A、庭園の全景(上から撮影) | B、家政科実習教室側から撮影 | C、家政科実習教室側を撮影 |
尾畑先生 撮影 |
造園デザイン科 3年 20名(平成25年度)
庭園の紹介に入る前に、まずバリアフリーとUD(ユニバーサルデザイン)について簡単に記述しますと、バリアフリーとは、新しくつくる建物や既にあるものに対してのバリアをなくするという物理面だけでなく、情報面(手話・音声・字幕・映像など)や制度面(バリアフリー新法など)、人の心といった精神面などの様々な障壁を取り除いて、高齢者・障がい者(手足の障がい・視覚障がい・知的障がい・精神的障がいなど)・乳幼児連れ・外国人・その他困っている人などが社会に参加できるようにすることであると思っています。
UDは、新規につくるものについての製品や人をとりまく環境づくりについて7つの原則(公平性・柔軟性・単純性と直感性・認知性・安全性・効率的で疲れない・利用のためのサイズと空間があること)があり、最初からバリアのない世界を目指していますが、それは主に物理面についての原則であると考えています。
現状ではバリアフリーとUDのどちらの考えが優れているかを問題にするのではなく、「よりよい社会」そして「過ごしやすい町づくり」にしていくためには両方の考え方が必要であると考えています。
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さて、公共性の高い庭園については、利用者が利用しやすいかどうかで評価される場合が多いと思いますが、このページでは皆さんが利用しやすい庭園になるまでの過程で、苦労したことや工夫したことなどを説明したいと思っています。
校舎と校舎の間にある広い中庭に「80周年記念庭園(くじらの庭)」がありますが、本年度の庭園施工は、その横区画で平成6年に6つの小さな庭園をつくっていた場所であります。
ページ一番下の写真は今年度整備される前の様子ですが、写真で分かりますように車いす利用者の私が入って行けない状態でありました。
先ず沢山の樹木を移動し更地にするところから始めるわけですが、樹木の大きな根っ子を掘り出すのに人の力で1時間以上要したり、石積をするためにチェーンブロックで大きな石を移動し、石の高さを揃えるために約50cmほど埋め込んだりと、2時限の授業で一つも埋められないこともあったと光石先生が話してくれました。
大きな石をどの程度地中に埋めて積み上げる高さを決めたり、大きな石の角度を綿密に計算しながらを作業を進めていたようです。
また、本年度は校舎の耐震工事が途中から入りましたので、インターロッキングブロックの施工の手直しに随分時間がかかったようです。注文したブロックがなかなか手元に届かなかったりしたことも作業の進行に影響したようです。
今年度の作庭では、いろいろな障壁が特に多かった年であったと思っています。
それから今年度は、農業機械科とのコラボレーションとして、この庭園内に農業機械科の生徒さん達6人が製作したテーブルといすを置くことになっています。こちらのテーブルといすも大変素晴らしい出来栄えで、その製作については「農業機械科UDのテーブル&いす製作」のページで紹介していますのでアクセスしてみて下さい。
3月31日に訪問した時には、造園デザイン科としての作庭が終わったばかりでしたので、テーブルといすは「80周年記念庭園(くじらの庭)」の上に置かれていました。
左上写真Aは、校舎の三階から尾畑先生が今年度作庭した庭園を撮ってくれた写真であります。石畳からの東屋と石積の中心に植栽された各樹木の位置など、とてもゆったりした大変バランスの良い庭園になっているのが分かると思います。
そして、東屋のいすに座って樹木を見渡せるのでそれぞれの季節を感じることができるようです。植筒や「心」の文字の位置も分かりますし、様々な障壁があったなかで大変素晴らしい庭園になっていると大変感心しております。
中央上写真Bは、家政科の実習教室側から撮影したもので、左側はアラカシの樹木でよく生垣のために植栽されたりしています。カラフルな植筒がこれまでのバリアフリー庭園にはない斬新な雰囲気を漂わせています。植筒は、車いす利用者や背の低い子供さん達の目線の高さのことを考え、様々な高さにして植物を楽しんでもらいたいという生徒さん達の思いやりがあります。
写真には写っていませんが、植筒の手前に大小の流し台が設置してありました。
右上写真Cは、1階に家政科実習教室がある校舎側を撮影したものです。手前の赤いポールに蔦性の植物が覆って日差しを遮るようになれば、夏場ここに座って涼むことができると思っています。
庭園全体を見渡して、東屋のいすや石積などに座って季節(春夏秋冬)を感じさせる庭園になっているのではないかと思います。
今年度の庭園は、コラボレーションというテーマがあります。庭園内に農業機械科の生徒さん達が製作したテーブルといすを置いたり、家政科の実習授業のために植筒にハーブ・つまものの植栽予定など、共同で一つの庭園をつくり上げてゆくために最初から計画されていました。
造園デザイン科とそれぞれの科との連結ということで「LINK」という名前にしたのではないかと思うのですが、この庭園内で科を問わず実習授業に使用できるようなスペースになっているのではないかと思っています。
また、この庭園には東屋のいすや石積など座る場所が沢山ありますが、周りの木々を見て春夏秋冬を感じながら腰掛けて休憩するとか食事をしたりして、過ぎ行く時と季節を感じてほしいということから、「LINK〜時を刻む〜」という名前にしたように思っています。
ただ単に科と科をつなぐということではなく、この庭園内に佇む皆さんの気持ちが同じ四季を感じて癒され心を通わせてもらいたいという願いが、緑色のブロックでつくった「心」という文字にも表されているのではないかと想像しています。
実習授業として使用できるだけでなく、文化祭やイベントにも使用できるようになっています。多目的に使用できる庭園となっているようです。
卒業式を終えても完成出来ていなくて、春から造園関係に就職が決まっている生徒さん達を中心に毎日交代で出てきて庭園を仕上げて行ったようです。
このページで生徒さん達の熱い思いが隠った庭園の過程を知っていただけたら幸いであります。
どうぞ、お時間がありましたら、今年度(平成25年度)「LINK〜時を刻む〜」と新しく案内板が設置された10のバリアフリー庭園そして「50周年記念庭園」のバリアフリー化パート1・パート2で、ゆっくりと歩みを進めて気持ちをリフレッシュさせていただきたいと思っております。
毎年度ながら、庭園の設計・施工の実習授業で、これほど素晴らしい庭園をつくりあげてしまう生徒さん達を指導する興陽高校の先生方の奥深い考え(生徒さん達の自由な発想の重視など)や指導力や技術力の高さにあらためて感服しております。
※施工の過程については、ページの一番下からみてください。
◇岡山県立興陽高等学校
住 所 : 岡山県岡山市南区藤田1500
電 話 : 086-296-2268(代表)
URL : http://www.koyohigh.okayama-c.ed.jp/
「造園デザイン科 第3学年 庭園施工管理類型 20名」
(造園デザイン科 科長 尾畑篤司先生、藤本泰史先生、藤井泰彰先生、田中賢造先生、太田貴久先生、光石未佳子先生)
内閣府特命担当大臣表彰優良賞受賞(平成19年度バリアフリー化推進功労者表彰) 受賞者一覧
◇山陽学園大学
住 所 : 岡山市中区平井一丁目−14−1
電 話 : 086-272-6254(代表)
FAX : 086-273-3226
URL : http://www.sguc.ac.jp/
総合人間学部 生活心理学科
澁谷俊彦教授 (倉敷市伝統的建造物群等保存審議会会長、岡山県環境審議会委員)
D、くじらの庭と庭園 | E、校舎側からの全景 | F、心 | G、テーブル設置予定 |
尾畑先生 撮影 |
左上写真Dは、校舎の3階から尾畑先生に写真左側の今年度の庭園と右側「80周年記念庭園(くじらの庭)」を撮影してもらいました。くじらの口元に農業機械科の生徒さん6人が製作したテーブルといすが小さく見えています。その先に興陽スカイツリーが緑の芝生の上に立っています。
尾ひれまで写っているくじらの全景については、「2013年度 地域貢献プロジェクト 興陽高校」にアクセスしてみてください。
中央上写真Eは、校舎側から撮した庭園の全景ですが、東屋と石積のなかに植栽された樹木の様子が分かると思います。手前はヤマザクラでつぼみの花が多く付いておりました。次に見えていますのがヤマモミジで、奥の石積にはシマサルスベリが植栽されています。
中央上写真Fは、緑色のブロックを使用して「心」という文字を描いているのが分かると思います。東屋があるような和風庭園には池を配置することが慣わしとなっているようですが、 「心」という文字は池を現し、池を現すために緑色のブロックを使ったと下記のレポートにも記述してあり庭園に対する思い入れを書いてくれました。
「心」の文字は、色を抑えたブロックで縁取りされていますので、水に濡れるとより綺麗に映えるとのことです。
右上写真Gは、校舎側に設置されている大小の流し台と橙色の植筒とヤマザクラを植栽した石積が見えていますが、その間の空いたスペースに農業機械科の生徒さん達6人が製作したテーブルといすを置く予定にしているようです。本日はくじらの庭から移動されていませんでした。
左下写真Hは、コンクリート管を切断して虹を意識して七色の上に葉っぱをスプレーで吹き付けてデザインした植筒であります。それぞれの高さは、赤37cm、橙(だいだい)39cm、黄20cm、緑12cm、青39cm、藍(あい)9cm、紫12cmで、車いす利用者や背の低い子供(幼児)さんにも花を楽しめる高さになっています。
植栽はこれからということでしたが、家政科の実習授業のためにハーブや「つまもの」を植栽したいと聞きました。
中央下写真Iは、流し台ですが流しの部分は大小どちらの石もピンク色の万成石になっていました。支柱は御影石です。
大きい流し台のサイズは、幅1475mm×奥行310mm×高さ830mm(空き690mm)で車いす利用者の脚を入れて使用できるようになっています。
小さい流し台のサイズは、幅870mm×奥行310mm×高さ730mm(空き580mm)になっていて子供さんの背の高さのことも考えているようです。
「農水栓」と表示された蓋があるヶ所は、ブロックの高さと合わせるために枠を上げ、排水管は新規につくったとのことです。
中央下写真Jは、石畳の方から撮影した東屋ですが、東屋の屋根の色はブラウンでポリカーボネート波板を使用しています。洗い出しの上に束石を置き、その上に太い孟宗竹の支柱が乗っていました。
腰壁は網代になっていて、孟宗竹を並べて座れるようになっていました。写真から分かりますように、風が通り抜けるようなつくりになっているので、夏は涼しいだろうなと想像しています。
右下写真Kは、長くのびるツルバラの植栽に使用していたことを田中先生から聞きしましたが、この庭園では赤いポールの部分につる性の植物を這わせて屋根をつくり日差しを遮るようにしたいとのこと。真ん中が空いているので、植物を植える予定にしているとのことを光石先生から聞きました。
1月24日に拝見した庭園の様子を考えると、今年度中に庭園を完成させることは無理かもしれないと考えていました。1月28日から1月31日までの3年学年末考査が終わると授業はないですし、3月1日が卒業式ですので、授業としての作業時間などありません。
どうやってここまで庭園を完成させたのか光石先生に聞きしましたら、造園関係に進む生徒さんを中心に2月中そして3月1日卒業式が終わっても交代で数人が作業し庭園を完成させたとのことです。庭園が完成したのは3月中旬頃だと聞きました。
きっちり最後まで庭園を完成させるとは、流石に造園デザイン科の生徒さん達であると大変感心しております。大変お疲れさまでした。
一時はどうなることかと心配しましたが、本日拝見して大変素晴らしい庭園が出来上がっていて感慨深いものがありました。
H、植筒 | I、流し台 | J、東屋 | K、赤いポール |
L、全景 | M、澁谷先生 | N、仮置きのテーブル | O、桝の高さを確認 |
左上写真Lは、庭園全体の様子ですが、耐震工事終了後にブロック施工の直しもあり思うようにブロックが敷き詰められていないようでした。
中央上写真 Mは、澁谷先生がボードを使用して庭園全体の感想や使用されている万成石や小豆島産の石などについて説明をしているところです。
中央上写真Nは、農業機械科の生徒さん達が製作したテーブルといすを仮置きしていた「くじらの庭」から移動して、今年度の庭園に移動し造園デザイン科の生徒さん達が試しにいすに座り、テーブルの高さが使い勝手が良いかどうか確認しているところです。
この庭園では、テーブルといすを置く場所は「流し台」の近くにする予定だと聞きました。
右上写真Oは、耐震工事の足場が取り除かれ、これからブロックの施工をするために、光石先生(左)と太田先生(右)が桝の高さを確認しているところです。この桝の蓋には「農水栓」と表示されていましたが、なかには水道の蛇口がありました。
この枡の傍に「流し台」を設置する予定のようです。
右上写真Oの桝の傍に「流し台」を支える支柱が見えていましたが、耐震工事のための足場が取り除かれ、これからやっとブロックを施工する作業に取り掛かれるようです。
この時期に、ほとんどのブロックの施工作業を終えていない状態ですと、今年度中にこの庭園が完成するのは難しいように思いました。
下記は、設計と施工について、平成26年1月6日以降に各代表の生徒さんが庭園施工管理類型の生徒さん達の意見をまとめてくれたものです。(平成26年1月24日 現在)
◇設計責任代表者(石田ひかり) | ◇施工責任代表者(難波達人) |
「80周年記念庭園横区画」をどのような思いで計画されたのでしょうか。 1、今年度の庭園の名前と、名前をつけた理由。誰のためにUD・バリ アフリーにしようとしましたか。 ・庭園の名前:「Link〜時を刻む〜」 ・理由:造園デザイン科と農業機械科との結合、春夏秋冬と時を刻む |
「80周年記念庭園横区画」をどのような思いで施工されたのでしょうか 施工に関して個別に難しかった点や工夫した点いついて。 1、整地や石積みして樹木を植栽したことなど、各々苦労したことについ て。 ・元もと樹木が植えてあったので根回きをし、移動したり草抜きをしまし た。その中でも夏を感じるシマサルスベリは大きい樹木で掘るのが 大変でした。 ・バックホウでも、まだまだ完璧にあつかうことができなく、操作も難しか った。 残りはスコップで穴を掘るので、大き過ぎず小さ過ぎず掘っていきまし た。 2、主な樹木の名前とその特色と植栽で難しかった点について。 ・キンモクセイ・・・花が香りよく、大気汚染や潮風に強い秋を感じる。 ・ヤマザクラ・・・・花は2〜5個ずつ集まって咲く。開花は3〜4月。春を 感じる。 ・ヤマモミジ・・・・開花は4〜5月で秋に葉が赤く紅葉する。 ・シマサルスベリ・・開花は7〜9月で曲がった幹とスベスベの木肌が特 徴。夏を感じる。 ・アラカシ・・・・・葉の特徴はギザギザ(先端・葉)でウラが白い。生垣につ かうために植栽。 ・イチョウ・・・・・・秋になると葉を黄色にする「ギンナン」ができる樹木。 3、石積の一番低いところ ( 34 cm) 一番高いところ ( 49 cm) 石積の過程と苦労した点、難しかったところをについて。 ・小豆島産の石は大きさもバラバラで種類も多く組み合わせました。 ・大きい石の時は穴を深く掘ったりなど、形をかえるために石のみと 石頭でけずったりするのが大変でした。 ・石の高さもでこぼこではなく、水平器を使い石の高さを調整しながら しました。 ・大きい石は重いので運ぶのが大変でした。 ・重い石の場合は、チェーンブロックを使って据え付けました。据え付け ても、少しの移動は体で動かしたりして工夫していきました。 ・大きい石の間に小さい石をつめ、石積します。 ・石もたくさんあり、ちょうどいい石を見つけるのがなかなか難しく、モル タルを多くいれたり砂をいれたり、石を削ったりして苦労しました。 4、テーブルやいすや東屋の設置で難しかった点や工夫した点を教え てください。 ・東屋の下は、インターロッキングブロックではなく、他の所で学んだ洗い 出しをいかしました。 ・洗い出しにする時に、うまく石がつまってなかったのでやり直しになった り雨で作業ができなくなりそうになりました。 ・洗い出しするときの水の加減が難しかった。 ・東屋で竹の組み合わせや屋根の設置が難しいと思う。(まだ組み立て られていないので、らん展で設置での感想です) ・テーブルやいすを設置する場所を確保するために、樹木のまわりの花 壇の大きさ等配慮した。 5、植筒の作成過程について。他に難しかった点や工夫した点を教えて ください。 ・一つのコンクリート管を3つにしるしをつけてコンクリートカッターで切っ た。 ・切り口のカドが危ないので丸くなるように削った。 ・設置する際には、植物の成育に合わせて高さを変えて設置しました。 ・設置にあたっては、水平にしたり、決めた高さまで掘る作業が大変で した。 ・コンクリート管では地味なので、七色に塗りました。その際に葉をはり つけて、その上からスプレーをかけ模様をつけています。 |
P、くじらのテーブル | Q、記念撮影 |
平成26年1月24日(金) 興陽高校内で農業機械科「赤木班の課題研究発表会」がありました。
平成25年度 地域貢献プロジェクト(造園デザイン科とのコラボレーション)として、ユニバーサルデザインを取り入れたテーブル&ベンチの製作をパワーポイントを使って発表したようです。
その発表の直後別室にて、再度私と澁谷先生のために農業機械科の3年生が6人で1年間の研究の成果を発表してくれました。
パソコン画面の前に私は位置し、パワーポイントを使って発表した通りを再現してくれました。
研究目的・年間計画・地域貢献プロジェクトについて・まとめの順序で説明してくれ、並々ならない苦労や工夫した点が分かりやすく伝わってきました。詳細は「2013年度 地域貢献プロジェクト 興陽高校」にアクセスしてみてください。
左上写真 Pは、今年度の庭園に仮置きされたくじらをデザインしたテーブルと、ベンチの背もたれは鯨が潮をふいた時をイメージして作られているようです。
テーブルのサイズは幅2m×奥行1m7cm×高さ70cm(天板厚33ミリ)です。
テーブルの天板の高さは70cmで天板の厚さは約3cmですから、車いす利用者の私にはちょうど良い高さですし、写真で分かりますように脚が入る空間がありますので、大変使い勝手が良いテーブルであると感じました。
右上写真Qは、発表再現後に農業機械科の生徒さん達6人と、一列目中央に私、二列目中央に赤木先生そして右端の澁谷先生で記念撮影をしました。
造園デザイン科が施工している今年度の庭園のどの辺に、このテーブルといすを置くのか楽しみであります。
R、テーブルといす | S、全景 | T、校舎側 | U、廊下と段差 |
左上写真Rは、くじらの庭に置かれていた農業機械科の生徒さん達が製作したテーブルといすであります。くじらの庭は、土を盛り上げてブロックで施工し周りが石積みされています。
右上写真Uの芝生の部分がブロックといった感じで、車いす利用者の私の目線の高さとテーブルの天板の高さがちょうど同じで、テーブル全体の大きさやデザインを観ることができませんでした。右上写真Uの廊下の段差は24cmです。
左上写真Rは、両手をのばして私の頭の上からテーブルを撮影したものです。
中央上写真Sは、校舎側から見た庭園の様子であります。手前のヤマザクラの石積に使われている石のなかに赤っぽい(黒っぽい)石がありますが、小豆島産の石ということです。
ブロックを施工するスペースがまだまだ残っていました。
中央上写真Tは、耐震工事の足場を取り除いた後の更地であります。左側の校舎の1階は家政科の実習教室ですが、今年度はここにブロック施工し、その上に流し台を設置したいと田中先生から聞きました。
耐震工事が入る前に既に施工してあったブロックは、足場のためにガタガタになり、再度施工をしなければならないようです。
左下写真Vで分かりますように、現在は洗い出しのままの状態ですが、通路から設置予定の東屋まで石畳になっていました。早く東屋を観たいものです。
中央下写真Wで分かりますように、まだまだブロックを敷き詰める作業が残っている様子が、こちらの写真からも分かると思います。
右下写真Xは、赤い糸を張って水平レベルを出しているところです。
3年生の授業日数が後一ヶ月ないように思いますので、これだけ広範囲にブロックを施工する作業が残っていますと、庭園が果たして完成するのか不安になってきました。
V、石畳 | W、全景 | X、水平レベル |
Y、石積と植栽 | Z、タイル補修 | AA、左端車いす |
左上写真Yは、庭園の全景ですが、まだ耐震工事のための足場があり、庭園内にこれからブロックを敷き詰めるところであります。
中央上写真Zは、光石先生と生徒さん達がタイルの補修をしているところであります。赤く塗られたポールとタイル部分を持つこの物体の名前は分からないですが、赤いポールに「つる性の植物」を這わせ、植物で屋根をつくり陽を遮るようにしたいとのこと、そしてタイル部分に腰掛けられるようにしたいと計画しています。
家政科の実習授業のためにハーブや「つまもの」を植栽したいということを聞きました。
石積みの高さはブロックの施工面より約40cmの高さになるようにしていると生徒さんから説明がありました。
また、カラフルな円筒形の筒について聞いたところ、約2mのコンクリートの管を切断し、虹色の七色に色を塗り葉っぱを貼ってスプレーで色を吹き付けましたと説明してくれました。筒の色は赤、橙(だいだい)、黄、緑、青、藍(あい)、紫の七色ですが、葉っぱを押さえていた手に色がついてしまって当分色が取れなかったと女生徒さん達からの感想がありました。
農業機械科の生徒さん達が製作するテーブルといすの配置がまだ分からないのですが、テーブルのサイズは幅2m×奥行1m7cm×高さ70cm(天板厚33ミリ)にしましたと赤木先生からお聞きしました。ダンボールでテーブルを試作して車いすで試してみたとのことも聞きました。
ブロックの施工が終わった庭園に農業機械科の生徒さん達が製作したテーブルやいすを置いて、庭園全体のなかで石積やテーブルの位置がバランスの良いものになっているかどうか完成した庭園を早くみたいものです。次回はどのように整備されているのか、次回の訪問が大変楽しみになってきました。
また、右上写真AAの左端に車いすの背中が見えています。今日の造園デザイン科の授業の後半に、家政科の生徒さん達が合流し、車いす操作の仕方を説明するために車いすを準備してもらいました。
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さて、後半の授業では、家政科人間科学類型「谷口先生」と18名の生徒さん達が合流し「車いす操作の仕方」・人間工学と空間について・スロープの勾配・手すりの直径・車いすの通路と入口の関係(有効幅員)などについて説明しました。下記は簡単に記述したものです。
1、車いす操作の仕方については、 イラスト入りのA4用紙5枚をコピーしたものを配布し車いす介助の仕方を説明しました。
2、人間工学と空間について、農業機械科とのコラボがありますので、人間の作業能力のなかでテーブルの高さやいすの座位の高さなどを説明しました。
3、スロープの傾斜について、勾配の考え方は、建築では角度ではなく何分の一という言い方をします。
車いすを自分で操作する場合は、スロープの勾配は1/15以下にしてもらいたいと思っています。
4、手すりの太さについて
・一般的に、横手すりの直径は35ミリ、縦手すりは握って力が入り易いように直径32ミリと考えていますが、当事者の手の大きさや身体能力を考慮して手すりの太さを決めてください。
・材質は、木製又はアルミニウム+塩化ビニール被膜の手すりなどがあります。(水回り用にステンレス製の手すりを使うと冬場手の熱を吸い取られるような気がします。)
5、通路と廊下のスペース(幅)・・・車いす使用時(自操用車いすの幅:約65cm・介助用車いすの幅:約約55cmとして話しています)
◎住宅内においての車いすについて(自分で操作する場合について話しています)
1)市販車の幅約65cm+腕の可動域約15cm。ですから、直線の通路幅は最低80cm必要になります。
2)住宅内での廊下と入口の有効幅員の関係で、福祉住環境コーディネーターのテキストでは一般的に廊下・入口の関係は85p×85pと書かれています。
片方が80cmなら、もう一方は90cmとなります。
3)車いす操作の能力には個人差がある。
車いすの回転スペースのサイズは公共施設では150cm×150cmとなっています。これぐらいあればほとんどの車いす利用者は回転できると思いますが、住宅内でこのスペースを確保することは難しい。
住宅改修において私の車いす操作の能力から、当事者の車いす操作のレベルを考え、そこから当事者が必要とする廊下と入口の有効幅員を見つけ出そうとしています。
4)暮らして困らないと感じるサイズ
廊下と入口の関係で85p×85pというのは、生活に必要な最低のサイズであると考えています。
車いす操作の能力には個人差がありますいので、障がいを持つ当事者にとっても介助する家族にとっても、なるべく生活し易いサイズを見つけ出すことが大切だと思っています。
後で住宅改修しなければならなくなった場合、建物の構造上難しいことの方が多いようです。家を新築する時には、なるべく将来のことも考え合わせて設計をしてもらってください。
BB、全景 | CC、石積と植栽 | DD、植桝と東屋設置前 | EE、赤いポール |
左上写真BBは、今年度の庭園の全景と、校舎側には耐震工事のために白い幕が張られています。
中央上写真CCは、バラバラだった大きな石がかたち良く石積され「ヤマザクラ」「ヤマモミジ」「シマサルスベリ」などが植栽されていました。
ヤマモミジの移植植栽は11月〜2月頃が良いらしいのですが、現在のヤマモミジは2本目であると尾畑先生から聞きました。1本目は真夏に植栽したのでうまくいかなかったようです。なかなか工事の進行上移植時期を選択できなくて仕方なかったようです。
作庭中の施工を知ると、先生や生徒さん達の苦労を知ることができ、この庭園への思い入れが深くなってきます。
中央上写真DDの中央の白い部分は、東屋を設置するためのスペースで洗い出し(床の仕上げでセメントが硬くならないうちに水を流して小石を浮きだたせる手法)になっています。
右上写真EEは、何の用途に使うものなのか定かではありませんが、赤いポールに植物を這わせて将来的には日差しを遮るように計画しています。
左下写真FFは、武道場横に11本の樹木を移植し仮置きしていましたが、耐震工事のために大部分の木々は圃場に移したようです。
ブロックの施工が終了した庭園のなかに、東屋や農業機械科の生徒さん達が製作するテーブルやいすなどを置いて、この庭園が様変わりした様相を早くみたいものです。
FF、仮置き場 |
GG、チェーンブロック | HH、三脚と石 | II、耐震工事予定 | JJ、石板 |
左上写真GGは、スペース全体ですが、大きな石を移動・設置するためにチェーンブロック(丸太の三脚とチェーン)が見えています。この日は二ヶ所に設置されていました。
チェーンブロックは、大きな石を吊り上げて移動するための方法であります。大きな石を移動させる時に、転倒しないように三脚の一脚づつ動かしてバランス良く移動させなければならず、大変な時間と労力がかかるようです。
中央上写真HHは、チェーンブロック(丸太の三脚とチェーン)ですが、大きな石を移動するためにチェーンブロックとクレーンをつかったとのことです。今年度はこの大きな石をいすの代わりに使用したいということです。なかなか人が座れるような角度に大きな石を設置するのは難しいようです。
中央上写真IIで分かりますように、校舎から5mのところにカラーコーンが並べてありました。本年度は、校舎の耐震工事をする予定らしく、一学期中に校舎に沿って幅5m流し台設置予定の手前までインターロッキングブロック舗装する予定だと聞きました。
右上写真JJは、施工スペースとの境界に埋めてある石板であります。赤いポールの置物がありますが、何に活用するものか今は不明であります。
左下写真KKは、澁谷先生(左)と田中先生(右)ですが、今後の作庭についてお話をしているところであります。
右下写真LLは、田中先生(左)と光石先生(右)ですが、授業終了後実際にここの大きな石の上に座って生徒さん達が休んだり歓談できるように石を配置したいと説明してくれました。
今年度は、農業機械科の生徒さん達6人と赤木先生が第一回目の授業に参加され、この庭園内にマッチしたテーブルといすを作ってくれるということです。
今年度の庭園は、造園デザイン科と農業機械科とのコラボレーション(共同制作)ということでありますので、こちらのほうも大変楽しみであります。
今年度は、この庭園内で春夏秋冬の季節を感じながら、なおかつ実習で使用できたり、文化祭やイベントに使用できるような庭園にしたいと尾畑先生が話してくれました。
農業機械科の生徒さん達6人が作ったテーブル(4人〜6人用)といすを、この庭園のなかに設置する予定とともに、世界らん展日本大賞2013に「鏡花風月(きょうかふうげつ)」として出展しディスプレイ審査部門で準優良賞を受賞した東屋を設置したいとのことですが、それぞれどのような形状のものであろうか、実際のものを見るのが大変楽しみであります。
次回2回目の授業参加は10月ぐらいだと思うのですが、それまでに今年度の庭園がどこまで出来上がっているか大変楽しみであります。
KK澁谷先生と田中先生 | LL田中先生と光石先生 |
MM、更地の全景 | NN、仮置き移植 | OO、スロープ | PP、境石板 |
左上写真MMは、植栽されていた木々や草花を取り除いて更地にした様子です。
中央上写真NNは、庭園に植栽されていた11本の木を武道場横のスペースに仮置きしている様子であります。
中央上写真OOは、段差24cmの校舎の通路から、この辺りまで長さ5mのスロープにしましたと尾畑先生が指差してくれているところです。
「ラクウショウの木」の手前に本年度作庭するスペースとの境界として、右上写真PPで尾畑先生が立ててくれている石板を埋め込んで行くようです。
さて、左上写真MMのスペースがどのようになるのか大変楽しみであります。
QQ、クジラの庭に隣接 | RR、校舎側 | SS、スペース全体 |
左上写真QQは校舎と校舎の間にある広い中庭で、右側に「80周年記念庭園」で作庭されたクジラをデザインした庭の一部が見えております。
中央にインターロッキングブロック舗装された通路の奥に十数本の大変高い「ラクウショウの木(落葉針葉高木で、日本ではヌマスギと呼ばれている)」が見えていますが、今年度はその手前を整備する予定となっています。
中央上写真RRで分かるように、ここのスペースは六つに区画された庭があったようですが、車いすが入って行けないということで、一つの庭にして高齢者や車いす利用者や子供さん達などにとって優しいスペースになるようにしようとしています。
また、中央上写真RRの校舎1階が家政科の実習教室になっており隣接していますので、この庭園のスペースで実習授業ができたり、生徒さん達が食事をしたり休憩できるようなスペースになるようにと考えているようです。
本年度は、先ずこの雑然としたスペースを更地にすることから始めることになっております。
右上写真SSは、六区画全体の様子ですが大きな石が無造作に置かれてありました。
庭を新たにつくるには、先ずここにある沢山の木々を移動し更地にしなければなりませんが、樹木の根っ子を掘って他の場所に移植するというのは大変な作業であると想像しています。
平成26年 4月 上旬現在
まくあいのこかげの入口 | 各庭園のイラスト |
平成26年3月31日 撮影 | 平成26年3月31日 撮影 |
※案内板は、下記説明の「山野草園」「実のなる庭の実のなる木」「四季を彩る庭」「流れのある庭」「バリアフリー展望台「友集の丘」「和楽の庭」「見本庭園のバリアフリー化」「干拓地の生き物を知る」「万葉の小径」「まくあいのこかげ」など、10庭園の位置情報であります。
私はたまに京都の観光地(神社や寺)や町を散策することがありますが、古い建物とバリアフリーとの融合の難しさを感じます。ここの「バリアフリー庭園」では当初から和風テイストのうえにバリアフリーやUD(ユニバーサルデザイン)をうまく融合させているように思います。京都の観光地(神社や寺)や町とは趣が違いますが、和風テイストとともにここ独自の庭づくりに挑戦していてほんとに素晴らしい庭(空間)が出来上がっていると感じております。
バリアフリー庭園は平成13年度から作庭していますが、高齢者や車いす利用者や視覚に障がいがある方そして子供さん達などが容易に庭園内を散策できるようになっています。
このサイトでは3年目の平成15年度から庭園の紹介をしております。
平成13年度の「山野草園」では「露地門」や「灯篭」や「水琴窟」、平成14年度「実のなる庭の実のなる木」では「四つ目垣」や「スロープ」、平成15年度の「四季を彩る庭」では「木製のかけ橋」や「石垣」や「花時計」、平成16年度の「流れのある庭」では「浅瀬の細長い池と石橋」や「乱杭(木製)のキャスター止め」、平成17年度の「バリアフリー展望台「友集の丘」では「らせん状の石垣」と「長いスロープ」、平成18年度の「和楽の庭」では「石の顔」にこだわり「矢掛の青御影や万成石や豊島の石」などを配置したり、パーゴラと長いすの周りに集うことがでるスペースをつくったり「盆栽」置場として整備してきました。
平成19年度の「見本庭園のバリアフリー化」では「露地門」や「建仁寺垣」や「腰高麗袖垣」そして「山目地の工法による石畳のバリアフリー化」をし、平成20年度の「干拓地の生き物を知る」では絶滅危惧種に指定されている魚や植物の保護のために細長い池をつくり、各庭園を石橋やインターロッキングブロック舗装で結び一つの庭として高齢者や車いす利用者や子供さん達などが容易に散策できるようにしました。
平成21年度の「万葉の小径(まんようのこみち)」では、時という壁(バリア)を超えて万葉人(まんようびと)の心に触れられるような庭園をつくりました。石の桁と板をつかった橋や転落防止の竹の柵、インターロッキングブロック舗装、縁石・乱杭・低い四つ目垣・太い竹の車止めなど、これまでの庭園施工の技術面がまとめて取り入れられています。
万葉集で詠まれた花を庭や植枡に植栽し、生徒さん達や先生方の短歌も紹介しています。
平成22年度の「まくあいのこかげ」(「幕間の木陰はひらがなで明記」)は、バリアフリー庭園をつくり始めて10年目の最後の年で、バリアフリー庭園全体の入口となる庭園をつくることになりました。車いす利用者が使用できる洗面台や子供さんのための足洗い場、屋根のある休憩所や長いす、滝や大きな樹木の木陰などがあり、皆さんがくつろげる広場となっております。
平成23年度は「50周年記念庭園のバリアフリー化」ということで、40年前に「50周年記念庭園」として先輩方が寄贈してくれた庭園を、先輩方の思いを大事にしたいと考え、噴水や樹木(ワシントンヤシ・フェニックス・ヒラドツツジ・サツキなど)を残しながら、いかに自分達らしい庭園のバリアフリー化をすることでありました。
正面入口通路の他3つの通路も通路幅を広げゆるやかな勾配のスロープになっていて、噴水周りの通路とともにインターロッキングブロックを敷き詰めています。水槽の内側にネットを張って安全性を確保する方法に大変驚きそして大変感心いたしました。大変素晴らしいアイデアだと思っています。
正面入口のアーチや屋外に常時設置の石のテーブルがあることで、癒される空間になっていますので高齢者・車いす利用者・子供さん達など皆さんがこのスペースで憩うようになると想像しております。
昨年度は「50周年記念庭園のバリアフリー化」に隣接するスペースで、こちらもを「50周年記念庭園」として先輩方が寄贈してくれた庭園でした。「50周年記念庭園のバリアフリー化パート2」として作庭しましたが、「かけ橋」の作り直し、大きな石の上に日時計がある石碑とその周り、そして大きな日時計と休憩所がある広場など、離れた三ヶ所のスペースを施工しております。
広場のインターロッキングブロック舗装にはハートマークを多用して、時には癒される空間、時にはアクティブな空間として、使用する人の気持ちしだいで様々な空間としての顔を見せてくれる楽しみな庭園であります。
区画ごとにテーマは違いますが、興陽高校では各庭園をバリアフリー庭園と呼んでおります。では、なぜバリアフリー庭園と呼んでいるのか。それは、物理面でUDを目指した作庭というだけでなく、バリアフリーをより広くとらえて日本の伝統的文化や歴史そして自然保護なども考えてきたからであります。
どうぞ、「バリアフリー庭園」全体を散策して、生徒さん達の作品と心を堪能していただきたいと思っております。
平成15年度「四季を彩る庭」 / 平成16年度「流れのある庭」 / 平成17年度の「バリアフリー展望台「友集の丘(ゆうしゅうのおか)」
平成18年度「和楽(からく)の庭」 / 平成19年度「見本庭園のバリアフリー化」 / 平成20年度「干拓地の生き物を知る」
平成21年度「万葉の小径(まんようのこみち)」 / 平成22年度「まくあいのこかげ」 / 平成23年度「50周年記念庭園のバリアフリー化」
平成24年度「50周年記念庭園のバリアフリー化パート2」 / 平成25年度「LINK〜時を刻む〜」 / 平成26年度「香楽園(こうらくえん)」
平成27年度「鳥達の集う滝」と「クジラの庭のスロープ」 / 平成28年度「記念庭園のバリアフリー化」 / 平成29年度「記念庭園のバリアフリー化」のパート2
平成30年度「記念庭園のバリアフリー化パート3」 / 令和元年度「記念庭園のバリアフリー化パート4」と記念碑周りの整備