A、石碑と小さな日時計 | B、大きな日時計周りとココスヤシ | C、休憩所周り |
造園デザイン科 3年 13名(平成24年度)
大正6年(1917年)4月27日岡山県児島郡興除実業学校として認可され、昭和42年(1967年)に創立50周年記念として「50周年記念庭園」が作庭されたようです。
本年度は、昨年度に引き続き昭和40年度・昭和41年度・昭和42年度の卒業生一同から寄贈された「50周年記念庭園」のバリアフリー化パート2であります。
「50周年記念庭園」は今から40年以上経っていますので、バリアフリー(1974年国連障害者生活環境専門家会議の報告書のなかで使われた)という言葉は、まだ日本で使用されていなかった時代です。ですから、ページの一番下の写真で分かりますように、利用対象者は歩行者のみと想定してつくられたと思われます。
庭園の紹介に入る前に、まずバリアフリーとUD(ユニバーサルデザイン)について記述しますと、バリアフリーとは、新しくつくる建物や既にあるものに対してのバリアをなくするという物理面だけでなく、情報面(手話・音声・字幕・映像など)や制度面(バリアフリー新法)、人の心といった精神面などの様々な障壁を取り除いて、高齢者・障がい者(手足の障がい・視覚障がい・知的障がい・精神的障がいなど)・乳幼児連れ・外国人・その他困っている人などが社会に参加できるようにすることであると思っています。
UDは、新規につくるものについての製品や人をとりまく環境づくりについて7つの原則(公平性・柔軟性・単純性と直感性・認知性・安全性・効率的で疲れない・利用のためのサイズと空間があること)があり、最初からバリアのない世界を目指していますが、それは主に物理面についての原則であると考えています。
現状ではバリアフリーとUDのどちらの考えが優れているかを問題にするのではなく、「よりよい社会」そして「過ごしやすい町づくり」にしていくためには両方の考え方が必要であると考えています。
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公共性の高い庭園については、利用者が使いやすいかどうかで評価される場合が多いと思いますが、このページでは皆さんが使いやすい庭園になるまでの過程で、苦労したことや工夫したことなどを説明したいと思っています。
今年度の庭園施工では、「かけ橋」の作り直し、小さな日時計がある石碑とその周り、そして大きな日時計と休憩所がある広場など、一つの場所でさえ大変なのに三ヶ所を仕上げなけらばならないのですから大変な施工であったと思っております。
なおかつ「かけ橋」は、一度作ったものを解体し再度作り直ししましたし、石碑の移動には校内にあるクレーン車では持ち上がらないので、チェーンブロックと三脚と人力で石碑の移動に一週間かかったと聞いております。何げなく眺めている庭園やその中にあるものについて、目に見えていないところに工夫や苦労それぞれに物語があるものなんですね。
さて、40年以上前につくられた「50周年記念庭園」について、今年度整備される前の様子がページの一番下の写真で分かりますが、サツキの低木が沢山あり大きな日時計まで車いすでアクセスすることが難しいのが分かると思います。私には入って行けない無縁の場所だと感じていました。
石碑や平成15年度の「四季を彩る庭」で作成された「木製のかけ橋」の整備前の写真もあります。
左上写真Aは、昨年度の正面入口の傍に設置している石碑と小さな日時計です。インターロッキングブロック舗装され、見違えるほどに石碑のプレートや小さな日時計が綺麗になりました。腰掛けるために伐採したセンダンの木のベンチもあり、皆さんが庭園に入りたいと思うような環境に仕上がっていると感じております。
中央上写真Bで分かりますように、先輩方が寄贈してくれた大きな日時計を残しながら、いかに自分達らしい庭園のバリアフリー化ができるかが課題だったように思います。
大きな日時計の石の囲いの中には、オタフクナンタン、ハクリュウ、タマリュウなどが植栽され以前より華やかになっています。石の囲いの高さは、インターロッキングブロックより32cmの高さであります。
ココスヤシを2本植栽し、広範囲にインターロッキングブロックを敷き詰めているのが分かると思います。長い文字とハートマークの多用が今年度の庭園の特長でもあります。
右上写真Cは、今年度の生徒さんが2年生の時に、世界らん展日本大賞2012に出品した待合(まちあい)を、この庭園で休憩所として設置したものであります。待合(まちあい)とは、茶道でいう露地(茶室に付属した庭)に設けた休憩所のことです。 校内にあるバリアフリー庭園は、どの庭園もベースに露地や日本庭園の考えがあり、バリアフリーやユニバーサルデザインとの融合を目指していこうとしているように感じています。
世界らん展で作成した待合を休憩所として設置したことで、生徒さん達はより庭園への思い入れが強くなったようです。
「かけ橋」の作り直しや石碑の移動や待合の解体と組み立てにかかるパーツの破損の作り直しなど、当初計算にない作業時間があったにもかかわらず、三ヶ所の施工を三学期までに仕上げてきたのは、さすがに造園デザイン科の生徒さん達だと感心しております。
庭園全体の構想についての質問に、設計責任担当者の河内さんのレポートに、皆さんが立ち入りやすい環境になるようにし、皆さんが安全に利用でき楽しめるようにしました。と書いてくれましたが、ひと目見て庭園のなかに入って行きたいと思う気持ちにさせるというのは大変大切なことであると思います。
ハートマークのインターロッキングブロックを休憩所の椅子に座って微笑ましく眺める高齢者や子供さん達の姿が思い浮かんできます。
そして、これほど広いスペースのインターロッキングブロック舗装の場所もここだけですので、皆さんの集合場所とか遊ぶ場所に利用できると思います。
時には癒される空間として、時にはアクティブな空間として、使用する人の気持ちしだいで様々な空間としての顔を見せてくれる楽しみな庭園であると思っています。
どうぞ、お時間がありましたらバリアフリー化された昨年度の「50周年記念庭園」パート1とともに今年度のパート2、そして一昨年度までにつくられた10のバリアフリー庭園で、ゆっくりと歩みを進めて気持ちをリフレッシュさせていただきたいと思っております。
この実習授業では、生徒さん達の自由な発想をもとに思い思いのイラストを描かせて、そこから施工出来ること出来ないことを選択し完成させていくかたちをとっているということをお聞きしました。
庭園の設計・施工の実習授業で、これほど素晴らしい庭園をつくりあげてしまう生徒さん達を指導する興陽高校の先生方の奥深い考え(生徒さん達の自由な発想の重視)や指導力や技術力の高さにあらためて感服しております。
※施工の過程については、ページの一番下からみてください。
◇岡山県立興陽高等学校
住 所 : 岡山県岡山市南区藤田1500
電 話 : 086-296-2268(代表)
URL : http://www.koyohigh.okayama-c.ed.jp/
「造園デザイン科 第3学年 庭園施工管理類型 13名」
(造園デザイン科 科長 尾畑篤司先生、藤本泰史先生、田中賢造先生、太田貴久先生、光石未佳子先生)
内閣府特命担当大臣表彰優良賞受賞(平成19年度バリアフリー化推進功労者表彰) 受賞者一覧
◇山陽学園大学
住 所 : 岡山市中区平井一丁目−14−1
電 話 : 086-272-6254(代表)
FAX : 086-273-3226
URL : http://www.sguc.ac.jp/
総合人間学部 生活心理学科
澁谷俊彦教授 (倉敷市伝統的建造物群等保存審議会会長、岡山県環境審議会委員)
D、かけ橋の全景 | E、かけ橋の通路 | F、台杉と3本の立木 | G、石碑の裏側 |
尾畑先生 撮影 |
下記は、設計と施工について、平成25年1月22日以降に各代表の生徒さんが庭園施工管理類型の生徒さん達の意見をまとめてくれたものです。(平成25年2月28日 現在)
◇設計責任代表者(河内春香) | ◇施工責任代表者(竹井慎吾) |
「50周年記念庭園のバリアフリー化P2」をどのような思いで計画されたのでしょ うか。 1、年度初めにどのようにしたいと思っていましたか。年度初めの庭園全体のサイズ と構想を教えてください。 ・みんなが通りやすく、休憩ができるように。 ・立ち入りやすい環境になるように。 ・どんな人でも安全に利用でき、楽しめるようにした。 2、かけ橋について、前のものと形が変わっていますが、どのような点に気をつけて 設計しましたか。違う点を記入してください。 ・手すりを強化した。 ・橋の高さ、蹴上げの高さを低くした。 ・子どもや高齢者の方が利用しやすくした。 3、インターロックングブロックでハートマークのデザインにしたのはどうしてですか。 休憩所を置いた理由についても記入してください。それから、誰のためにバリアフリー 化しようとしましたか。 ・ハートマークにしたのは、親しまれやすいような楽しい雰囲気になるように。 ・休憩所を置いたのは、らん展で使った待合を再利用して、昼ご飯を食べたり、休憩 できるように。 ・誰もが安全で安心して利用できるようにするため。 4、今年度の生徒さんらしさを出したヶ所がありましたら記入してください。小さなこと でもいいですから、庭園に対する思い入れを書いてください。 ・できるだけ今の状態で残っていてほしい。 ・「L3」という文字だけでなく、「ランドスケープデザイン」という長文字を入れさせて もらった。 ・らん展で使った待合も再利用できたので、思い出がたくさんつまった庭になった。 |
施工に関して個別に難しかった点や工夫した点いついて。 1、かけ橋の作り直しをしたのはなぜですか。 ・上り口が急な橋になって、安全上問題があったから。 ・どんな人でも使いやすいようにするため。 2、作り直した「かけ橋」で工夫した点や難しかった点を記入してください。 ・手すりを高い位置と低い位置に取りつけた。 ・蹴上げや踏面の調整が難しかった。 通路の幅と長さ 通路幅 ( 145 cm) 長さ ( 700 cm) 蹴上げと踏面のサイズと段数 蹴上げ ( 15 cm) 踏面 ( 27 cm) 段数東側( 7 段) 西側 ( 8 段) 柵と柵の幅と高さ 幅 ( 5 cm) 高さ ( 131 cm) 3、ハートマークを張るのに難しかった点や工夫した点を教えてください。 ・砂を均等にならすのが大変だった。 ・大きさの違うブロックがあってバランスをとるのが難しかった。 ・インターロッキングブロックに傾斜をつけ、水はけをよくした。 ・ブロックを何回も運んだり、形を整えて切ったり削ったりするのが大変だった。 4、休憩所の設置で難しかった点や工夫した点を教えてください。 ・南国風の屋根にするために、シュロの葉を集めたり、結ぶのが大変だった。 ・待合は壊れていたりしたので、修正するのが大変だった。 ・座りやすいように、待合に足場をつけた。 5、大きな日時計と小さな日時計の周りについて難しかった点や工夫した点を 教えてください。 ・小さな日時計は、チェーンブロックで移動させるのが大変だった。 ・小さな日時計は、サビを取ったり、ペンキを塗ったりした。 ・大きな日時計は、土を耕して、植栽をして華やかにした。 |
左上写真Dは、平成15年度に作庭された「四季を彩る庭」に設置された「かけ橋」の作り直したものであります。かけ橋の全景ですが、転落しないように木製の柵が階段の上り口から通路の両側にあります。かけ橋の丸太部分にはクレオソート、手すりの部分には保護剤が塗られています。
中央上写真Eは、今年度作成の「かけ橋」の階段と通路ですが、足が高く上がらない子どもさんや高齢者のために蹴上げを低くして、通路幅145 cm・長さ700 cmの通路になっているようです。
中央上写真Fは、「台杉と3本の立木」でありますが、中央下写真HHの手すりの形状が気になったので、田中先生に聞いてみましたら、かけ橋の手すりは、バリアフリー展望台「友集の丘」の傍にある杉の幹から伸びる立木を伐採し、枝打ちしたりして皮を剥いで磨いたもので、「台杉の立木を使った手すり」とのことでした。
「台杉仕立て」とは、京都の北山高雄地方の森林が狭いなかで効率よく全体に陽が当たるように余分な枝を払い、杉の磨き丸太材を生産する方法として生みだされたもので、北山丸太は、構造材ではなく床柱などの観賞用に用いられる高価なものであります。
ここの手すりで立木の触感や光沢を楽しむことができると思います。何気ない手すりに奥深い造園の仕立てがあるんですね(^O^)
ほとんど市販されませんから、何とも贅沢な手すりだと感じてしまいます\(^o^)/
右上写真Gは、石碑の裏側ですが、センダンの木に枝を残して置いてあるところが、また味わいがあっていいですね。
左下写真Hは、大きな日時計と植栽の様子です。土壌改良して、赤色は「オタフクナンタン」、白色は「ハクリュウ」、緑色は「タマリュウ」を植栽しています。
中央下写真Iは、休憩所の全景です。待合(休憩所)は2月の世界らん展日本大賞2012に待合として出品され、11月上旬の産業教育フェア(桃太郎アリーナ)、11月下旬には文化祭へ、そして「50周年記念庭園のバリアフリー化パート2」に設置されましたが、その度に解体と組立を繰り返し、壊れたパーツの作り直しがあったり、竹の焼き直しがあったりしたようです。
待合の屋根について、屋根の上側に和シュロの茎を並べ、ワシントンヤシの葉を下側に垂らして並べております。
中央下写真Jは、休憩所の竹の椅子と網代の壁であります。円窓も風情があって粋ですね。
右下写真Kは、休憩所の屋根の棟に、雨漏りしないように色塗りされたビニールパイプが取り付けてありました。
H、日時計と植栽 | I、休憩所の全景 | J、網代と竹の椅子 | K、棟 |
L、日時計の全景 | M、葉先と澁谷先生 | N、小さい日時計 | O、センダンのベンチ |
左上写真Lは、日時計の周りでありますが、石の囲いの外に影が出るので、時計の役割をなすというよりは日時計のオブジェととらえられるようです。土地改良したところに十字に区切り、タマリュウやハクリュウやオタフクナンテンなどが植栽されていました。
中央上写真 Mは、休憩室の屋根に和シュロの木の葉とワシントンヤシの葉を使用していましたが、屋根葺きには、茅の根側が屋根表面に出る葺き方と茅の穂側が屋根表面に出る逆葺きがあり、日本は根元のほうで揃えることが多く、韓国では葉の先を垂らすことが多いのではないかなどのことを澁谷先生が説明しているところです。。
中央上N写真は、アーケードの傍にある石碑の上にあるスチール製の日時計で、錆を落としてゴールドに塗られていました。大変綺麗になって見栄えが良くなっていました。
右上写真Oは、校庭にあったセンダンの木が大きくなりすぎたために伐採して再利用しようとしています。安全のために尖った枝を切ったりヤスリで研磨して、中央上写真Nの石碑の傍にベンチとして設置する予定とのことです。
左下写真 Pは、「かけ橋」の全景ですが、昨年の10月11日に撮影した「かけ橋」に両脇に柱を付け加えてより強度を高めています。
中央下写真Q、は、かけ橋の蹴上げの空間に板を張り、小さな子供さんの足が入り込まないようにしていました。
中央下写真 R、は、倉庫内での作業について、尾畑先生が指導しているところです。
棟の隙間から雨漏れしやすいので、右下写真Sのように、棟(屋根の頂上)部分をビニールパイプを切って作ろうとしていました。休憩室の屋根の棟に設置するための準備をしているところです。
P、かけ橋の全景 | Q、蹴上げ | R、尾畑先生 | S、屋根の棟 |
T、日時計とブロック | U、ビニールの屋根 | V、LANDSCAPE DESIGN | W、ハートマーク |
左上写真Tは、日時計の周りが陰で見えにくいかもしれませんが、庭園内のすべてがインターロッキングブロック舗装されていました。
中央上写真Uで、待合(まちあい)がビニールの屋根になっていますが、南国風に和シュロの木の葉を屋根に用いる予定ですと、太田先生が説明してくれているところです。
中央上写真Vは、インターロッキングブロックが敷き詰められていて、本年度は「L 3」「LANDSCAPE DESIGN」「2012」などの文字がはいっていました。
本年度の特長として、右上写真Wのように大小の「ハートマーク」を多く作っているところであります。
太田先生が、低いサツキの木を移動してインターロッキングブロックを敷き終えましたので、昨年度の「50周年記念庭園のバリアフリー化」の庭園から高齢者や車いす利用者を案内できるような庭園になりましたと話してくれました。
X、全景 | Y、先生方 | Z、家政科の生徒さん達 | AA、澁谷先生 |
左上写真Xは、大きな「日時計」の周りからブロックを張ろうとしています。残念ながら車いす利用者の私は入っていけない状態でした。
中央上写真Yは、大きな「日時計」の前で先生方(右から澁谷先生、田中先生、光石先生)が、これからの庭園の施工について話しているところです。
中央上写真Zは、昨年度「50周年記念庭園のバリアフリー化」で整備された庭園内で、家政科(谷口英美先生)の生徒さん達と一緒に授業している様子であります。
今回の授業では、家政科の生徒さん達からの質問に答えるといった授業内容でありました。
・質問と回答
1、介護保険制度における住宅改修の事例について
実例から手すりの設置について気をつける点を話しました。当事者の身体能力を把握し手すりの設置場所を決める、住宅内で手すりを取り付けるための下地を確認すること、当事者が入院中の場合はリハビリによって機能回復の様子を見ながらプランを考えるなどの話をしました。
2、スロープの傾斜について
車いすを自分で操作する場合は、スロープの勾配は1/15以下にしてもらいたいと思っています。
右上写真AAは、スロープの勾配についての考え方を、澁谷先生が棒を使って説明しているところです。
3、手すりの太さについて
一般的に、横手すりは35ミリ、縦手すりは握って力が入り易いように32ミリと考えていますが、当事者の身体能力を考慮して手すりの太さを決める。
材質は、木製又はアルミニウム+塩化ビニール被膜の手すりなどがあります。(水回り用にステンレス製の手すりを使うと冬場熱を吸い取られるような気がします。)
4、通路と廊下のスペース(幅)・・・車いす使用時(自操用車いすの幅:約63cm・介助用車いすの幅:約約55cmとして話しています)
◎住宅内においての車いすについて(自分で操作する場合について話しています)
1)市販車の幅65cm+腕の可動域15cm。直線の通路幅は最低80cm必要である。
2)住宅内での廊下と入口の有効幅員の関係で、福祉住環境コーディネーターのテキストでは一般的に廊下・入口の関係は85p×85pと書かれています。
片方が80cmなら、もう一方は90cmとなります。
3)車いす操作の能力には個人差がある。
車いすの回転スペースのサイズは公共施設では150cm×150cm以上となっています。これぐらいあればほとんどの車いす利用者は回転できると思いますが、住宅内でこのスペースを確保することは難しい。
住宅改修において私の車いす操作の能力から、当事者の車いす操作のレベルを考え、そこから廊下と入口の有効幅員を見つけ出そうとしています。
4)暮らして困らないと感じる寸法
廊下と入口の関係で85p×85pというのは、生活に必要な最低のサイズであると考えています。
車いす操作の能力には個人差がありますいので、障がいを持つ当事者にとっても介助する家族にとっても、なるべく生活し易いサイズを見つけ出して改修してもらいたいと思っています。
後で改修しなければならなくなった場合、建物の構造上難しいことの方が多いようです。家を新築する時には、なるべく将来のことも考え合わせて設計をしてもらってください。
※住宅改修では当事者の身体能力と精神面・介助者やご家族のことそして建物の構造を考えなければならないと思っています。
住宅改修について、上記のことを造園デザイン科庭園施工管理類型と家政科の生徒さん達にお話しました。
BB、小さい日時計 | CC、大きな日時計 | DD、噴水周り側から | EE、杭 |
左上写真BBは、昨年度「50周年記念庭園のバリアフリー化」の正面入口のアーチの隣を、インターロッキングブロック舗装しその上に石碑を戻したところです。プレートが錆ついているのが分かると思います。
中央上写真CCは、手前に見える大きな「日時計」から校舎側を撮したものですが、ココスヤシを二本植栽しているのが分かると思います。
中央上写真DDは、大きな日時計の周りに、これからブロックを張っていく予定のようです。
右上写真EEで分かりますように、杭打ちをしてインターロッキングブロック舗装のレベルを出しています。
左下写真FFは、作り直して「四季を彩る庭」に設置された「かけ橋」の全景であります。中央部分が平になっているとともに、転落防止に柵をしてありました。中央下写真GGは、「かけ橋」の上がり口ですが、一段目と二段目は御影石の延石で三段目から木製の踏面になっているのが分かると思います。蹴上げ部分が空いておりました。
中央下写真HHで分かりますように、身長の高さによって使用してもらえるように、高い位置と低い位置の二段に手すりが階段の上り口から上まで設置されていました。
市販の手すりのように丸棒ではなく断面がやや楕円になっているのが写真で分かると思います。今までに見たことのない手すりなんですが、何だか味わい深い手すりのようであります\(^o^)/
右下写真IIは、黒川副校長(左)と入江教頭先生(右)が「かけ橋」の上からに他の庭園を眺めているところですが、生徒さん達とともに外部講師が入って授業をする時だけでなく、庭園の出来具合の下見や先生との授業内容の打ち合わせに訪問した時にも、授業内容の把握をしたいと熱心に参加してくれています。
今年度は、「50周年記念庭園のバリアフリー化パート2」として大きな「日時計」の周りをバリアフリーにしようとしていますが、インターロッキングブロック舗装にするスペースが今までの庭園より大変広いように思います。
5月28日に倉庫で「かけ橋」を拝見し、5月31日にはその「かけ橋」が解体中となっていましたので、その後どうなることやらと大変心配していたのですが、本日大変素晴らしい「かけ橋」が設置されていました。
これから大きな「日時計」の周りが、どのように整備されるのか、次回の訪問が楽しみになってきました。
FF、かけ橋の全景 | GG、階段 | HH、手すり | II、黒川副校長と入江教頭 |
JJ、かけ橋の解体 | KK、蹴上げ | LL、藤本先生 | MM、電気ノコと田中先生 |
5月28日に右下写真QQの「かけ橋」を拝見した時に、小学校低学年の子供さん達が上がるには蹴上げのサイズが大きいのではないかと話しましたら、その三日後には、左上写真JJのように上半分がなくなり解体中とのことでした。
折角作り上げたものについて、アドバイスするほうも心苦しいわけですが、そのアドバイスに対して割り切って解体してしまうという潔さに驚くとともに大変感心しました。
中央上写真KKは、蹴上げを拡大したものですが、もう少し小学校低学年の子供さんが上がりやすいように階段を低く作り直す予定だと話してくれました。
中央上写真LLは、解体中の「かけ橋」の傍にて、藤本先生が渋谷先生に「かけ橋」について説明しているところであります。
右上写真MMは、田中先生が電気ノコで丸太を八角にするやり方を実演してくれているところです。
お話(アドバイス)をすると、それに対してすぐに対応しようとする「潔さと早さ」にいつも感心させられます。
NN、整地後の全景 | OO、日時計 | PP、アーチ周辺 | QQ、かけ橋 |
左上写真NNは、「50周年記念庭園」のバリアフリー化パート2の整備予定地の全景でありますが、既に低いサツキの木が取り除かれていました。
写真左端に、昨年度バリアフリー化した通路とフェニックスが植栽されているのが見えますが、今年度は隣接した右側のスペースをバリアフリー化する予定であります。写真で分かりますように空きスペースの奥に「日時計」が見えております。
中央上写真OOは、現在のグランドレベルより40cmかさ上げされて設置している「日時計」であります。
中央上写真PPは、昨年度「50周年記念庭園のバリアフリー化」の正面入口のアーチの隣にあります石碑が移動され整地されていました。校内にあるクレーン車では大きな石碑を移動することができないので「チェーンブロックと三脚」で移動したようです。今回は大変重い石なので、太い檜の丸太の三脚をもちい撤去の移動に1週間、設置に1週間、合計約2週間費やしたと聞いております。
右上写真QQは、倉庫のなかにあった「かけ橋」の全景であります。平成15年度「四季を彩る庭」にあります木製の「かけ橋」が古くなりましたので、新しく作成し後は設置するだけだと先生から説明を受けました。平成15年度「四季を彩る庭」にあった「かけ橋」を模倣して作成したようです。
防腐剤も2回塗って雨への対策も万全であると話しておられました。
さて、このスペースがどのようになるのか楽しみであります。
RR、日時計側 | SS、校舎側植栽 | TT、アーチ隣の日時計 | UU、かけ橋 |
本年度も昨年度と同様に興陽高校の「50周年記念庭園」として「昭和40年度、昭和41年度、昭和42年度 卒業生一同」が寄贈してくれたスペースをバリアフリー化する予定であります。昨年度は「噴水周り」(平成23年度「50周年記念庭園のバリアフリー化」)をバリアフリー化しましたが、今年度は隣接する「日時計周り」のスペースをバリアフリー化する予定であります。
それから、右上写真UUで分かりますように、平成15年度は「四季を彩る庭」で「木製のかけ橋」を作成しましたが、老朽化のため作り直しをする予定であります。
左上写真RRは、昨年度の噴水周り(写真左側)と今年度の日時計周り(写真右側)を、平成23年6月24日に撮影したものです。
さて、今年度は、左上写真RRの通路と写真右側の「50周年記念庭園」として「昭和40年度、昭和41年度、昭和42年度 卒業生一同」が寄贈してくれた大きな「日時計」を残して、その周りにある低い木(サツキ)を取り除きバリアフリー化する予定であります。写真の右奥に大きな「日時計」が見えています。
中央上写真SSは、校舎側を撮影したもので、今年度は写真左側をバリアフリー化しようとしています。狭い通路に石が転がっていたり低い木(サツキ)が植栽されていますので、昨年度バリアフリー化した「噴水周り」側(平成23年度「50周年記念庭園のバリアフリー化」)から大きな日時計の辺りまで車いすで近づくことはできませんでした。サツキの周りは剪定のための狭い通路があったようですが、それさえ目視できないほどでした。
この低いサツキの木を取り除くことから始めるようです。
中央上写真TTは、昨年度「50周年記念庭園のバリアフリー化」の正面入口のアーチの隣にあります石碑(「50周年記念庭園」として寄贈された)とその上にある鉄製の日時計であります。写真で分かりますようにプレートと鉄製の日時計に錆が覆うようになってきております。
今年度の生徒さん達が、二つの「日時計周り」の「50周年記念庭園」と平成15年度の「四季を彩る庭」で作成した「木製のかけ橋」を、どのようにバリアフリー化するのかが楽しみであります。
平成25年 3月 下旬現在
まくあいのこかげの入口 | 各庭園のイラスト |
平成26年3月31日 撮影 | 平成26年3月31日 撮影 |
※案内板は、下記説明の「山野草園」「実のなる庭の実のなる木」「四季を彩る庭」「流れのある庭」「バリアフリー展望台「友集の丘」「和楽の庭」「見本庭園のバリアフリー化」「干拓地の生き物を知る」「万葉の小径」「まくあいのこかげ」など、10庭園の位置情報であります。
私はたまに京都の観光地(神社や寺)や町を散策することがありますが、古い建物とバリアフリーとの融合の難しさを感じます。ここの「バリアフリー庭園」では当初から和風テイストのうえにバリアフリーやUD(ユニバーサルデザイン)をうまく融合させているように思います。京都の観光地(神社や寺)や町とは趣が違いますが、和風テイストとともにここ独自の庭づくりに挑戦していてほんとに素晴らしい庭(空間)が出来上がっていると感じております。
バリアフリー庭園は平成13年度から作庭していますが、高齢者や車いす利用者や視覚に障がいがある方そして子供さん達などが容易に庭園内を散策できるようになっています。
このサイトでは3年目の平成15年度から庭園の紹介をしております。
平成13年度の「山野草園」では「露地門」や「灯篭」や「水琴窟」、平成14年度「実のなる庭の実のなる木」では「四つ目垣」や「スロープ」、平成15年度の「四季を彩る庭」では「木製のかけ橋」や「石垣」や「花時計」、平成16年度の「流れのある庭」では「浅瀬の細長い池と石橋」や「乱杭(木製)のキャスター止め」、平成17年度の「バリアフリー展望台「友集の丘」では「らせん状の石垣」と「長いスロープ」、平成18年度の「和楽の庭」では「石の顔」にこだわり「矢掛の青御影や万成石や豊島の石」などを配置したり、パーゴラと長いすの周りに集うことがでるスペースをつくったり「盆栽」置場として整備してきました。
平成19年度の「見本庭園のバリアフリー化」では「露地門」や「建仁寺垣」や「腰高麗袖垣」そして「山目地の工法による石畳のバリアフリー化」をし、平成20年度の「干拓地の生き物を知る」では絶滅危惧種に指定されている魚や植物の保護のために細長い池をつくり、各庭園を石橋やインターロッキングブロック舗装で結び一つの庭として高齢者や車いす利用者や子供さん達などが容易に散策できるようにしました。
平成21年度の「万葉の小径(まんようのこみち)」では、時という壁(バリア)を超えて万葉人(まんようびと)の心に触れられるような庭園をつくりました。石の桁と板をつかった橋や転落防止の竹の柵、インターロッキングブロック舗装、縁石・乱杭・低い四つ目垣・太い竹の車止めなど、これまでの庭園施工の技術面がまとめて取り入れられています。
万葉集で詠まれた花を庭や植枡に植栽し、生徒さん達や先生方の短歌も紹介しています。
平成22年度の「まくあいのこかげ」(「幕間の木陰はひらがなで明記」)は、バリアフリー庭園をつくり始めて10年目の最後の年で、バリアフリー庭園全体の入口となる庭園をつくることになりました。車いす利用者が使用できる洗面台や子供さんのための足洗い場、屋根のある休憩所や長いす、滝や大きな樹木の木陰などがあり、皆さんがくつろげる広場となっております。
昨年度は「50周年記念庭園のバリアフリー化」ということで、40年前に「50周年記念庭園」として先輩方が寄贈してくれた庭園を、先輩方の思いを大事にしたいと考え、噴水や樹木(ワシントンヤシ・フェニックス・ヒラドツツジ・サツキなど)を残しながら、いかに自分達らしい庭園のバリアフリー化をすることでありました。
正面入口通路の他3つの通路も通路幅を広げゆるやかな勾配のスロープになっていて、噴水周りの通路とともにインターロッキングブロックを敷き詰めています。水槽の内側にネットを張って安全性を確保する方法に大変驚きそして大変感心いたしました。大変素晴らしいアイデアだと思っています。
正面入口のアーチや屋外に常時設置の石のテーブルがあることで、癒される空間になっていますので高齢者・車いす利用者・子供さん達など皆さんがこのスペースで憩うようになると想像しております。
区画ごとにテーマは違いますが、興陽高校では各庭園をバリアフリー庭園と呼んでおります。では、なぜバリアフリー庭園と呼んでいるのか。それは、物理面でUDを目指した作庭というだけでなく、バリアフリーをより広くとらえて日本の伝統的文化や歴史そして自然保護なども考えてきたからであります。
どうぞ、「バリアフリー庭園」全体を散策して、生徒さん達の作品と心を堪能していただきたいと思っております。
平成15年度「四季を彩る庭」 / 平成16年度「流れのある庭」 / 平成17年度の「バリアフリー展望台「友集の丘(ゆうしゅうのおか)」
平成18年度「和楽(からく)の庭」 / 平成19年度「見本庭園のバリアフリー化」 / 平成20年度「干拓地の生き物を知る」
平成21年度「万葉の小径(まんようのこみち)」 / 平成22年度「まくあいのこかげ」 / 平成23年度「50周年記念庭園のバリアフリー化」
平成24年度「50周年記念庭園のバリアフリー化パート2」 / 平成25年度「LINK〜時を刻む〜」 / 平成26年度「香楽園(こうらくえん)」
平成27年度「鳥達の集う滝」と「クジラの庭のスロープ」 / 平成28年度「記念庭園のバリアフリー化」 / 平成29年度「記念庭園のバリアフリー化」のパート2
平成30年度「記念庭園のバリアフリー化パート3」 / 令和元年度「記念庭園のバリアフリー化パート4」と記念碑周りの整備