町角のバリアフリーの意識

 

37) 興陽高校「記念庭園のバリアフリー化」パート2 

平成 30年 3月 23日 撮影 

A、あずまやと西側通路周辺 B、通路とヤエザクラ(記念樹) C、広場と通路沿いの松の木 
  尾畑先生 撮影  

造園デザイン科 庭園施工管理類型 3年 18名(平成29年度)

 概要と感想

 公共性の高い庭園については、多くの利用者が使用しやすいかどうかで評価される場合が多いと思いますが、このページでは、多くの人が使用しやすい庭園をつくる過程とともに、興陽高校の造園デザイン科の生徒さん達の技術力と感性の素晴らしさをお知らせしたいと思っています。

 また、興陽高校の造園デザイン科 庭園施工管理類型 3年の生徒さん達の「バリアフリー庭園」の作庭において、授業のなかで生徒さん達が苦労したことや工夫したことなどを記述したいと思っています。  

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 さて、今年度の施工予定地は、昨年度に引き続き「同窓会記念館」に隣接する「記念庭園」で、そのバリアフリー化パート2ということで、昨年度作庭した「あずまや」までのスロープの続きを作ってくれました。

 今年度は、興陽高校の百周年にあたり、同窓会記念館の改修は今年6月ぐらいで終了したようです。

 昨年度は、記念庭園内において、「あずまや」までのスロープの通路にインターロッキングブロック施工をして、車いすで上がれるようにしてくれました。
 記念庭園は日本庭園ですが、和の心がいっぱい詰まった庭園であります。ですから、日本庭園内の通路に、インターロッキングブロックを使用すること事態とても斬新なことであるように感じております。

 私自身としては車いす利用者として、このようなスロープの通路は大変有難いことではありますが、この日本庭園の景観を出来るだけ壊さないようにしたいとも考えていました。ですから、この日本庭園においてのバリアフリー化は、「あずまや」までのスロープの施工までではないかと思っておりました。

 しかしながら、今年度は「あずまや」の先まで通路を延ばしたいと先生から聞いて、いったいどこまでバリアフリーにするつもりなのだろうか。日本庭園内において、どこまでインターロッキングブロック施工してバリアフリーにするのだろうか。
 いったいどのようになって行くのか分からないままに、記念庭園内での施工を心躍らせながら見守ってきました。

 本日、記念庭園内の今年度施工した場所を見渡して、通路のインターロッキングブロックは目立たないように渋い色合いにして、車いす利用者のために勾配1/15以下で、ゆったりとした通路幅になっておりました。

 今年度の生徒さん達は、特にあずまやの三和土(たたき)・二又・三又・野面石積み(空積み)・しがらみ・挿し石などの伝統技術を大切に考えていることが、下記の施工過程から感じることができます。
 日本庭園内にインターロッキングブロックを使用すること自体とても斬新な考えでありますが、その一方で伝統技術が根底にあり、先輩方が作庭した日本庭園をリスペクトしていることを感じさせてくれます。

 これほどまでに、日本庭園をバリアフリー化させた庭園を今までに見たことがありません。国内で初めてかもしれませんが、日本庭園の新しいかたちを提示したバリアフリー庭園になっているのではなかろうかと思っています。

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 左写真Aは、今年度施工した「あずまや」のたたきとその西側通路の築山(つきやま)の土留めのための野面石積みであります。この築山の上に小石でつくったサークルがあり、その中央に記念樹のヤエザクラが植栽されています。
 ヤエザクラの太さは親指ぐらいですので、まだまだ花が咲くところまでは行きません。卒業していく生徒さん達と一緒でこれから成長していく様が大変楽しみであります。

 野面石積みについて、今年度の生徒さん達は初めての石積みということですが、石一つ一つの顔の表情を生かしながら美しく積み上げることに配慮したということです。

 中央上写真Bは、「しがらみ」の柵沿いの通路ですが、もともとあった土を移動するのに約一ヶ月ほど授業時間を費やしたということです。機械を入れられない場所で、人の力だけの作業ですから、この通路のかたちをつくるまでに大変な労力がいったと想像しています。

 写真の中央に、こちらも親指ぐらいの太さのヤエザクラが植栽されているのが分かると思います。小石でつくったサークルをつくっていますが、今年度の生徒さん達の2本目の記念樹ということです。

 右上写真Cで、広場と通路が見えています。広場の手前の両側に松の木がありますが、通路にかからないように松の木の枝を切っております。

 通路のかたちをつくるために土を移動したわけですが、広場をつくるために盛り土をして、丸太を4段重ね支柱で固定して土留めをしているのが分かると思います。 

 「あずまや」は綺麗に整備され、いつでも生徒さん達が長いすに座って、気軽に弁当を食べたり休憩できるような場所になりました。

 園路は、「あずまや」西側の通路から広場まで、車いすで進んで行けるようになりました。

 なぜ、ここまで日本庭園をバリアフリー化しようとするのかを先生にお尋ねしたところ、人が入って行けない殺伐とした庭園よりは、誰でもが庭園に入って行けて楽しく散策できるほうが庭園にも人にも良いのではないかと思っています。という言葉が返ってきました。

 私は、車いす利用者になる前から日本庭園が好きでしたが、日本庭園は通路が狭かったり飛び石などの段差があり、車いすでは入って行けない場所として認識しておりました。
 ですから、車いす利用者は、作庭当時の日本庭園に入って行けないのは仕方のないことだと思っておりました。

 今年度の「記念庭園のバリアフリー化パート2」の施工場所を見て、先生のお言葉に深く感銘し、自分の日本庭園に対する思いがこのままで良いのかと考えさせられました。

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 振り返ってみますと、今年1月初旬まで、いったいどのような園路になるのか、どこまで通路をつくるのか、今年度中に施工が果たして終了するのか、不安がいっぱいの庭園施工だったように思います。

 記念樹(ヤエザクラ)2本の植樹は、第三回目の授業の後になりました。
 広場や通路とともに記念樹の植樹が終わり、今年度の施工は終了しました。

 昨年度作庭したスロープを上がり、「あずまや」で休憩し、庭園のより奥まったところまで車いすで進めるようになりました。何よりも嬉しいのは、今まで観ることができなかった記念庭園の景色を楽しむことができるようになったことであります。

 上の写真を見ながら、インターロッキングブロック施工も大変美しい出来栄えだと思うのですが、個々の「あずまやの三和土(たたき)」・「しがらみ」・「野面石積み」・「挿し石」などの伝統技術の質も高く大変美しいと感じさせてくれます。

 右上写真Cの広場から、来年度はさらに園路を延ばすのだろうか。生徒さん達と相談して決めたいと先生が話してくれました。

 このページで、生徒さん達の技術力と熱い思いと感性作庭の過程で知っていただけたら幸いであります。

 どうぞ、お時間がありましたら、昨年度の「記念庭園のバリアフリー化パート1」のスロープから、今年度(平成29年度)の「記念庭園のバリアフリー化パート2」のあずまやで休憩したり園路を進んでみてください。
 案内板が設置された10のバリアフリー庭園そして「50周年記念庭園のバリアフリー化パート1」・「50周年記念庭園のバリアフリー化パート2」と「香楽園(こうらくえん)」そして「クジラの庭」の奥にあります「LINK〜時を刻む〜」、体育館前にあります「鳥達の集う滝」などで、ゆっくりと歩みを進めて気持ちをリフレッシュさせていただきたいと思っております。

 毎年度ながら、庭園の設計・施工の実習授業で、これほど素晴らしい庭園をつくりあげてしまう生徒さん達を指導する興陽高校の先生方の奥深い考え(生徒さん達の自由な発想の重視と日本庭園の新しいあり方など)や指導力や技術力の高さにあらためて感服致しております。

 ※施工の過程については、ページの一番下からみてください。 

岡山県立興陽高等学校
  住 所 : 岡山県岡山市南区藤田1500
  電 話 : 086-296-2268(代表)
  URL  : http://www.koyohigh.okayama-c.ed.jp/

 「造園デザイン科 第3学年 庭園施工管理類型 18名(女子生徒 6名)」

 (造園デザイン科 科長 尾畑篤司先生、藤本泰史先生、藤井泰彰先生、田中賢造先生、太田貴久先生、スペシャリスト:佐伯義也先生

 内閣府特命担当大臣表彰優良賞受賞(平成19年度バリアフリー化推進功労者表彰) 受賞者一覧

 家政科 谷口英美先生: 人間科学類型 弟3学年 20名

山陽学園大学
  住 所 : 岡山市中区平井一丁目−14−1
  電 話 : 086-272-6254(代表)
  FAX  : 086-273-3226
  URL  : http://www.sguc.ac.jp/

  地域マネジメント学部 地域マネジメント学科
 
  澁谷俊彦教授 (岡山県環境審議会景観部会長、倉敷市伝統的建造物群等保存審議会会長)

 

平成 30年 3月 23日 撮影 

D、野面石積み  E、挿し石  F、「しがらみ」沿いの通路  G、広場からの景観 

 概要と感想 

 左上写真Dは、「あずまや」西側通路の西側の築山(つきやま)の土留めとしての「野面石積み」であります。「野面石積み」でも、コンクリートやモルタルを使用しない「空積み」という方法で施工しています。隙間が空いたところをきれいに埋めていくのが難しかったようです。

 築山の上に小石でサークルをつくり、細いヤエザクラの木が記念樹として植栽されていました。

 中央上写真Eで、「あずまや」の外周が「挿し石」施工になっていました。「あずまや」の壁の下に石がありますが、モルタルを使用しないで、土の地面とに直接差し込んでいる石を「挿し石」(差し石)と呼んでいるようです。そして、今年度「あずまや」の外周に石を配置していますが、こちらの石も「挿し石」と呼んでいるようです。石の天端をそろえて美しく見えるように工夫したようです。

 中央上写真Fは、「しがらみ」沿いの通路でありますが、「しがらみ」の柵は車いすやベビーカーなどの前輪止めと転落防止であります。一般の人の転落防止のために、「しがらみ」の柵の後ろに樹木を植栽しているのが写真で分かると思います。

 右上写真Gは、広場からの景観ですが、池周辺の様子が分かります。一ヶ月前まで、丸太を重ねて車いすの前輪止めにするための支えとして支柱が立っていましたが、現在は写真のように丸太の上端に合わせてカットされていました。

 

平成 30年 1月 23日 撮影

H、あずまやの床 I、あずまや入口周辺 J、あずまや西側通路   K、しがらみ沿いの通路と広場

 

 概要と感想

 本日は、今年度第三回目の授業参加でありますが、明日から3年最後のテスト期間に入るということで、本日が最後の実習授業となるようです。

 今年度は、「記念庭園のバリアフリー化パート2」いうことで、あずまやの床の改修と二つ目の大きな石灯籠や雪見灯籠の修復、そしてあずまや西側通路から広場までの園路をつくりました。

 6月の第一回目の授業参加までに、既に「あずまや」床の改修や二つ目の大きな石灯籠や雪見灯籠の修復は終えておりました。後は「記念庭園」内の園路の作庭ですが、今年度はいろいろ事情がありまして、ここの作庭に時間を費やすことがなかなかできなかったようです。
 ですから、まだ2本の記念樹の植栽などが残っているとのことです。

 左上写真Hは、改修された「あずまや」の床と、きれいになっていた取付けの長いすそしてストーブであります。「あずまや」入口の石とインターロッキングブロックとの隙間もなくなってうまく納まっているように見えました。この長いすに生徒さん達が座り、第三回目の授業をしました。

 中央上写真Iは、「あずまや」入口前の通路ですが、整備前の石を撤去し曲がり角を広くして、車いす利用者がアクセスし易い通路になっています。

 中央上写真Jは、「あずまや」西側の通路ですが、左側の石積みは目線の高さが低い車いす利用者の精神的な圧迫感を軽減するために、やや低めに積み上げて壁をつくってくれているように感じました。

 右上写真Kは、「しがらみ」沿いの通路ですが、緩やかな勾配になっていましたので、インターロッキングブロック施工も工夫をされたのではないかと想像しています。「しがらみ」の外側に樹木(キンメツゲ)を植栽して転落防止にしているようでした。
 写真奥のスペースが広場になっています。広場の内側から見ると、丸太を横にして二段(又は三段)に重ねて車止めにしているように見えています。

 左下写真Lは、広場側から「しがらみ」沿いの通路を撮影したものです。「しがらみ」の柵は、車いす利用者のための車いすのキャスター止めや転落防止だと思いますが、健常者には「しがらみ」の柵だけでは高さが足りないので樹木(キンメツゲ)を外側に植栽したとのことです。

 中央下写真Mは、あずまや西側通路沿いの築山の上のサークルですが、植栽予定のスペースのようです。今年度は記念樹として2本の樹木を植栽したいとのことですが、いつ頃になるのだろうか不安になってきます。

 右下写真Nは、広場から記念庭園の景色を見ているところです。目の前に今年度修復した二つ目の大きな石灯籠が見えています。

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 下記は、設計と施工について、平成30年1月9日以降に各代表の生徒さんが、庭園施工管理類型の生徒さん達の意見をまとめてくれたものです。 

 下記のレポートの質問は、「しがらみ」沿いの通路にまだブロックが据えられていなかったため、フラットの場所や勾配がつくスペースについての質問をしていません。
 今年度施工した場所のバリアフリー庭園について、車いすを走らせて先生方(尾畑先生・田中先生・太田先生)に確認しました。

 「しがらみ」の柵の高さは50cm、長さは4m80cmということです。

 あずまや西側通路からしがらみ沿いの通路への曲がり角の踊り場はフラットになっていて、ここから広場に向かう長さ約5mの勾配は2/100ということですからほとんどフラットに見えます。
 しかしながら、車いす利用者が、リムやタイヤから手を離してしまったら、ゆっくりですが自然に車いすが前に動くと思います。立ち止まりたい時は広場と垂直に車いすを位置したほうが良いと思っています。

 広場の手前で、はっきりと勾配があると分かるスペースは、長さ約3mで勾配は1/15以下になっているようです。

 下記は、今年度の生徒さん達が、質問に答えてくださり、設計や施工の内容や気持ちについて詳細に教えて下さりました。
 作庭の過程を見ていませんので、個々の施工について、改めて難しかった点や工夫した点が分かったような気がします。 

(平成30年1月23日 現在) 

設計責任代表者(宮崎 亜梨沙) 施工責任代表者(小原 涼)
 今年度の生徒さん達はどのような思いで、記念庭園の
バリアフリー化P2の作庭を計画されたのでしょうか。
 設計に対する考えを記入してください。

@記念庭園(日本庭園)のバリアフリー化パート2とし
て、今年度はどのような事を計画しましたか。記念庭園
全体のイラストを裏面に描いて説明してください。
(※今年度作庭の様子が分かるイラストではなかったの
で、イラストは掲載していません。)

・パート1の通路の続きを施工し、築山の所を経て、池が

見える所まで園路をのばす。

・山灯籠をまっすぐに据え直す。

・「あずまや」の床面をたたきにし改修する。また、外周

囲に土留めをする挿し石を施工。

・築山の土留めを野面石積みで施工する。

・転落防止のためのしがらみと植栽を施工する。

・記念樹を2本植栽する。

A誰のために、日本庭園の一部をバリアフリー化しよう
としましたか。既存の日本庭園とバリアフリー化した場
所とに違和感はないですか。

・車イス利用者や体に不自由がある人、小さい子供

やお年寄りなどみんなのため。

・違和感がないようにデザインしたので、違和感なく出

来上がりました。

B「あずまや」を活用するために、今年度はどこまで改
修しましたか。デザイン科以外の他の生徒さん達も満足
して活用してもらえるようになっていますか。


・今年度は、たたきの施工と周囲(外周)に土留めの

挿し石施工をした。

・見た目がきれいになったのと、道幅が広がりインター

ロッキングブロックで舗装しているので、他の科の生徒

にもお昼休みにお弁当を食べたり、休み時間や放課後に

みんなで楽しく使える場になり、満足してもらえる庭園に

なったと思います。

C「あずまや」西側の通路幅はどのようにして決定しまし
たか。壁の威圧感等を、どのようにして払拭しようとしま
したか。転落防止のために何をしましたか。

・壁の威圧感を可能な限り払拭するため、また、より通行

しやすくするため施工場所の構造上可能な限界の広さ

と幅にした。

・しがらみを施工し、その後部にはキンメツゲを植栽し

転落防止対策をした。

D今年度の生徒さんらしさを出したヶ所がありましたら記
入してください。小さなことでもいいですから、庭園に対す
る思い入れを書いてください。

・しがらみを用いたりたたきや二又という伝統技術を

用いて、先輩達が作り上げたものを、より良くし未来の

後輩に伝えるために頑張った点や、後世に伝えていく

ことを目指したところが自分達らしさです。

 今年度の生徒さん達はどのような思いで、記念庭園のバリアフリー化P2を施工
されたのでしょうか。施工に関して難しかった点や工夫した点を教えてください。
@「あずまや」の床施工について、床のスペースのサイズ、成分の種類と割合や、
下打ちと仕上げの厚さを教えてください。工夫した点についても教えてください。

床スペースのサイズ:(   6u   )
成分の種類と割合:(真砂土の細かい(粘土質)7割、荒目3割を混ぜ、その土と
石灰を2:1で配合し、にがりを少々混ぜる。)
下打ちと仕上げの厚さ:(下打ち(基礎部分)7cm厚、仕上げ(三和土)7cm厚)

・手首をうまく使って同じ動作を繰り返してたたくのが難しかった。
・何度も地ゴテでたたくので、手が痛くなりとても大変で交代しながら作業を進めた。
・三和土に混ぜる水は、手で握った時に崩れるかどうかの堅さにしなければいけな
いが、その配合割合が難しかった。
・三和土に使う土を岡山県の矢掛町産のものを使う工夫をした。
・仕上がり面を平らにするのも難しく、また、叩き方が甘い部分があるとぼろぼろ
に崩れる点も難しくやり直した。
・うまく叩けると良い音がするが、それを意識するのが難しかった。
・基礎部分には、鉄筋を入れて丈夫にした。

A「あずまや」西側通路について教えてください。通路幅と壁の高さ、苦労や工夫
した点を教えてください。

通路幅:(狭い所: 127cm 、   広い所:  195cm  )
壁の高さ:(低い所:  60cm 、高い所:  75cm  ) 

○難しかった点や工夫した点
・インターロッキングブロック施工をするために地面を平らにする作業が大変だっ
た。
・曲がり角の所が狭いと指摘があったので、車イスも通りやすいように幅を広げる
作業もしたが、従前の石組みを崩すときにセメントが埋められていたりして取るの
が大変だった。
・野面石積みをして、通路の景観に面白みをつける工夫をしたが、大きい石を運
ぶのは苦労した。
・石選びや面を合わせていくのが難しく、かみ合わない石は削ったりして形を合わ
せた。
・大きい石は三又とチェーンブロックで動かしたが、その扱いも難しかった。

B転落防止柵について、苦労した点や難しかったところを詳細に教えてください。
 柵沿いの通路幅と、施工で難しかった点や工夫した点についても教えてくださ
い。

通路幅:(狭い所: 145cm 、   広い所:  220cm  )
・庭園の景観になじむよう竹を使った「しがらみ」で柵を施工した。
・しがらみの杭を埋める穴を掘る作業や竹編み入れていくときに、雨で地面が緩
んでいたこともあって、杭がゆがんでくるので、それを防ぐことなどが難しかった。
・一段一段竹の高さを合わせることや、竹を曲げたりする作業も難しかった。
・転落防止柵としてのしがらみの高さが足りなかったので、後部にキンメツゲで
生垣を作って補った。

C灯籠の修復やインターロッキングブロック施工について、苦労や工夫した点を
教えてください。

大きな石灯籠のサイズと重さ: ( 約6863kg  、 高さ  2m80cm  )
雪見灯籠のサイズと重さ: ( 約1313kg  、  高さ  1m65cm    )

○難しかった点や工夫した点
「灯籠修復」
・狭い場所での作業が難しかったが、吊り上げた石の下に足などが入らないよう
安全に気をつけ慎重に作業した。
・傾いた灯籠はモミジにもたれかかった状態で支えられていたので、崩すときが油断
できない状態だったので十分注意しながら作業した。
・石を持ち上げて積み上げる作業ができる方法の二又を用いた。石を吊った状態
の二又を起こすためにチルホールというワイヤーロープを引っ張る道具を使用した
が、石がとても重いため、操作するのにもかなりの力が必要で大変だった。
・狙っている位置に石を下ろして積めるように二又を操作すること(傾け方)が難し
かった。

「インターロッキングブロック施工」
・地面を平らにならして下地をつくる作業が大変だった。
・インターロッキングブロック施工する際、高さを合わせて平行にまっすぐ据えるの
が難しかった。インターロッキングブロックをコンクリートカッターで正確に切る作業
が難しかった。

D景観で工夫した点や、小さなことでもいいですから、作庭過程で難しかったところ
や工夫したところを書いてください。

・三和土の床面は、かなり施工に時間がかかり苦労した。
・野面石積みでどうしても隙間が空くので、きれいに埋めていくのが大変だった。
・見渡せる場所を地上げしてつくるためにたくさんの土を運ぶのが大変だった。
・挿し石など目立たないところもより良くするため力を入れた。
・インターロッキングブロック施工で斜めに上がっていく場所が難しかった。
・低い位置の松の枝などを落として通りやすく、見渡せやすいようにした。
L、勾配のある通路 M、植栽予定のスペース  N、広場からの景色 

 

平成 30年 1月  9日 撮影

O、「あずまや」西側通路 P、しがらみの柵と樹木 Q、広場 R、築山のサークル 
  尾畑先生 撮影   尾畑先生 撮影  

 概要と感想

 今年度第三回目の授業参加の前に、記念庭園内のインタロッキングブロックの施工状況が気になって見に来ました。

 左上写真Oは、「あずまや」西側の通路ですが、ブロックではなくベニア板を敷いてくれいました。

 中央上写真Pは、「しがらみ」沿いの通路と転落防止のために樹木が植栽されていました。

 中央上写真Oで分かりますように、本日は広場のみブロックが据えられていました。今年度は奥のインターロッキングブロックが据えられている広場までが施工範囲ということです。
 丸太を重ねて、車止めにしていますが、広場の内側の丸太の上端までの高さは約15cmになっているようです。

 背の高い支柱が数本見えていますが、何に使用するものであろうか。この時期に、全体像が見えてこないというのもはじめてかもしれません。

 右上写真Rは、「あずまや」の西側にあります築山にサークルをつくっていました。これからこのサークルの中央に樹木を植栽する予定とのことです。

 左下写真Sは、「あずまや」西側辺りから広場までの通路ですが、少し勾配があるように見えます。

 中央下写真Tは、通路の外から今年度の広場を尾畑先生に撮影してもらいました。土留めで丸太を横にして4段に重ねておりました。

 中央下写真Uは、「あずまや」入口辺りのブロックと今年度作成のブロックの境界部分ですが、やや段差があるように見えます。これから調整して収まりがどのようになるか楽しみであります。

 右下写真Vは、「あずまや」入口の石と境界のブロックですが、やや隙間があるように見えます。

 第三回目の授業参加の当日(今年度の授業内)までに、インターロッキングブロックがどこまで敷き詰められるのだろうか大変不安になって来ました。

S、広場前の通路  T、通路外からの広場 U、新旧の段差 V、「あずまや」の入口
尾畑先生 撮影   尾畑先生 撮影     

平成 29年 10月 31日 撮影 

W、藤井先生 X、ホワイトボードと車いす Y、澁谷先生と生徒さん達 Z、澁谷先生とボード 

 概要と感想

 本日は、今年度第二回目の授業参加ですが、前半は家政科の生徒さん達との合同授業ということで、興陽館前のパーゴラの下にある長いすに生徒さん達が座り、造園デザイン科の生徒さん達はパイプいすを用意して、ホワイトボードを使用して授業をしました。

 左上写真Wは、前半の家政科の生徒さん達と造園デザイン科の生徒さん達との合同授業の前に、藤井先生が準備をしているところです。

 このパーゴラの場所近くに、昨年度整備した記念庭園の入り口があります。 

 中央上写真Xは、ホワイトボードと2台の車いすです。車いす操作の仕方について、生徒さん達に実際に乗ってもらい説明しました。

 中央上写真Yは、生徒さん達に車いす操作について、車いすを使って説明している澁谷先生です。

 右上写真Zは、私が口頭で話したことを、澁谷先生が分かりやすく要点をホワイトボードに箇条書きにしてくれました。
 スロープの勾配についてもイラストを描いてくれましたので、生徒さん達に話の内容が伝わったと思います。感謝。

 前半は家政科の生徒さん達との合同授業として、福祉住環境について話をしました。後半は造園デザイン科の生徒さん達だけですので、改修された「あずまや」の床と西側通路その他についての感想を話しました。

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 さて、住宅内をなぜ整備したほうが良いのか。住宅内の環境が整備されていないと、どのようなことが起きるのか。

 一般的に、身体の機能が低下した高齢者や身体に障がいを持っている人などは、ご自分の住んでいる住宅内で移動がし易いようにしたいとか、トイレや浴室などの設備が使い易いように住宅内の環境を良くしたいと考えておられる人は多いと思います。

 例えば、歩行時に足が上がらない「すり足歩行」の高齢者は、僅かな段差(5mm〜10mm)で転倒することがあります。高齢者が転倒して足を骨折するとリハビリをしても自立歩行が困難になって杖歩行になったり、住宅内を移動するために横手すりが必要となる可能性があります。

 また、身体の機能が低下した高齢者は、縦手すりがないと立てないとか、ドアは開き戸より引き戸のほうが動作しやすいというようなことがありますので、住環境の整備が必要になってきます。

 大まかに住環境整備の必要性をお話した後で、個別の住宅改修の考え方としまして、スロープの勾配・手すり・車いすの通路幅そして「車いす操作の仕方」などについて簡単に説明しました。下記は短く要点だけを簡単に記述したものです。

1、スロープの傾斜について、勾配の考え方は、建築では角度ではなく何分の一という言い方をします。(例えば、直角三角形の高さ10cmを底辺150cmで割って1/15いう考え方)
・車いすを自分で操作する場合は、スロープの勾配は1/15以下にしてもらいたいと思っています。
・造園デザイン科のバリアフリー庭園では1/15以下を目指して作庭しております。 

2、手すりについて
・一般的に、横手すりの直径は35ミリ、縦手すりは握って力が入り易いように直径32ミリと考えていますが、当事者の手の大きさや身体能力を考慮して手すりの太さを決めてください。
・材質は、木製又はアルミニウム+塩化ビニール被膜(水回り用)の手すりなどがあります。(水回り用にステンレス製の手すりを使うと冬場手の熱を吸い取られるような気がします。)

・手すりの取付(在宅で生活していることが前提)について
1)取付の位置は、動線を考慮するとともに、当事者の使用し易い高さにする。
2)手すりには、荷重に耐えられる下地がいる。なければ補強板が必要となる。

3、通路と廊下のスペース(幅)・・・車いす使用時(自操用車いすの幅:約65cm・介助用車いすの幅:約約55cmとして話しています)
◎住宅内においての車いすについて(自分で操作する場合について話しています)

1)市販の車いすの幅約65cm+腕(両肘)の可動域約15cm。ですから、一般的に直線の通路幅は最低80cm必要となります。

2)住宅内での廊下と入口の有効幅員の関係で、福祉住環境コーディネーターのテキストでは廊下・入口の関係は85p×85pと書かれています。
 片方が80cmなら、もう一方は90cmという考え方です。

3)車いす操作の能力には個人差がある。(当事者にあった幅のサイズをアドバイスする。)
 住宅改修においては、自分の車いす操作の能力から、当事者の車いす操作のレベルを考え、そこから廊下と入口の有効幅員を想像しています。
 車いすの回転スペースのサイズは、公共施設では150cm×150cmとなっています。これぐらいあればほとんどの車いす利用者は回転できると思いますが、住宅内でこのスペースを確保することは難しい。

4)暮らして困らないと感じるサイズ
 廊下と入口の関係で85p×85pというのは、生活に必要な最低のサイズであると考えています。
 車いす操作の能力には個人差がありますので、障がいを持つ当事者にとっても介助する家族にとっても、なるべく生活し易いサイズを見つけ出すことが大切だと思っています。

4、車いす操作の仕方については、イラスト入りのA4用紙5枚をコピーしたものを配布し車いす介助の仕方を説明しました。

1)突然に押さないで、声を掛けてから車いすを押すようにしてください。

2)横断歩道などで急いで渡ろうと勢いをつけて押すと、歩車道境界部には段差があり、当事者が飛び出してしまい事故につながってしまう。
・段差に対しては、車いすを垂直にしてアプローチする。

3)人混みでは前の人の足首が見えるぐらいに距離をおく。ステップが前の人の足首に当たれば事故になる。

4)急こう配のスロープを下る時には、後ろ向きで下りるように介助する。

5)キャスター上げは、片足でティッピングバーを踏むと同時に左右の手でグリップを下に力を加え車いすのキャスターを上げる。

※実際の住宅改修での重要なポイントを簡単に述べます。
・当事者の身体能力を把握する。
・建物の現況を知る。
・当事者やその家族への聞き取り。
・他職種との連携が大切である。(医療従事者と建築関係との連携)        以上のようなことを前半の合同授業で話しました。 

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 後半の授業では、造園デザイン科の生徒さん達に、現在の庭園の感想を話しました。

 昨日、雨が降り通路になる部分がぬかるみ状態でしたので、私の車いすが進みやすいように、左下写真AAのように「あずまや」入口辺りから数枚のベニヤ板を敷いていてくれました。感謝。

 中央下写真BBは、「あずまや」西側通路にベニヤ板数枚が敷かれていました。通路では、車いすで通っても両側からの圧迫感をあまり感じませんでした。

 右下写真CCは、本日は車いすで行けたのは「あずまや」西側通路の北端までですが、そこからその先の通路と「しがらみ」の柵を撮影した写真です。

 第三回目の授業参加は、来年1月の予定ですが、記念庭園内のどこまでインターロッキングブロック施工ができているのだろうか大変楽しみであります。

 AA、あずまや前のボード BB、通路のボード  CC、しがらみを確認 

 

平成 29年 10月 20日 撮影 

DD、あずまや入口周辺  EE、あずまや入口周辺  FF、あずまや西側通路  GG、築山先の通路 
  藤井先生 撮影 藤井先生 撮影  藤井先生 撮影 

 感想と感想 

 本日は、第二回目の授業参加の前に、現在の庭園の状況を見ておきたいと思い訪問しました。

 雨が降った直後というのは、車いすを押してもらったとしても、車いすのタイヤが土にめり込んで走りにくいということもあり、見たいヶ所の写真を藤井先生に撮影してもらいました。

 左上写真DDは、「あずまや」の入口ですが、ブロックが入口の手前までしかありません。中央上写真EEは、別の角度から「あずまや」入口周辺を撮影してくれたものです。
 6月16日に撮影した下写真MMで、コーナーに石があり通路を狭くしていましたが、中央上写真EEで、コーナーの石や樹木などを撤去し通路を広げたのが分かると思います。

 地面を平らにならして下地をつくっておりますが、「あずまや」入口との高さを合わせてブロックを据えるのも工夫が必要ではなかろうかと推測しております。

 中央上写真FFは、「あずまや」西側通路ですが、再度石積みをして後はブロックを据えるだけになっているようです。

 右上写真GGは、西側通路の先の通路です。車いす利用者の転落防止として「しがらみ」の柵を作成したということですが、実際に触れて強度を確認できませんでした。

 「しがらみ」は、丸太を一列に土の中に打ち込み、細い竹などを編み付けたもので土留め(土砂崩壊防止)にしたりするようです。ここでは「しがらみ」を意識した竹垣ということで、車いすの前輪止めということです。

 左下写真HHは、この写真の奥までぐらいが今年度の施工範囲ということです。広場をつくり車いすと車いすがすれ違ったり、車いすがUターンして帰ることのできるスペースになるとのことです。

 右下写真IIは、昨年度作成したスロープから、今年度修復した二つ目の大きな石灯籠を撮影したものです。いろんな角度から、記念庭園の素晴らしい景色を堪能できるようになりつつあるようです。

 6月中旬までに、「あずまや」床の改修や大きな石灯籠の修復等が終わっていましたので、10月下旬にはインターロッキングブロック施工の進行状況がもっと進んでいるであろうと想像しておりました。
 しかしながら、通路をつくるために大量の土を移動しなければならなかったようですので、通路としての形をつくるのが精一杯だったようです。

 校外実習で8m×8mの2区画の作庭をしたり、岡山で農業高校の全国大会(第68回日本学校農業クラブ全国大会)があり、そちらのほうに先生方も生徒さん達も大変多忙になってくると聞いていましたので、その影響があるのではないかと推測しています。

 第二回目の授業参加のために、家政科の授業のタイトル(1枚)と車いす介助の仕方(5枚)の用紙を藤井先生に預け、10/31の授業にホワイトボードと車いす2台を準備してもらうことを藤井先生に依頼しました。

HH、築山先の通路と広場 II、修復された灯籠 
藤井先生 撮影    

 

平成 29年 6月  16日 撮影 

JJ、改修後のあずまやの床  KK、あずまや西側の通路 LL、花時計の通路  MM、あずまや入口前の石 

 概要と感想 

 今年度は、バリアフリー庭園の17つ目になりますが、興陽高校創立百周年という記念すべき年でもあります。

 ここの記念庭園は、昭和36年にできたものですが、日本庭園としてのつくりが大変こったもので、大きな石灯籠・池・飛び石・大きな石の配置・植栽・小さな滝など、その当時大変熱い思いで作庭された庭園だと推測されます。場所によって、庭園の見え方が違いますので大変楽しめそうな庭園でもあるようです。

 バリアフリーになれば、車いす利用者にももっと庭園の素晴らしさを感じることができるだろうと思っております。
 しかしながら、日本庭園とバリアフリーの考え方は相反するところが多く、どこまでバリアフリー化できるか、迷うところもあると思っています。

 左上写真JJは、改修後の「あずまや」の床ですが、写真の左側にある床の間に、田中先生が華道部所属の女子生徒さんに花を飾るように提案しましたら、快く了承してくれましたので、次回の授業参加が楽しみであります。

 中央上写真KKは、あずまや西側の通路ですが、写真で分かりますように両側が壁になっています。車いすで通路を移動する時、走行する時に両肘の出っ張りが壁に当たるのではないかとか、壁の威圧感など通路が狭いと精神的な圧迫感を感じてしまいます。どの程度の幅にしたら良いのか生徒さん達に、中央上写真LLのように体感してもらいました。

 中央上写真LLは、「四季を彩る庭」のなかにある「花時計」の周りの通路ですが、実際に生徒さん達が車いすに乗って通路を進んでいるところです。

 右上写真MMは、「あずまや」入口前の通路に埋まっている石ですが、通路を広げるために石を撤去したいと話してくれました。

 左下写真NNは、田中先生(左側)と澁谷先生(右側)ですが、通路のことや庭園について話しているところだと思います。

 中央下写真OOは、「あずまや」西側通路よりも西側の景色ですが、車いすで行けないところであります。どのようになって行くのか、まったく分からない場所であります。 

 右下写真PPは、記念庭園内ということですが、車いすで入って行けないので、案外開けた場所もあるんだなという感想であります。
 (下写真OOとPPは、尾畑先生が撮影してくれました。感謝。)

 第一回目の本日は、バリアフリーとUDの説明と違いを造園実習室にて説明し、各バリアフリー庭園の診断について見本庭園前にて話しました。
 最後に、現在のあずまや西側の通路を見て、両側に壁がある通路の幅は、少なくても120cm以上が望ましいのではないかとアドバイスしました。
 (生徒さんは18名のうち11名(女子生徒 2名)でありました。7名は庭園の発表会で欠席とのことでした。) 

 今年度は、岡山で農業高校の全国大会(第68回日本学校農業クラブ全国大会)があり、先生方も生徒さん達も大変多忙なようでありますので、ここの記念庭園をどこまでバリアフリーにできるか少し不安であります。

NN、田中先生と澁谷先生  OO、あずまやの西側  PP、記念庭園内
  尾畑先生 撮影 尾畑先生 撮影

 

平成 29年 6月  9日 撮影

QQ、改修中のあずまやの床 RR、三和土(たたき)の配合 SS、あずまや前の通路 TT、あずまや西側通路
      藤井先生 撮影 

 概要と感想 

 本日は、第一回目の授業参加の前に、記念庭園内の様子が現在どのような状態になっているのかを見に来ました。本日は、尾畑先生が出張のため、藤井先生が応対してくれました。車いすで入って行けない庭園内の写真は、藤井先生が撮影してくれました。感謝。

 本日は、田中先生・太田先生・佐伯先生と、生徒さん4人が放課後残って作業をしておりました。毎年度のことながら、造園に熱心な生徒さん達を見ていますと、その情熱が伝わって来て気持ちの良いものです。

 今年度は、「あずまや」の西側に通路をつくり、築山(つきやま)の先まで行けるようにしたいとのことですが、車いすに対応した通路をつくるために、樹木と土を撤去したり石積みを崩して移動したとのことです。

 左上写真QQは、「あずまや」の床の改修中ですが、、下打ち(基礎部分)深さ7cm厚、その上に仕上げとして7cm厚の「三和土(たたき)」にしていて、床塗りの仕上げ作業は途中でやめられないということで、本日中に終了させたいと生徒さん達と先生方との数人がかりで手早く作業を進めておりました。

 中央上写真RRは、「三和土(たたき)」の材料として、土(真砂土7割・粗い土3割)と消石灰を混ぜているところです。生徒さんが混ぜているところに、太田先生がにがり(炭酸カルシウム)を差し入れているところです。

 中央上写真SSは、「あずまや」前の入り口から「あずまや」の西側通路に行くまでの通路ですが、通路を広げるために作業にとりかかったところのようでした。

 右上写真TTは、「あずまや」西側の通路を広げているところですが、車いすが通るためにはまだ十分な幅ではないと感じました。車いすで行けなかったので、写真は藤井先生に撮ってもらいました。

 左下写真UUは、記念庭園内にある二つ目の大きな石灯籠ですが、本日元のように修復したところですと田中先生から説明がありました。
 二又とチルホール(タテ・ヨコ・ナナメ自由自在に牽引可能)と人力で重い石灯籠の石を移動したり、灯籠として元の姿に戻すために大変苦労されたと想像しております。また、写真で分かりますように樹木が隣接していて作業スペースが少ないということで、大きな石を移動するための操作や作業の安全を確保するのが大変難しかったようです。

 右下写真VVは、修復中の雪見灯籠のようですが、ほぼ修復が終わっていると田中先生から説明がありました。下写真は、車いすで入って行けない場所なので、藤井先生が撮影してくれました。

 6月16日の第一回目の授業参加で、バリアフリーとユニバーサルデザインについて説明するのですが、県作成のパンフレットがとても参考になりますので県庁で頂き、パンフレットを藤井先生に渡しました。

(5階:保健福祉部障害福祉課にて、バリアフリーー社会のおもいやりのパンフ25部、バリアフリー社会をめざして(まちづくり条例のマニュアル)25部(カラー コピー)を頂戴する。8階:岡山県 県民生活部 人権施策推進課にて、おかやまユニバーサルデザインのパンフ25部を頂戴する。)

UU、修復された石灯籠 VV、修復中の雪見灯籠
藤井先生 撮影  藤井先生 撮影 

 

平成 29年 3月 22日 撮影 

WW、あずまやの床 XX、あずまや西側通路 YY、 あずまや周辺 ZZ、傾いた石灯籠 
 尾畑先生 撮影   尾畑先生 撮影   尾畑先生 撮影 

 概要と感想

 今年度は、昨年度の「記念庭園のバリアフリー化」のパート2として、「あずまや」の床やその西側に車いすが通れる通路をつくってくれるようですが、庭園内のどこまで行けるようになるかは未定であります。

 左上写真WWは、「あずまやの床」でありますが、土間になっておりました。写真で分かりますように、「あずまや」の入り口で、土間内と外との仕切りに石が埋め込まれており、車いすでは段差を感じることができます。

 中央上写真XXは、「あずまや」の西側にある人一人が通れるぐらいの通路のようです。この通路の幅を広げて、車いすが通れるようにしてくれるようです。

 中央上写真YYは、「あずまや」の西側の周辺で、写真で分かりますように土が盛り上がっているように見えます。

 右上写真ZZは、阪神大震災の時の地震の影響で、傾いた大きな石灯籠であります。昨年度も修復しましたが、今年度二つ目の傾いた大きな石灯籠を修復する予定にしているようです。
 ここは機械が入っていけない場所なので、すべて人の力で作業しなければならないようです。

 第一回目授業参加の6月頃までに、どのくらい作業が進むのか、庭園内が広いだけに見当がつきません。

 上三枚の画像は、車いすで入って行けないので、尾畑先生に撮ってもらいました。感謝。

 平成30年 3月 下旬現在

 

バリアフリー庭園について 

まくあいのこかげの入口  各庭園のイラスト
平成26年3月31日 撮影  平成26年3月31日 撮影

※上写真は、バリアフリー庭園十ヶ所の位置と様子を描いた案内板ですが、「まくあいのこかげ」の入口にあります。

※案内板は、下記説明の「山野草園」「実のなる庭の実のなる木」「四季を彩る庭」流れのある庭」「バリアフリー展望台「友集の丘」和楽の庭」「見本庭園のバリアフリー化」「干拓地の生き物を知る」「万葉の小径」「まくあいのこかげ」の10庭園の位置情報であります。

 私はたまに京都の観光地(神社や寺)や町を散策することがありますが、古い建物とバリアフリーとの融合の難しさを感じます。ここの「バリアフリー庭園」では当初から和風テイストのうえにバリアフリーやUD(ユニバーサルデザイン)をうまく融合させているように思います。京都の観光地(神社や寺)や町とは趣が違いますが、和風テイストとともにここ独自の庭づくりに挑戦していて本当に素晴らしい庭(空間)が出来上がっていると感じております。

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 バリアフリー庭園は平成13年度から作庭していますが、高齢者や車いす利用者や視覚に障がいがある方そして子供さん達などが容易に庭園内を散策できるようになっています。
 このサイトでは3年目の平成15年度から庭園の紹介をしております。

 平成13年度の「山野草園」では「露地門」や「灯籠」や「水琴窟」、平成14年度「実のなる庭の実のなる木」では「四つ目垣」や「スロープ」、平成15年度の「四季を彩る庭」では「木製のかけ橋」や「石積み」や「花時計」、平成16年度の「流れのある庭」では「浅瀬の細長い池と石橋」や「乱杭(木製)で車いすの前輪止め」、平成17年度の「バリアフリー展望台「友集の丘」では「らせん状の石垣」と「長いスロープ」、平成18年度の「和楽の庭」では「石の顔」にこだわり「矢掛の青御影や万成石や豊島の石」などを配置したり、パーゴラと長いすの周りに集うことがでるスペースをつくったり「盆栽」置場として整備してきました。

 平成19年度の「見本庭園のバリアフリー化」では、「露地門」や「建仁寺垣」や「腰高麗袖垣」そして「山目地の工法による石畳のバリアフリー化」をし、平成20年度の「干拓地の生き物を知る」では、絶滅危惧種に指定されている魚や植物の保護のために細長い池をつくり、各庭園を石橋やインターロッキングブロック舗装で結び一つの庭として高齢者や車いす利用者や子供さん達などが容易に散策できるようにしました。

 平成21年度の「万葉の小径(まんようのこみち)」では、時という壁(バリア)を超えて万葉人(まんようびと)の心に触れられるような庭園をつくりました。石の桁と板をつかった橋や転落防止の竹の柵、インターロッキングブロック舗装、縁石・乱杭・低い四つ目垣・太い竹の車止めなど、これまでの庭園施工の技術面がまとめて取り入れられています。
 万葉集で詠まれた花を庭や植枡に植栽し、生徒さん達や先生方の短歌も紹介しています。

 平成22年度の「まくあいのこかげ」(「幕間の木陰はひらがなで明記」)は、バリアフリー庭園をつくり始めてこの周辺の区画では10年目の最後の年で、バリアフリー庭園全体の入口となる庭園をつくることになりました。車いす利用者が使用できる洗面台や子供さんのための足洗い場や長いす、滝や大きな樹木の木陰などがあり、皆さんがくつろげる広場となっております。

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 平成23年度は「50周年記念庭園のバリアフリー化」ということで、40年前に「50周年記念庭園」として先輩方が寄贈してくれた庭園を、先輩方の思いを大事にしたいと考え、噴水や樹木(ワシントンヤシ・フェニックス・ヒラドツツジ・サツキなど)を残しながら、いかに自分達らしい庭園のバリアフリー化をすることでありました。
 正面入口通路の他3つの通路も通路幅を広げゆるやかな勾配のスロープになっていて、噴水周りの通路とともにインターロッキングブロックを敷き詰めています。水槽の内側にネットを張って安全性を確保する方法に大変驚きそして大変感心いたしました。大変素晴らしいアイデアだと思っています。
 正面入口のアーチや屋外に常時設置の石のテーブルがあることで、癒される空間になっていますので高齢者・車いす利用者・子供さん達など皆さんがこのスペースで憩うようになると想像しております。

 平成24年度は「50周年記念庭園のバリアフリー化」に隣接するスペースで、こちらも「50周年記念庭園」として先輩方が寄贈してくれた庭園でした。「50周年記念庭園のバリアフリー化パート2」として作庭しましたが、平成15年度「四季を彩る庭」にある「かけ橋」の作り直し、大きな石の上に日時計がある石碑とその周り、そして大きな日時計がある広場など、離れた三ヶ所のスペースを施工しております。
 広場のインターロッキングブロック舗装にはハートマークを多用して、時には癒される空間、時にはアクティブな空間として、使用する人の気持ちしだいで様々な空間としての顔を見せてくれる楽しみな庭園であります。

 平成25年度「LINK〜時を刻む〜」は、中庭にあります「80周年記念庭園(くじらの庭)」の横区画のスペースで、庭園内に農業機械科の生徒さん達が製作した「UDのテーブル&いす」を置いたり、家政科の実習授業のためにカラフルな植筒にハーブの植栽や、支柱が御影石の大小の流し台を設置したりと、造園デザイン科だけでなくそれぞれの科との「つながり」を考えて作庭した庭園であります。

 クジラのいすやテーブルが置いてあるところから、周りが石積され中心に植栽された各樹木を見渡すことができ、春夏秋冬の時を刻むことのできるとてもゆったりした趣のある大変素晴らしい庭園になっています。 カラフルな植筒は、車いす利用者や背の低い子供さん達の目線の高さのことを考え、様々な高さにしています。

 平成26年度「香楽園(こうらくえん)」は、「香り」がテーマで多くの方がこの庭園内で季節に応じた花の香りを楽しめるようになっています。大き目の「植え筒」にはメインの樹木とその周りに寄せ植えの花があり、車いすで容易に近づいて花の香りを楽しむことができます。
 「50周年記念庭園のバリアフリー化パート1」と違和感なく融合して、教室の生徒さん達から見て、心が落ち着く癒される空間になっているのではないかと思っています。

 「緑のカーテン」とか、排水のために庭園全体に勾配がついていたりとか、言われて気が付くような細かなところにも工夫があります。
 コンクリート舗装の通路を板石の幅広い通路に変更しましたが、御影石の板石は、表面がツルツルで光沢がありましたが、安全のためにバーナーの火で表面を飛ばしザラザラになっていますので滑りにくくなっています。

 平成27年度「鳥達の集う滝」「クジラの庭のスロープ」は、80周年記念庭園の「クジラの庭」にスロープを二ヶ所つくるとともに、教室脇のコンクリートの廊下と庭の通路の段差解消ということでスロープをつくってくれました。

 また、「鳥達の集う滝」は、大きな石の配置を「天」「地」「人」の基本形をもとにして「滝石組」を作りました。水が流れるように「滝石組」の石を配置し、実のなる樹木を植栽して、その実を食べに来た小鳥の囀り(さえずり)が聞けるような庭になっていて、コンパクトなサイズの庭に盛沢山の工夫が凝縮された大変素晴らしい庭が出来上がっておりました。
 一日中観ていても飽きないと思わせるほど、大変素晴らしい風情がある滝石組だと感心しております。 

 昨年度は、「見本庭園の東西の門」の作成、クジラの庭の頭側のスロープの改修、そして「記念庭園のバリアフリー化」の三ヶ所です。第一回目の授業時には前記の二ヶ所は終了しており、三ヶ所目の「記念庭園のバリアフリー化」で、「あずまや」まで車いすで上がれるようにスロープを作ってくれました。傾いた大きな石灯籠を修復しました。
 スロープの勾配は、1/15以下、 入り口からの通路幅は車いすと人とがすれ違える幅になっており、途中の2ヶ所の踊り場スペースで、車いすと車いすとがすれ違うことができるようです。転落防止の竹垣やキャスター(車いすの前輪)止めとして太い孟宗竹を設置していました。
 同窓会記念館のお茶室を意識して、心を落ちつけ静かに庭のなかで楽しんでもらえるようなスロープにするために、ブロックの色合いは渋めにし「固まる土」などを採用しています。スロープの入り口から「あずまや」まで上がる過程について、皆さんが池周辺や大きな石灯籠や小さな滝など風景を楽しめるよう、見え易くするために石や樹木を移動したようです。

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 大変残念なことですが、平成22年度「まくあいのこかげ」・平成24年度「50周年記念庭園のバリアフリー化パート2」・平成25年度「LINK〜時を刻む〜」に設置されていた「休憩することができるの建物」は、傷みが激しいということで現在は撤去されております。

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 区画ごとにテーマは違いますが、興陽高校では各庭園を「バリアフリー庭園」と呼んでおります。では、なぜバリアフリー庭園と呼んでいるのか。それは、物理面でUDを目指した作庭というだけでなく、バリアフリーをより広くとらえて、人の心・自然保護・伝統的文化・時を超えて歴史的文学や香り等、様々なバリアに対応しながら作庭に取り組んでいますので、この学校ではUDではなくバリアフリー庭園と呼んでおります

 また、造園デザイン科だけでなく農業機械科とのコラボや家政科との合同授業など、一つの学科にとどまらず他の学科との壁を作らないということでも、ある意味でバリアフリーであると考えています。

 どうぞ、「バリアフリー庭園」の個々の庭を散策して、生徒さん達の作品と「思いやり」を堪能していただきたいと思っております。

 

平成15年度「四季を彩る庭」  / 平成16年度「流れのある庭」 / 平成17年度の「バリアフリー展望台「友集の丘(ゆうしゅうのおか)」

平成18年度「和楽(からく)の庭」 / 平成19年度「見本庭園のバリアフリー化」 / 平成20年度「干拓地の生き物を知る

平成21年度「万葉の小径(まんようのこみち)」 / 平成22年度「まくあいのこかげ」 / 平成23年度「50周年記念庭園のバリアフリー化

平成24年度「50周年記念庭園のバリアフリー化パート2」 / 平成25年度「LINK〜時を刻む〜」 / 平成26年度「香楽園(こうらくえん)」 

平成27年度「鳥達の集う滝」「クジラの庭のスロープ」 / 平成28年度「記念庭園のバリアフリー化」  / 平成29年度「記念庭園のバリアフリー化」のパート2

平成30年度「記念庭園のバリアフリー化パート3」 / 令和元年度「記念庭園のバリアフリー化パート4」と記念碑周りの整備 

日本における住環境の現状 / 福祉住環境コーディネーター / 住環境の整備について

介護保険制度と住生活との関係 / 町角のバリアフリーの意識 / 住環境についての質問コーナー