と結果報告 

 栗東町十里では、湖南地域初の少量土壌耕栽培によるイチゴ栽培が始まった。また、車椅子に対応するバリアフリー(車椅子対応)の観光イチゴ園とするため検討を進めている。
 この施設を建設しているのは、寺田忠良氏(45)で元JA栗東町葉山支店長(営農課長でもあった)である。平成10年12月退職。半年間専業農家で研修後、昨年8月より普及センターの勧めでイチゴベット栽培に取り組むこととなった。このベット栽培は1メートル高・幅24センチのベットでイチゴを栽培するものである。

 さて、県内のイチゴはほとんど直売されている。このイチゴ園をPRする良い方法がないかと考えていたとき寺田氏から「1メートル高さにイチゴが成るのなら車椅子が入れる観光イチゴ園にしては」と発案された。寺田氏の亡き母親は7年間車椅子生活であったためその介護経験がこのアイデアのきっかけであった。私自信も高島普及センターで車椅子の方と5年間仕事をしてきた経験もありそれを活かして検討を進めた。

 さて、バリアフリーに向けて次のように施設を改良した。
@少量土壌ベットの間隔を建築基準法で定められた車椅子の通過できる幅75センチに対応するよう80センチとし通路を広くした。(県栽培指導指針65センチ)
Aベットをハウスの真ん中で分割し車椅子がハウス内でターンできるよう140センチの空間を持たせた。
B車椅子の方のひざ高40センチに合わせて水平直管パイプを48センチの位置に上げベットに対して車椅子が正面を向けるようにした。
Cバルブをベット内側方向に設置し万一の事故を防止するようにした。
D車椅子がスムーズに通れるよう通路を一方通行にする。

 去る2月3日、施設がほぼ完成したため実際に寺田氏が車椅子に乗ってイチゴハウス内をチェックしほぼ問題なく通ることができた。今後、県立福祉用具センター小西主任指導員(作業療法士)の指導を受けさらに改善を進める予定である。

 なお、インターネットで調べたところ岡山市郊外のイチゴ園で一部車椅子に対応するイチゴ園があった。しかし、イチゴ園全体で健常者とともにイチゴ狩りができるイチゴ園は見つからず日本初の試みではないかと思われる。また、この施設を園芸療法の場として車椅子患者にイチゴ狩りをさせるなど病院や老人ホームとの連携も視野に入れ展開を模索したい。

 ご意見・ご感想メールをお願いします。 

 「湖南地域農業改良普及センター」 〒525-0034 滋賀県草津市草津3−14−75
  рO77−567−5421  改良普及員 松井 賢一(Eメール:shigakon@mx.biwa.ne.jp

平成12年2月6日 松井賢一

◎車椅子イチゴ園報告 その一 

 2月8日滋賀県立福祉用具センタ−の小西主任指導員(作業療法士)に、実際にイチゴのハウスへお招きし車椅子を使って指導願うこととなりました。
 また、2月5日滋賀県彦根市にある聖泉短期大学・介護福祉学科の牧教授にも相談に伺ったところ、非常に興味を持たれて一度学生とともに現地を見学したいとのこと。日程を調整中です。
 牧先生によると、車椅子の方以外にも、たとえは視覚障害者の方にもイチゴ園へ入ってもらえるようにしたら、イチゴの臭いやイチゴの触感・音・などを感じてもらえるのではと新たな提案をいただきました。このことも、後日、報告します。

平成12年2月6日 松井賢一 

◎バリアフリーイチゴ園指導経過 

 平成12年2月8日AM10〜12滋賀県栗東町十里 イチゴハウス現地
 滋賀県立福祉用具センター・小西京子主任指導員(作業療法士)より実際に標準型(車幅60センチ)車椅子を使って現地で指導いただいた。
  @観光イチゴ狩りをするのなら、先ずトイレがどこにあるのか。
  対 応
   ○車椅子対応の仮設トイレを設置する
      (180p×180p程度のスペース)
   ○ポータブルトイレと「かこい」を設置する。
   ○1q離れた所の公民館を利用する。(但し日曜日が休み)
   ○300b離れた体育館の外便所(電車便所)に手すりと洋式便座を置いて対応する。
   ○2〜3年後300b離れた所に小さな公園が建設予定でそこには身体障害者用トイレ設置予定
  Aイチゴベットの高さが100センチであるが、子供の車椅子使用者には若干高すぎのではないか。たとえば一部のベットを低くして子供用にすることも考えてはどうか。
  対応:イチゴベットの高さを10センチ下げると栽培管理時の作業姿勢が腰を曲げなくてならなくなる。農家側の作業性が悪くなるので改良は難しい。養液を一斉に流しており一部のベットの位置が下がるそのベットへの養液量が増加し調節が難しくなる可能性もある。
  B「つえ」歩行者の方がイチゴ狩りをする場合
  対 応
   ○地面に障害物がないようしつまづかないようにする。
   ○イチゴのベットに手すりの役割をするものを設置する。
   ○ベットの下に「つえ」をための配慮が必要。
   ○ビニルハウスの入り口の段差・溝を解消する。
   ○ベットにもたれかけられる場合を想定しベットの強度を再検討する。
   ○休憩用ベンチ(40p高)を随所に設置する。
   ○配管パイプなど壊れるものはガードを設置し、赤色(白内障患者対応)に塗ることで注意を促す。

 今後も小西氏より指導を頂けることとなっています。 

 「湖南地域農業改良普及センター」 〒525-0034 滋賀県草津市草津3−14−75
  рO77−567−5421  改良普及員 松井 賢一(Eメール:shigakon@mx.biwa.ne.jp) 

平成12年2月15日 松井賢一 

◎車椅子イチゴ園報告 そのニ

 車椅子イチゴ園について地元NHK大津放送局より3月15日午後6時からNHK「イブニングネットワーク関西」で生中継されます。関西地域のみですが、これによって観光農業の考え方に変化があればと思っています。

平成12年2月19日 松井賢一

◎観光イチゴ園のヒット商品「いちごシフォンケーキ」販売

 寺田忠良氏(45才・栗東町十里)の少量土壌培地耕栽培による観光イチゴ園「バリアフリーいちご園」は、4月15日オープン以来大きな反響のもと延べ1,500人の入園者を迎え5月31日閉園した。みやげの「いちごシフォンケーキ」はヒット商品として450個(@800円)を販売した。 昨年12月、イチゴ園入園者の客単価を上げるためおみやげ品の開発を提案、寺田氏の妻が常連の洋菓子店「RICOTTA・リコッタ」(栗東町綣・オーナー西垣直員氏)からプロの助言を得た。結果、「イチゴは加熱すると風味がなくなり食感も悪くなるため生で使うか、ジャムとして使うのが本来。その欠点逆手に市販されていない商品として、いちごの小片を練り混んだ「いちごシフォンケーキ」が提案され試作検討を重ねた。「おみやげ品」と言う観点からの商品が誕生。洋菓子は専門的な勉強をして10年修行してやっと1人前とのこと、加工技術もさることながら加工場や労力面等を考慮し、助言・試作をお願いした洋菓子店に製造を依頼しいちご園でのみ限定販売を行った。 この取引が縁で極少いちごや果梗(つる)をつけたいちご等市場では入手できないいちごを使った差別化した商品が開発 され、クリスマス前には新鮮で荷くずれしていないいちごを1日3,000粒供給してほしいとの話もあり新たな販路拡大が見込まれている

平成12年6月4日 松井賢一 

 1月末頃に松井氏から「車椅子でイチゴ狩り」を楽しんでもらうための準備をしているという内容のメールを頂戴しました。それから逐次報告を受けこのページの結果報告となったわけです。当初「伝言Q&A2000」のほうへ少し掲載していたのですが、ぜひ皆様にも詳細に知って頂きこれからの観光イチゴ園のあり方を考え、また事例として参考にしてもらいたいと思いこのページを作成しました。

 この観光イチゴ園「サンシャイン・ヴィレッジ」は、寺田氏が経営するイチゴ園なのですが、湖南地域農業改良普及センター(担当 松井賢一)の指導で、上記のイチゴ園報告にありますように技術的指導とともにこれからの観光イチゴ園のあり方を一新する試みでもあると、松井氏が広報などにも努められて各方面へ積極的にアプローチされているようです。小生へのメールもわずか一ヶ月の間に30通を超えあまりの熱意に心を動かされ、小生も実際にイチゴハウスを見学に訪問したほどです。
 この試みは、従来の健常者のみを受け入れるという利益追求型ではなく、多少のリスクを伴っても健常者だけでなくハンディを持っている人々にもイチゴ狩りを楽しんでもらいたいという温かい熱意が感じられますし、これからの社会のあり方を先取りするようなイチゴ園であると感じています。健常者・障害者(この呼び方分け方に疑問があるが・・・・)その他老若男女を問わずこのイチゴ園という空間の中で一緒に楽しんでもらいたいと願っております。

 なお寺田氏はインターネットをされておられないようなので、「車椅子でイチゴ狩り」についての感想がありましたら「湖南地域農業改良普及センター」松井氏宛にメールを出してあげてください。

by sennin  

イチゴ園 「サンシャイン・ヴィレッジ」

  看板と身障者用トイレ「サンシャイン・ヴィレッジ」

(更新) 平成14年3月上旬 現在「案内」と「マップ」  

イチゴ園の「案内」と「マップ」(更新)

観光イチゴ園の概要と経過報告

バリアフリーイチゴ園報告

バリアフリーイチゴ園 その後の活動報告

平成14年バリアフリーイチゴ園の案内(更新H14.3.5) 

2002年イチゴ狩り報告(H14年8月) 

その他

(OTHER)