町角のバリアフリーの意識

4) 視覚障害者のための点字誘導ブロックと車道と歩道との境の段差について

横断歩道 車道と歩道の境の段差 放置自転車

 先日、某所にて視覚障害を持っておられる方と知り合いになることができました。

 この社会のなかには、さまざまな障害を持った方々がおられることを認識していたつもりだったのですが、お話しを聞いているうちに何も理解していなかったことに気付き頭を何かで打たれたようなショックで情けなくなりました。

 と言いますのも、車椅子では前輪のキャスター(直径約12cmのこまの部分)に衝撃がなくスムーズに通行できるようになるべく平らな道や緩やかなスロープを望むものですが、視覚障がい者は白い杖で障害物があるかないかを探りながら歩行しておられるようなので、まったく段差がないとか判別しにくい段差の高さでは危険な場合もあるということです。

 特に横断歩道のところで、現在車道から歩道との境のところに、中央上写真の矢印の所に1.5〜2cmの段差があります。(車道と歩道との段差を少なくしようと整備された横断歩道での段差の高さです。) この高さは健常者にとっては何でもないことなのですが、車椅子を利用している者や視覚障害者それに足が思うように上がらない「すり足歩行」の高齢者にとっては、このわずかな段差が大問題なのであります。

 それぞれに考えてみますと、車椅子では段差の高さが5mm以下であれば衝撃を体感しつつも平地と同様に車椅子を走らせることができるようです。勿論、身体状況によって異なるとは思いますが、どうにか走らせることができる段差の高さだと思っております。

 視覚障害を持っておられる方々は逆に段差の高さがあった方が白杖によって判別し易いということです。

 視覚障がい者のなかにも段差に対して感の鋭い方とそうでない方がおられるということなので、一概に段差の高さを示せないともお聞きしました。 

 すり足歩行の高齢者について申しますと、福祉住環境コーディネーターのテキストでは住宅内で転倒しないように5mm以下にすることを推奨しています。戸外でも段差は少ない方が歩行し易いと想像しています。

 さまざまな身体状況を持っている人達で構成されている社会では、それぞれ違う身体状況の人達すべてが満足のいくように施設や設備を整備することは非常に困難だと考えられます。 段差の高さ一つとってみても、上述の考えがあるのです。違う障害を持った人が聞いたら、また違った問題を提議されるかもしれませんね。

 この社会で過ごしていくには、お互いのことを思いやりながら物事を決めて行かねばなりませんが、お互いの妥協点を見つけるのも大変難しいと感じております。

 また、岡山県では、点字ブロックの大きさ(縦30cm×横30cm、突起部分5mm程度)や取付け位置(歩道では道路境界線より60cm、但し歩道の幅員に余裕がある場合は60cmでない場合もあるようです。)も決められていますので、右上写真のように放置自転車などの障害物があるととても危険だということです。

 現在全国の道路で、横断歩道のところで車道から歩道との境の段差は2cmとなっているようですが、平成13年4月から岡山県では全国に先駆けて「岡山県福祉のまちづくり条例」が施行され、その整備マニュアルには段差を1cmと表示されております。

 それぞれの障害を持っておられる方々からお話しを聞いて出された結果であろうと想像しております。

 岡山県では、今後造られる道路及び改修の際にこの「福祉のまちづくり条例」に基づいて施工していくようです。この条例は不特定多数の人が利用する生活関連施設(病院・鉄道の駅・建物以外の交通機関施設・道路・公園など)と、用途面積によっては特定生活関連施設としてコンビニ・喫茶店・共同住宅などにも、新築・改築などをしようとするときには、事前にその内容の届け出(用途面積2,000u以上の建築物は協議)を必要とするようです。
 岡山県だけでなく、誰でもが安心して快適に過ごせるような「まち(市町村)づくりに」を目指した精神が全国に広がっていくことを願っております。

 段差の高さの問題だけではありません。信号が変わった時に流れる音楽の音量の問題もあります。視覚障がい者も加齢にともない音が聴きとりにくくなって来ます。

 車や雑踏の騒音のなかで青信号のための音響が聴きとりにくい場合もあるそうです。もしも、信号機の近くに住宅があるならば、音の大きさによってはそこに住む人にとっては雑音として苛立つものとしか考えられないかもしれません。音量についても、それぞれの立場から考えてみると難しいものがあります。お互いのことを考えて、場所によっては音量を調節する必要があるかもしれません。

 また、岡山では青信号時の音楽と言いましょうか音が「かっこう」と「ひよどり」ということですが、県外に行くと「とうりゃんせ」であったりもするようです。現在全国的に音楽(音)は決まっていないようなのです。ですから、他県へ行った時あるいは他県から来られた視覚障がい者にとってみれば、聴いたことのない音であったなら、いつ横断歩道に出て歩行していいのか分からないようなのです。

 音響信号機の音楽は全国的に統一してもらいたいとも言っておられました。

点字誘導ブロックって黄色ばかりだと思っていた
のですが、倉敷チボリ公園の周辺では左写真の
ようにグレイっぽい色の点字誘導ブロックを敷い
てありました。色についても全国的に統一されて
いないのであろうか。

 

車椅子を介助者する人へのアドバイス 

 最後に、車椅子を介助者する人へのアドバイスです。

 交差点で信号が青色の時でも、道路幅が広いと距離がありますから介助者は急いで渡ろうと小走りになりがちになります。そのまま歩道までいっきに渡ろうと試みる人がおられますが、これは危険です。

 前述でお話ししましたように車道と歩道の境目には高さ2cmの段差がありますが、この2cmの段差を車椅子の前輪がスムーズに超えられないでここで止まってしまうので、段差にぶつかる勢いによっては車椅子に乗っている本人が前に飛び出して大怪我をする可能性がありますので、くれぐれも介助者は段差に気を付けてください。

 ゆっくりと余裕を持って渡りましょう。

 また、横断歩道のところで車道から歩道との境の高さ2cmの段差はしかたないとしても、その段差を超えて歩道側に急な坂道とか同じ歩道の幅のなかに勾配の違うところもありますので、介助者はなるべく勾配の緩やかな平均化したところを選んで通ってください。

平成13年7月 

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