今回ご紹介する家は、ご自身がより高齢になった時にでも対応できるように、将来を見据えて建てられた山田氏のお宅です。
山田氏は「岡山県高齢者サ−ビス相談センタ−」の住宅専門相談員をされている関係で、高齢者の相談を受けているうちに他人ごとではなくいずれ訪れる老いというものに対してどのように接して行こうかと、自分自身の身体が元気なうちに将来のことを見据えて建てた家だそうです。
その建てた自宅を、住宅のリフォームを考えておられる方やこれから家を建てようと思っている方々の参考になればと、バリアフリー住宅(研究住宅)としてお宅を拝見できるようになっておりましたので訪問させて頂きました。
詳細は「サンワーク技術」のHPを見て、電話かメールでお問い合わせください。
左上写真の右スペースが駐車場になっており、階段かスロープで玄関まで上がれます。スロープの途中では水平になっているところがあり、少し休めるようにとの配慮がなされていました。
階段・スロープともに手すりが付いています。玄関は4枚戸で有効幅員1m以上とゆったりとしていて広い。玄関のレールは埋め込み式で車椅子でも段差を感じさせないぐらい楽々であります。この玄関を入ると、上がりがまちなどはなく内はフラットになっています。
靴を脱いで最初の引き戸(埋め込み式レール)を開けるとリビングがあり、畳の部屋・寝室(埋め込み式レール)とは扉一つで接しています。
畳の部屋の出入り口の敷居には少し工夫がなされておりまったく段差を感じさせない。写真上の寝室の出入り口は全開すると1350mmと有効幅員が広い。ベッドが通れるようにとのことです。
右上写真は車椅子を利用するようになった時にでも、使用できるようにキッチンのシンクの下の扉は取り外しが可能になっていました。
左上写真のトイレ(扉は埋め込み式レール使用)は現在車椅子では使用不可であるが、将来介助が必要になった時あるいは車椅子を使用するようになった時に、扉側の壁を取り外しスペースを広げることが出来るとのことだ。将来を考えた設計がなされているようです。
風呂場の出入り口にはグレーチングがあり、シャワー水栓には火傷予防のカバーが付いていました。手すりも要所々に設置されており、また移乗のことを考えて浴槽縁が座れるようになっておりました。
洗面台・幅木・手すり・スライド式の収納や冷蔵庫を移動すればキッチンが広くなったりといろんな所に工夫されており、このページで詳細にすべてを説明できませんので、実際に一度拝見し体感されるのが一番良いと思っております。
現在山田氏も奥様もお元気なのですが、どちらかが車椅子を利用するようになった時でさえも過ごし易く、また介助し易いようにあえて平屋建てにしたそうです。
そして、高齢者にとって安全でいつまでも自立できる住宅、高齢者でも介護し易い住宅、高齢者にとって楽しい集まりができる住宅を目指して建てられたということです。
この家の感想を申しますと、スロープの設置、ドア・廊下の有効幅員や各部屋のスペース、幅木を3段重ねて車椅子のフットレストから壁面を守ったり、電磁調理器の使用、コンセントの高さやスイッチの高さに気を配っていてバリアフリー住宅として充分満たしていると感じました。
その上に、将来車椅子や床走行式リフトの利用に備えて、直接目には見えないですが床下地を強固にしているとのこと、トイレを広げられるようになっていることやキッチンを車椅子でも使用可能にできるなど将来を見据えて建てられた家であるということで、「備えあれば憂いなし」このような家であれば老後が安心だろうなと素直に感じたしだいです。
家というものは本来その家族の人数とか住んでいる方々の性格を反映するものだと思っております。ですから、他人の家を見て自分にとっては物足りないとか使いにくいとか思う方がいるかもしれませんが、人それぞれ性格も身体状況も違うのですからそのように感じても当然だと思います。
しかしながら、皆加齢によって高齢者となるのですからその時の準備をしていたいものだと痛感致しました。
肝心なことは、現在の家があるいはこれから建てる家が、将来自分が高齢者となっても過ごし易い住宅であるか、また家族の者が介助し易い住宅であるかどうかであると思います。
単に住宅金融公庫のバリアフリー基準を満たしているというのではなく、将来の身体機能を考えて本人や家族に合ったバリアフリー住宅を考えて行かなければ老後を安心して送ることができないのだと教えられました。
どうか、皆さんも将来を見据えて後悔をしない住宅を手に入れてください。
平成13年3月