住環境の整備は、ご本人(高齢者・障害者などの当事者)や家族の意志を尊重しながら、ご本人の身体の状況や既存の住宅環境によって考えるべき問題だと思っております。
長年住んでいる家に愛着を感じて、段差があっても自分さえ我慢すれば良いと思っておられる方がいるかもしれませんが、歳を増すごとに物が見えにくく、足が上がり辛くなって行くことで、ほんのちょっとした段差につまづき転んで骨折し、そのうち寝たきりとなる場合もあります。
身体が元気なうちに動けるうちに、介護保険制度や市町村の住宅改造補助などを利用して住環境の整備をしておくのも、これからの人生を長く快適に過ごすのに必要なことだと感じています。
特に、自分が車椅子を使用しているとか、介助者が介助用車椅子を押しているとか床走行式リフトで介助しようと考えているならば、それに対応するように住環境を早急に整備した方が良いかもしれませんね。
一口に住環境の整備と言っても、車椅子や床走行式リフトの使用のために、扉の開口を広げたいけれども構造的にどうしたら良いのか分からなかったり、壁に手すりを付けるにしても壁の中に補強がない場合は補強板を取り付けてから手すりを取り付けなければなりません。
個々の住宅の構造は違いますから、ここでは大まかな基本事項だけでも話しておこうと思います。
住環境整備で2室以上で共通的に適応される基本的共通事項は以下の通りです。
○屋外・屋内での「段差」をなくする。
道路から玄関まで階段にしない、段差を無くしてゆるやかなスロープにする。(歩行段階にあるパーキンソン病の場合は、スロープはバランスをとりにくいので、蹴上げが110〜160mm踏面が300〜330mmぐらいの階段の方がいいかもしれません。)
車椅子の場合、玄関で上がりがまちが高い場合は、段差解消機を設置したりして高さを合わせたり、掃き出し窓口の方にスロープや段差解消機を設置する方法もあります。歩行可能な方は式台などを置いて段差を小分けにする方法があります。
廊下・洋室などから和室(畳の部屋)に移動するときに敷居の高さだけ段差があったりしますが、すり付け板などでスロープ状にしたり、改修の場合には根太の高さを変えることで床面レベルを同一にする方法があります。
○手すりをつける。
手すりの太さ、取り付ける位置に気を付けて、そして下地補強をしておくことを忘れない。手すりの支持は、横手すりの場合、手すり下部から「受け金具」で受けるようにする。
○車椅子や床走行式リフトなどの福祉機器が使い易いように出入り口の幅員やスペースを確保する。
○視覚障害や聴覚言語障害などにも対処する。
住環境の整備は、当事者の身体機能と家族の生活様式によって個々に違ってきますので、整備しようと思っておられる方は適切な改修事例を沢山お持ちの方に相談されるのが良いかと思います。「福祉住環境コーディネーター」の試験に合格しておられる方に相談されるのも良いかと思います。