町角のバリアフリーの意識

 

38) 興陽高校「記念庭園のバリアフリー化」パート3 

平成 31年 2月 27日 撮影 

A、記念館への通路 B、中央スロープとヤエザクラと池 C、来年度施工予定の園路から撮影
  尾畑先生 撮影  

造園デザイン科 庭園施工管理類型 3年 16名(平成30年度) 

 公共性の高い庭園については、多くの利用者が使用しやすいかどうかで評価される場合が多いと思いますが、このページでは、多くの人が利用しやすい庭園をつくる過程とともに、興陽高校の造園デザイン科の生徒さん達の技術力と感性の素晴らしさをお伝えしたいと思っています。

 そして、興陽高校の造園デザイン科 庭園施工管理類型 3年の生徒さん達の「記念庭園のバリアフリー化」パート3の作庭において、授業のなかで生徒さん達が苦労したことや工夫したことなどを記述したいと思っています。  

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 総感想

 ここの記念庭園において、同窓会記念館の縁側からの眺望は、和の心がいっぱい詰まった日本庭園でありますから、この記念庭園(日本庭園)をバリアフリー化して、高齢者や車いす利用者が容易に庭園内を散策できるようにすることは大変難しいことであると思っております。と言いますのも、「和の心」と「バリアフリー化」というのは真反対に位置する考え方だと想像しているからです。

 日本庭園に、インターロッキングブロックを使用すること事態とても斬新なことだと思っています。このことについて、様々なご意見がありましょうが、今まで中規模以下の日本庭園のなかに、ほとんど車いす利用者が入って行けませんでしたので、車いす利用者の小生にとっては大変有難いことであります。
 記念庭園のバリアフリー化によって、皆さんと同じように庭園内で周囲の眺望を楽しみながら散策することができるのですから、車いす利用者にとっては楽しみが多い大変有難いことです。

 ですから、この記念庭園のバリアフリー化を始めた当初から、「和の心が詰まった日本庭園」と「バリアフリー化」との融合が課題でありました。
 和の心を崩さないようにバリアフリー化するためには、どのような心配りが必要かを考えながら作庭に取り組んで来ていると感じております。

 一昨年度は、記念庭園内において、「あずまや」までのスロープの園路にインターロッキングブロック施工をして、車いす利用者が「あずまや」まで上がれるようにしてくれました。昨年度は、「あずまや」の床を三和土(たたき)仕上げに改修し、築山の先まで車いす利用者のために幅を確保しながら、インターロッキングブロック施工の園路をのばし休憩場所となる広場をつくってくれました。

 さて、今年度の施工地は、昨年度に引き続き「同窓会記念館」に隣接する「記念庭園」で、その「バリアフリー化」パート3ということですが、昨年度作庭した広場から二方向に園路をのばし、ヤエザクラの木の周辺で合流するまでを施工してくれました。

 本日、記念庭園内の今年度施工した場所を見渡して、園路のインターロッキングブロックは昨年度と同様に目立たない渋い色合いにしていました。二つのスロープは、車いす利用者のために勾配1/15以下になっています。池沿いの園路は、一部木の根の都合で幅1mになっていますが、おおよそゆったりとした通路幅になっておりました。

 今年度施工した場所は、記念館の縁側から直接ブロックは見えていませんが、来年度は「記念庭園のバリアフリー化」パート4として、縁側からの眺望のあり方を考えなければなりません。その他記念庭園全体の和の心とバリアフリー化との融合の集大成ということになろうかと思っています。

 これほどまでに、日本庭園をバリアフリー化させた庭園を今までに見たことがありません。国内で初めてかもしれませんが、日本庭園の新しいかたちを提示したバリアフリー庭園が完成しつつあるのではなかろうかと思っています。

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 概要と感想

 左上写真Aは、興陽館側からの入口から、記念館玄関への通路を撮影したものであります。

 今年度作庭の延段(のべだん)は、面の平らな石を敷き詰めたもので、茶庭や玄関前などに作られる敷石園路の一つのようです。板石(長方形・正方形)と小さな平石や張り石との組み合わせが上手かどうかで、仕上がりに大きな違いが出るようですが、とてもバランスの良いデザインになっていると感じています。

 ここはもともと興陽館側からの入口から、記念館玄関まで飛石の園路でした。記念館の西側に茶室があり、お茶を嗜む者にとってみれば、入口からの飛石に足を運びながら既にお茶の作法が始まっていると捉えることができるのではないかと思っています。ですから、記念庭園全体の一部と考えれば、ここを園路と捉えておりました。

 しかしながら、飛石から延段(のべだん)にしたり、玄関横のテラスにテーブルといすを置いたりしていますので、ここのスペースは完全に洋風になってしまいました。ですから、ここだけ園路ではなく通路と捉えることにしました。

 石と石の間の目地は深くならないように工夫してありました。
 大きな石の天端は研磨されていましたが、小さな石の天端部分の研磨すべきヶ所が未だ残っていました。すり足歩行の高齢者には危険でありますので、来年度持ち越しの課題でもあると思っております。

 中央上写真Bは、中央スロープとヤエザクラの木と池ですが、この景観がとても気に入っております。
 中央スロープの右側の石積みで、石を割って合端(アイバ)をあわせたとのことですが、割った石と石の角度を合わせるのが難しかったようです。 

 右上写真Cで、尾畑先生にカラーンコーンを移動してもらい、来年度施工予定の園路(砂地)から池沿い園路と中央スロープを撮影したものです。砂地のなかに車いすで入って行けませんでしたので、尾畑先生に撮影を頼みました。感謝。

 園路の排水としては、横方向に微妙に勾配がついているとのことです。

 なぜ、ここまで日本庭園をバリアフリー化しようとするのかを先生にお尋ねしたところ、人が入って行けない殺伐とした庭園よりは、誰でもが庭園に入って行けて楽しく散策できるほうが庭園にも人にも良いのではないかと思っています。という言葉が返ってきました。

 私は、車いす利用者になる前から日本庭園が好きでしたが、園路の幅が狭かったり飛石などの段差があり、車いすでは入って行けない場所として認識しておりました。
 ですから、車いす利用者は、作庭当時の日本庭園に入って行けないのは仕方のないことだと思っておりました。

 これまでの「記念庭園のバリアフリー化」の施工場所を見て、田中先生のお言葉に深く感銘してしまいます。日本庭園への思いとバリアフリー化への発想の転換が、既存の日本庭園を超越しているように感じてしまいます。

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 最後の感想

 今年度の最後の授業は、今年度作庭の施工地を見学した後で、記念館のなかに車いすに乗ったまま入れてもらい授業をしました。生徒さん達は、お庭が見える方向で畳の上に座り、低い机を利用して口述を筆記しておりました。

 何よりも、記念館のなかに入って行けるなんて思っていませんでしたし、縁側から記念庭園を観賞できるなんて想像していませんでしたので、大変感激してしまい何枚も写真撮影してしまいました\(^o^)/

 振り返ってみますと、今年度当初のお話では、記念庭園のバリアフリー化は今年度で完成する予定だったように記憶しております。
 しかしながら、慈圭病院に8m×8m区画で二つの庭園(「モミの木を中心にした作品」と「竹のトンネルの作品」やその他の校外実習に時間をとられてしまって、今年度はヤエザクラの木の周辺までとなりました。

 生徒さん達も、池への転落防止の柵まで完成したかったようですし、私も第二回目の授業に参加できませんでした。なかなか計画通りに行かなかった年だったように思います。

 記念館前の大きな飛石の周りを延段(のべだん)にした通路や、記念庭園内の二つのスロープのインターロッキングブロック施工の園路も大変美しい出来栄えだと感心しております。

 今年度のキャスター止めは丸太を横に重ねたものですが、ここのバリアフリー庭園全体で初めてのキャスター止めのやり方であります。
 このような発想がどこから湧いてくるのか、田中先生に訊ねてみました。 先生方が幾つかのキャスター止めの選択肢を提示し、生徒さん達が施工の時間を短縮するために丸太を横に重ねる方法を決めたようです。先生方に技術力がなければ、様々な施工方法の提示ができないだろうにと、再度先生方の指導力に感心しました。

 今年度は二段(丸太の直径7cm×2=14cm)ですが、最終的に来年度は三段(21cm)になる予定ですと田中先生が話してくれました。勿論腐らないように防腐剤を塗っております。

 右上写真Cの通路のインターロッキングブロック施工の続きとして、来年度は雪見灯籠があるところまで園路を延ばす予定になっています。記念庭園の縁側から見える園路のブロックの色合いをどうするのか、池への転落防止柵をどうするのか。来年度の生徒さん達と相談して決めたいと尾畑先生が話してくれました。

 このページで、生徒さん達の技術力と熱い思いと感性作庭の過程で知っていただけたら幸いであります。

 どうぞ、お時間がありましたら、一昨年度(平成28年度)の「記念庭園のバリアフリー化パート1」のスロープから、昨年度(平成29年度)の「記念庭園のバリアフリー化パート2」のあずまやで休憩して、今年度(平成30年度)の「記念庭園のバリアフリー化パート3」の二つのスロープからの眺望も楽しみながら園路を進んでみてください。(但し、記念庭園のバリアフリー化は施工途中でありますので、今年度作庭の施工地まで進めない場合があるかもしれません。)

 それから、案内板が設置された10のバリアフリー庭園そして「50周年記念庭園のバリアフリー化パート1」・「50周年記念庭園のバリアフリー化パート2」と「香楽園(こうらくえん)」、「クジラの庭」の奥にあります「LINK〜時を刻む〜」、体育館前にあります「鳥達の集う滝」などで、ゆっくりと歩みを進めて気持ちをリフレッシュさせていただきたいと思っております。

 毎年度ながら、庭園の設計・施工の実習授業で、これほど素晴らしい庭園をつくりあげてしまう生徒さん達を指導する興陽高校の先生方の奥深い考え(生徒さん達の自由な発想の重視と日本庭園の新しいあり方など)や指導力や技術力の高さにあらためて感服致しております。

 ※施工の過程については、ページの一番下からみてください。 

岡山県立興陽高等学校
  住 所 : 岡山県岡山市南区藤田1500
  電 話 : 086-296-2268(代表)
  URL  : http://www.koyohigh.okayama-c.ed.jp/

 「造園デザイン科 第3学年 庭園施工管理類型 16名(女子生徒 5名)」

 (造園デザイン科 科長 尾畑篤司先生、藤本泰史先生、板野阿貴子先生、田中賢造先生、太田貴久先生、スペシャリスト:佐伯義也先生

 内閣府特命担当大臣表彰優良賞受賞(平成19年度バリアフリー化推進功労者表彰) 受賞者一覧

山陽学園大学
  住 所 : 岡山市中区平井一丁目−14−1
  電 話 : 086-272-6254(代表)
  FAX  : 086-273-3226
  URL  : http://www.sguc.ac.jp/

  地域マネジメント学部 地域マネジメント学科
 
  澁谷俊彦教授 (岡山県環境審議会景観部会長、倉敷市伝統的建造物群等保存審議会会長)

 

平成 31年 2月 27日 撮影 

D、記念館玄関前テラス  E、スロープ下りと広場  F、広場からスロープの上り G、スロープ下の広場から園路 
尾畑先生 撮影      

 概要と感想 

 2月4日(月)に、今年度施工の記念庭園のバリアフリー化P3の施工が終了しましたと、尾畑先生から連絡がありました。
 2月は来年度入学する生徒さん達の入学試験やその他の準備に日程が計画されていて、 今年度施工の記念庭園バリアフリー化P3の状況を、本日観ることができました。

 左上写真Dは、記念館玄関前の敷石にテーブルといすが置いてありました。ここだけ洋風のような感じがしますね(^_^)
 記念館玄関とテラスの両方を入れて撮影するためには、車いすでは入っていけませんでしたので、尾畑先生に撮ってもらいました。感謝。

 テラスというのは、建物の軒下からはみ出た部分などで、地盤面よりも一段高くなったスペースのことを言います。左上写真Dは、やや上から撮影していますから分かり辛いかもしれませんが、玄関前通路の面よりも少し高くなったスペースにテーブルといすを置いてあります。通路とテラスの境目は段差をつけない様に勾配をつけて工夫しているようです。

 中央上写真Eは、スロープを下って行くと車いすと車いすがすれ違うことのできる広場があります。生徒さん達の下記レポートにより、丸太の直径が7cmで二段重ねになっていますので、キャスター止めは14cmの高さになっていました。広場のスペースサイズは3.40m×3.80mと、車いすと車いすがすれ違うことのできる十分なスペースがあるようです。

 中央上写真Fは、今年度作庭の広場から、スロープの上りを撮影したものです。スロープの勾配は、底辺の長さ550cm ÷ 高さ36.1cm =勾配1/15.23となるようです。

 右上写真Gは、スロープ下の広場から池沿いの園路を撮影したものです。奥に小さく赤色のカラーコーンが見えておりますが、この辺りまでが今年度施工の園路となります。園路は赤色のカラーコーンより先にものびていますが、来年度施工予定となっております。この池沿いの園路はずいぶん長いと感じるのですが、インターロッキングブロックの下地となる砂が既に敷かれてありますので、砂の運搬にも大変苦労されたと思っています。

 この池沿いの長い園路に、クロガネモチやヤエザクラの木の根が出ていて、それを切って除去するのも大変苦労したようです。池沿い右の木はヒラドツツジですが、通行の妨げになるために切り込んで園路を広げたということです。

 左下写真Hは、池沿いの園路と中央スロープの両方を撮影したものです。二つの園路は、中央に見えていますヤエザクラの木の辺りで合流しております。このカラーコーンの手前は砂地になっておりますので、尾畑先生に撮影を頼みました。感謝。

 中央下写真Iは、今年度作庭の広場への池沿い園路を撮影したものであります。園路は池沿い側に、丸太が二段重ねになっていますので、キャスター止めは14cmの高さとなりますが、反対側は土をかためたままとなるようです。
 また、丸太を重ねてキャスター止めにしていますが、1月25日の授業参加の時に高さが足りなかったヶ所には、丸太を重ねましたと説明がありました。

 右下写真Jは、中央スロープの上りの様子を撮影したものです。左側は石積みになっていますが、園路の右側は土をかためたままになっていました。雨が降り続いて、かためてある土がゆるんでしまって、ブロックが移動しないかどうか少し不安であります。

 記念庭園はバリアフリー化によって、高齢者や車いす利用者や子供さん達などが、周りの景色を見渡しながら園路を容易く移動できつつあると感じております。

H、池沿い園路と中央スロープ  I、広場への池沿い園路  J、中央スロープの上り 
尾畑先生 撮影     

 

平成 30年 1月 25日 撮影

K、玄関前通路 L、中央のスロープ下り M、広場へのスロープ下り N、池沿いの園路 

 概要と感想

 澁谷先生とともに、早目に今年度の施工地に到着しましたので、今年度施工された場所を先ずは撮影してみました。
 上下の写真は、今年度授業参加の最後の本日撮影したものです。

 今年度は、記念庭園バリアフリー化P2の広場から二方向に園路を延長し、ヤエザクラの木の辺りで合流したところまでの園路が施工場所となっております。残念ながら池沿いの園路に、ブロック施工が残っておりましたので、今年度施工予定については、まだ終了しておりませんでした。

 本日は、今年度最後の授業参加でありますが、明日から3年生は最後のテスト期間に入るということで、本日が最後の実習授業となるようです。

 左上写真Kは、記念館玄関前の通路で、ほぼ出来上がっているように私には見えました。但し、澁谷先生から、つま先が上がらない「すり足歩行」の高齢者のために、通路の延段のなかで出っ張った石の角のところを、グラインダーで削り滑らかになるようにとのアドバイスがありました。

 中央上写真Lは、記念庭園バリアフリー化パート2の広場から、中央スロープの下りを撮影したものです。右側は、石積みでキャスター止めにしているのが分かると思います。機械が入って行けませんのでチェーンブロックで、石を動かしながら作業したのも苦労したようです。
 左側は、盛り土にしているようですが、時間が経つと土がゆるんでブロックがずれるのではないかと懸念しています。

 中央上写真Mは、記念庭園バリアフリー化パート2の広場から、今年度バリアフリー化パート3の広場へのスロープ下りの模様を撮影したものです。広場のインターロッキングブロック施工は終了していました。丸太を重ねてキャスター止めが作られていましたが、部分的にキャスター止めの高さ不足のところがあるように感じました。
 キャスター止めの丸太は、付け足して積み上げることができると、田中先生から説明がありました。

 生徒さん達は、スロープの勾配に合わせて、カーブした所や水平のところの下地づくりが難しかったようです。゙

 右上写真Nは、池沿いの園路であります。今年度は、中央のスロープと合流するヤエザクラの木の辺りまでが今年度の施工予定となります。赤色と白色のカラーコーンが見えていますが、この辺りに少しだけ施工が終了していませんでした。
 カラーコーンの先から大きな雪見灯籠のところまで、丸太を重ねてキャスター止めが作られており、ブロック施工の下地の砂が既に敷かれていましたが、来年度施工予定地となります。
 今年度の生徒さん達は、池への転落防止柵に透かし垣(金閣寺垣・四つ目垣など)を考えていたようですが、来年度へ持ち越しとなったようです。

 左下写真Oは、今年度バリアフリー化パート3の広場へのスロープ下りを、生徒さんが試走しているところであります。車いすの乗り心地や勾配について聞きましたところ、どのように答えたら良いのか困っているように見えました。他の様々なスロープを試走したわけではないらしく、比較して答えるのは難しかったのかもしれません。

 右下写真Pは、板野先生(左端緑の上着)と藤本先生(中央緑の上着)、スペシャリストの佐伯先生(中央)、そして尾畑先生(右端)が、この後の授業の進行について確認しているところだと思います。

(授業の出席者:尾畑先生、藤本先生、板野先生、吉村先生、田中先生、太田先生、佐伯先生、と生徒さん達:15名(女子性徒 4名)、(風邪で一人欠席)

O、生徒さんが下りを試走  P、先生方の打ち合わせ 

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 下記は、設計と施工について、平成31年1月19日以降に各代表の生徒さんが、庭園施工管理類型の生徒さん達の意見をまとめてくれたものです。
 別紙に、今年度バリアフリー化パート3の広場へのスロープと中央スロープのイラストを受け取りました。 

 右側の施工に関しての質問で、@の長いスロープは、池沿いの広場に下りるスロープのことです。Aの短いスロープは、中央スロープのことです。

 下記は、今年度の生徒さん達が、質問に答えてくださり、設計や施工の内容や気持ちについて詳細に教えて下さりました。
 私は、今年度の第二回目の授業に出席出来ませんでしたので、個々の施工について、改めて難しかった点や工夫した点が分かったような気がします。 

(平成31年1月25日 現在) 

設計責任代表者(井上 綾香 ・ 下見 真菜栄) 施工責任代表者(野田 一輝 ・ 原田 汐里)
 今年度の生徒さん達はどのような思いで、記念庭園のバ
リアフリー化P3の作庭を計画されたのでしょうか。
 設計に対する考えを記入してください。

@記念庭園(日本庭園)のバリアフリー化パート3として、今
年度はどのような庭園を計画しましたか。記念庭園と一体化
させるために気をつけたことはありますか。それぞれ詳細に
記述してください。

・2年間先輩たちが施工してきた展望できるスペースまで完
成していたので、その先を私たちで拡張した。

・インターロッキングブロックは、同色(2色)のものを使用し
た。

・園路幅を広めにし、2つのルートを考えた。

・桜(八重)の土留め部分のスペースに、他の花木を植えられ
るようにした。

・日本庭園の景観を壊さないようにした。

A誰のために、日本庭園をバリアフリー化しようとしました
か。池沿いの園路からの転落防止をどのように考えました
か。園路他で安全は確保されていますか。
 それぞれ詳細に記述してください。

・車イスを使っている人たちや高齢者の人、ベビーカーなど
を利用する人が、庭園の奥まで楽しめるようにした。

・転落防止には、長くもつ擬竹(人工竹)を使ったらと思う。

・園路沿いは、四ツ目垣や金閣寺垣のような透かし垣にする
といいと思う。

・勾配をもっとゆったりととれたらよかったと思う。

Bスロープを二つ作った理由は何ですか。なぜ玄関前通路
をバリアフリー化したのですか。建物内に車いす利用者が入
れるのですか。それぞれ詳細に記述してください。

・右側からと左側からの二つの園路で、違った風景を楽しん
でもらいたいから。

・もともと飛石だったので、車イスを利用する森本先生や足
の不自由な人、様々な方に歩きやすく記念館から日本庭園
を観てもらいたかったから。

・記念館内へは、今考えていますが、中で茶会などでも車イス
を利用している人が参加できるように、玄関を仮設スロープに
するなど、介助してあがれるようになればいいと思う。

C園路幅と車止め(種類があればすべて答えよ)は、どのよ
うに決定しましたか。ブロックの色合いや配置(デザイン)等
について詳細に記述してください。

・園路幅は、広い所では車イスと車イスがすれ違うできる幅
を確保し、狭い所でも車イス一台が通れる幅は確保されてい
る。

・車止めには、石・丸太杭・山土を使用した。

・インターロッキングブロックの色は、派手にならないように
土や樹木に調和するようにした。

・土を利用して車輪がブロックからはずれてもいいようにした。

D今年度の生徒さんらしさを出したヶ所がありましたら記入
してください。小さなことでもいいですから、庭園に対する思
い入れを書いてください。

<生徒らしさ>
・玄関前は、一人でも多くの人に立ち入ってもらえるように張
り石をして、今までにないことをした。

・園路を散策できるように2つのスロープをつくり、庭園内を広
く見渡せられるようにした。

・玄関前の張り石に、一ヶ所遊び心ある模様を加えた。

・先輩方がつくった葉っぱの板石を使用しテラスが完成した。

<思い入れ>
・初めての作業が多かった。

・できれば、園路を転落防止の垣まで完成したかった。

・長く残ってほしい。
 今年度の生徒さん達はどのような思いで、記念庭園バリアフリー化P3の施工を
されたのでしょうか。施工に関して難しかった点や工夫した点を教えてください。


@長いスロープについて、長さ・幅・勾配と、スロープ下のスペースについて教えて
ください。車止めや転落防止や工夫した点についても教えてください。

スロープ長さ:( 別紙@ 5.50 m  )  幅:(  1.70 m   )
  〃  勾配:(約 1:15.23 )スペースサイズ(3.40m×3.80m=12.92u)
・車止め高さ・材質と転落防止について:(車止め 丸太14cm )

●施工で難しかった点や工夫した点:

○難しかった点:
・勾配にあわせた下地づくり。
・カーブした所(下のスペース)は、水平をとるのが難しかった。

○工夫した点:
・丸太と石積みで脱輪を防ぐ。スペースを広くとった。勾配。

A短いスロープについて、長さ・幅・勾配について教えてください。車止めや転落防止
や工夫した点についても教えてください。

スロープの長さ:(別紙A  @3.40m  A2.8m)  幅:( 1.40〜 1.70m  )
  〃 勾配:(@約1:15.04A約1:15.05)車止め高さ・材質(石積み25cm土留め)

・転落防止について:(通路の横は、丸太や石積みで車止め役割りをもっているが、転落
防止の対策はできていない。 

●施工で難しかった点や工夫した点:

○難しかった点:
・石積みで石を割って合端をあわせた。石積みの高さをあわせること。
チェーンブロックを使っての石積み。

○工夫した点:
・踊り場をつくっている。丸太と石積みで脱輪を防ぐ。勾配(1:15)

B池沿い園路について、長さ・幅について教えてください。車止めや転落防止や工夫した
点についても教えてください。

池沿い園路の長さ:(   13.3 m                      )
園路幅:(  狭いヶ所 1.0m  〜  広いヶ所2.7m         )
1本の丸棒のサイズ:( 長さ 134cm   直径  7cm  )  
車止め高さ・材質:( 高さ 13cm 〜 19cm    材質  丸太 )

●施工で難しかった点や工夫した点:

○難しかった点:
・太い木の根(クロガネモチ・八重ザクラ)を取り除いたこと。

○工夫した点:
・車イスがすれちがえる場所をつくった。ヒラドツツジを切り込み園路の幅を
広げた。(柵にも利用)
・検定などで使用した丸太杭を再利用した。横方向の勾配。

C池への転落防止について教えてください。

池の深さ: (  泥〜5cm )  転落防止柵の高さと長さ:( 施工は来年度予定 )

・来年度、景観を楽しめるような柵をつくってほしい。
・透かし垣のようなもので丈夫なものが良いと思う。
・風景の一部としてみてもらえるものにしてもらいたい。
・竹や木材などの素材を使ってもらいたい。

●施工で難しかった点や工夫した点:

○工夫した点:脱輪防止のための丸太には防腐剤を塗っている。

D玄関前の通路について、苦労した点や難しかったところを詳細に教えてください。

通路の長さ: (  11.7m  )  幅:(  1.1m 〜  1.8m    )

・通り目地や、四ツ目地にならないように施工した。
・もともとあった飛石を利用したところ。
・目地は深すぎないようにした。
・モルタルで水の量が違うと施工が難しい(やわらかいと石が沈む。かたいとくっつかない)
・板石の高さを決めること。何度かやり直したところ。張り石の撤去が大変だった。
・石材の種類にこだわりすぎた。

E景観で工夫した点や、小さなことでもいいですから、作庭過程で難しかったところ
や工夫したところを書いてください。(ブロックの色・砂やブロックの運搬・園路全体の
ブロックをフラットにするために工夫した点等)

・車イスを利用している人が、安心して通れるよう段差や幅に注意をしながら施工した。
・張り石の目地をできるだけそろえること。日本庭園の景観をくずさないようにした。
・通路とテラスのつなぎ部分の張り石が難しかった。
・通路の配水にも注意した(雨水マス)。

 概要と感想

 左下写真Qは、記念館の玄関で、車いすで建物内の廊下に上がるために仮設のスロープを田中先生が作ってくれました。このスロープによって、上がり框の段差を乗り越えることができました。生徒さん達が、明日から期末テストということもあり、時間的な余裕がなかったので、田中先生が木製スロープを作成してくれたようです。スロープ両側には、転落防止のキャスター止めがありました。木製で強固なスロープでありました。感謝。

 尾畑先生が、車いすを押してくれて廊下まで上がり、タイヤ(キャスターと後輪)をタオルで拭いてくれました。感謝。
 靴を脱いで、縁側まで移動できました。

 中央下写真Rは、記念館の縁側から雪見灯篭とその左側に園路が観えております。縁側から少し園路が観えますので、記念庭園全体の融合を考えて、来年度の施工でブロックの色合いをどうするか、来年度の生徒さん達と相談したいとのことでした。

 中央下写真Sは、記念館の縁側から記念庭園全体を見渡したものですが、庭園の横幅広く入りきらない部分があります。左端に、来年度施工予定の園路が見えております。右端には、大きな石灯籠が半分見えております。この大きな石灯籠の右側に「あずまや」が見えます。この写真の手前には、沢飛石(さわとびいし)や石橋が見えます。実際に、この景色を観ることができて大変感激しております。感謝。

 右下写真Tは、記念館の縁側から記念庭園の小さな滝口を撮影したものです。写真中央に滝口が見えております。記念館の縁側から記念庭園を観た時に、この滝口を中心として記念庭園全体を見渡すのが一番良い眺めではないかと田中先生が話してくれました。

 記念館は二部屋の畳の和室と廊下でなりたっていますが、掛け軸がある部屋の上座から記念庭園が一番眺めが良いように設計されているとも、田中先生からお聞きしました。

Q、玄関の仮設スロープ R、来年度施工予定園路  S、記念庭園全体  T 、記念庭園内の小さな滝口

 

平成 31年 1月  19日 撮影

U、玄関側から撮影した通路 V、施工中の中央スロープ W、広場へ下るスロープ X、施工中の池沿い園路 

 概要と感想

 今年度最後の授業参加の前に、記念庭園内のインタロッキングブロックの施工状況が気になって見に来ました。

 今年度施工予定の園路のキャスター止めは、中央のスロープには右側に石積みをし、広場へのスロープや池沿いの園路には丸太を何段か重ねたものになっていました。
 今年度施工予定の池沿いの園路で、幅が一番狭いヶ所はヤエザクラの木の周辺で1mとなっているようです。

 左上写真Uは、記念館の玄関前の通路です。記念館玄関前から興陽館側の方を撮影したものですが、車いすで移動できるようになっていました。
 玄関は引き戸になっていましたが、なかを見ることはできませんでした。建物内玄関に段差があるのは予想されますが、スロープを作成し車いすのタイヤを拭いて縁側まで行けるようにしたいと尾畑先生が話してくれました。
 玄関内の様子が分からない私にとっては、半信半疑にしか思えませんでした。

 中央上写真Vは、中央のスロープですが、ほぼインターロッキングブロックが敷き詰められていました。
 二つのスロープのうち、片方は階段にするかもしれないと思っていましたが、両方車いすで移動し易いようにスロープになっていました。なぜ二つともスロープにしたのかを聞きますと、どちらのスロープを選択したとしても、そのスロープからの眺望を車いす利用者に楽しんでほしいということでした。

 中央上写真Wは、今年度の広場の方へ下るスロープであります。広場のインターロッキングブロック施工は終了されていました。

 右上写真Xは、施工中の池沿いの園路ですが、まだまだこれからというところでありました。池沿いの園路から池への転落防止柵として、竹の垣根を考えていますと尾畑先生が話してくれました。

 左下写真Yで、ヤエザクラの木の後ろに立っておられるのは尾畑先生です。池沿いの園路と中央スロープとの合流場所に、尾畑先生に立っていただきました。今年度のインターロッキングブロック施工はここまでということで、分かりやすいように立っていただきました。
 ヤエザクラの木の合流地点より先から、記念館縁側に近い園路までは、来年度施工となる予定ですと、尾畑先生から説明がありました。

 右下写真Zは、玄関前横にちょっとしたスペースがあるのですが、葉っぱ模様の敷石になっていました。テラスとして、テーブルといすを置くとのことです。

 来年度、記念庭園のバリアフリー化として最後の年になるようですが、4年間分の石碑を作る予定にしているということです。

 ○設計と施工の質問用紙を、板野先生に渡しました。

Y、施工予定地と尾畑先生  Z、玄関横テラスの葉模様

 

平成 30年 11月  29日 撮影 

AA、記念館の玄関前通路  BB、広場へのスロープ CC、広場へのスロープ拡大  DD、二つ目の中央スロープ 

 概要と感想 

 今年度は、10月の第二回目の授業に、残念ながら出席できませんでした。施工状況が気になっていましたので、尾畑先生に時間をとってもらい11月下旬に施工地を訪問してみました。

 今年度は、玄関前の通路、記念庭園内で昨年度施工した広場から二つのスロープと池沿いの園路をつくるということですが、園路のかたちがおおよそ見えてきています。

 畳み敷きの和室がある記念館では、お茶会を催したりするようです。下写真SSのように記念館玄関前は、飛石になっています。この玄関前の道を、記念庭園全体の一部として園路と呼ぶべきか、改修して飛石から延段でフラットになりますので、ここだけ通路と呼んでもいいのか、若干呼び方に迷うところであります。

 それから、記念庭園内の施工場所は、狭く高低差があるので機械を入れられないですから、土の撤去やインターロッキングブロック施工の下地となる砂は一輪車で移動したようです。下写真から分かりますように、土を除去したり、長い園路に敷き詰める砂の運搬に大変苦労をしたようです。

 左上写真AAは、興陽館側からの記念館玄関前通路を撮影したものです。小さな飛石を取り除き、大きな石の天端に合わせて延段の施工をしていました。長方形の大き目の板石と、大きな飛石のかたちに合わせて、小さ目の平石を周りに配置しておりました。
 モルタルで石張りをしたのですが、モルタルに混ぜる水の分量が多ければ軟らかく石が沈んでしまうし、かたいと石がくっつかないなど、適当な水の量を見つけて施工するのが難しかったようです。

 記念館は日本家屋でしょうから、入口から段差があると予想されますが、生徒さん達は私に縁側から庭を見せたいと思っていると尾畑先生から聞きました。大変嬉しいのですが、玄関内にあると思われる段差を、どのように解消するのか不安でもあります。

 中央上写真BBは、二つのスロープの一つですが、下ると車いすと車いすがすれ違うことができる広場が写真の奥に見えております。ブロックが積み重ねられていて、まだまだインターロッキングブロック施工の途中でありました。
 園路のインターロッキングブロックの量が、昨年度と比較して約2.5倍になるということですが、土の除去や下地となる砂の量も増えるということになると思います。作業量が大変多くなると予想されますが、実習時間内でできるだろうか不安がよぎります。

 中央上写真CCは、中央上写真BBを拡大したものですが、広場のスペースはまだ砂地になっておりました。キャスター止めとして、丸太を横にしたものが3段に重ねていたものが見えておりましたが、ブロックを置くとキャスター止めは二段となると想像しております。

 右上写真DDは、中央のスロープになるはずのスペースですが、右側に石積みされたキャスター止めが見えております。園路はまだ土のままで、これからインターロッキングブロック施工がなされるようです。

 左下写真EEは、中央にヤエザクラの木が見えておりますが、現在はインターロッキングブロックの下地となる砂が敷かれておりました。左側の池沿い園路と中央スロープとがヤエザクラの木のところで合流することになっているようです。

 中央下写真FFで、右側に池が見えております。中央に池沿いの園路が見えております。ここも現在は、インターロッキングブロックの下地となる砂が敷かれておりました。
 池への転落防止については、来年度に持ち越しになるように尾畑先生からお聞きしました。 

 右下写真GGは、今年度池沿い園路の最終地点になるのでしょうか。ここの場所は、記念館の縁側から見えそうな気がするのですが、どのように記念庭園全体の一部として施工されるのか興味深い場所でもあります。
 今年度は、昨年度の広場から二つのスロープを作り、雪見灯籠のところまで園路をのばす予定だということです。

 下写真は、砂地だったり角度的に車いすで入っていけない場所なので、写真を尾畑先生に撮ってもらいました。感謝。

EE、園路合流  FF、池沿いの園路  GG、園路の最終地点?
尾畑先生 撮影  尾畑先生 撮影 尾畑先生 撮影

 

平成 30年 6月  1日 撮影

HH、広場から池沿いの園路へ II、池沿いの園路 JJ、池沿いの園路 KK、中央園路の様子
尾畑先生 撮影  尾畑先生 撮影  尾畑先生 撮影  尾畑先生 撮影 

 概要と感想 

 私は、日本庭園が好きで、時々車いすで入れそうな庭園を訪れます。
 車いすで入れるということは、広い庭園の場合が多いのですが、後楽園にも時々行きます。 後楽園の園路は土なので、雨降りや降った直後に車いすを走らせると、土がタイヤから上がってきて手や衣服が汚れてしまうので、雨降り直後は訪問しないようにしています。

 と生徒さん達に話しましたが、帰ってから調べてみますと、平成28年10月頃に岡山後楽園の園路を、「ジオベスト」を使用した土舗装にしたという記事を見つけました。どのようなものかというのは秘密だそうですが、雨降り直後に訪問しても以前よりは、車いすで走り易いかもしれません。

 また、京都の二条城の二の丸御殿の手前や宇治市の平等院(十円玉硬貨の図柄)では、広い園路に小さな石を敷いてあります。車いすの前輪がめり込んでしまい前に進めないので、キャスター(小さな前輪)を上げで後輪だけで走らせるという方法(車いす操作の仕方参照)もありますが、介助者のテクニックと力を必要とします。
 平等院の入口では、幅の広い前輪がついている車いすを貸してくれますが、私の場合は乗り換え困難で断念しました。

 日本庭園内で、車いす利用者がいつでも容易く移動できる時ばかりではないというのが現状であります。記念庭園バリアフリー化パート1とパート2とともに、今年度の記念庭園バリアフリー化P3が、日本庭園との融合においてどのようになるのか大変気になるところであります。

 ここの記念庭園は、昭和36年にできたものですが、日本庭園としてのつくりが大変こったもので、大きな石灯籠・池・飛石・大きな石の配置・植栽・小さな滝など、その当時大変熱い思いで作庭された庭園だと推測されます。バリアフリー化P1とP2の場所から庭園が見えますが、とても素晴らしい日本庭園であると感じております。

 よりバリアフリーになれば、車いす利用者にももっと庭園の素晴らしさが感じられると思います。今年度のバリアフリー化P3では、P2の広場からさらに園路をのばす予定にしているようです。
 個人的には、特に記念館の縁側から見える範囲は、日本庭園の景観を壊さないようにバリアフリー化してもらいたいと願っております。

 本日は、私が造園実習室から今年度の施工地に移動している間に、庭園内の写真を尾畑先生に撮影してもらいました。感謝。

 昨年度バリアフリー化パート2で作られた広場から、今年度は園路を2方向に延長する予定になっているようです。

 左上写真HHで、写真奥の池沿いの園路に行くためには、写真で分かりますようにやや高低差があるのが分かると思います。ここはスロープになると想像しているのですが、杭が打たれていておおよその園路のかたちを想像させてくれます。

 中央上写真IIで分かりますように、右側にヒラドツツジが見えていますが、この低木の右側に池があります。杭が打たれていて、低木の左側が園路になる予定にしているようです。

 中央上写真JJで分かりますように、園路を作るために杭打ちされていますが、車いすが通行できる園路幅を確保するには、左側の木の根を切断しなければならないと想像しています。木の根を切断すると言っても、簡単には行かないと思うのですが、実際に確認していないので何とも言えません。

 右上写真KKは、もう一方の園路をサイドから撮影したものです。写真の奥でやや暗闇になっているところに、昨年度修復した大きな石灯籠が見えております。

 左下写真LLは、広場からの記念庭園の中央に園路をつくろうとしています。写真からは分かり辛いかもしれませんが、赤い水糸を張っていました。水糸は、高さやものを作るラインなどの目安にするために張るようです。

 右下写真MMは、記念館玄関前から興陽館側の方を撮影したものであります。興陽館側から車いす利用者が記念館の玄関まで行けるようにしてくれるようです。

 第一回目の本日は、バリアフリーとUD(ユニバーサルデザイン)について、造園実習室にて説明し、過去のバリアフリー庭園の感想とバリアフリーとUDとの違いについて、見本庭園前にて話しました。
 最後に、昨年度作られた(バリアフリー化P2で作った)広場にて、今年度施工予定の2つの園路を見ながら、池沿い園路には転落防止柵を作って欲しいとか、スロープ勾配や車いす止めや通路幅等についてアドバイスをしました。
 (生徒さんは16名(女子生徒 5名)でありました。) 

LL、広場から中央通路 MM、記念館玄関前から撮影
尾畑先生 撮影  尾畑先生 撮影 

 

平成 30年 5月 16日 撮影 

NN、広場から池沿いの通路へ OO、広場から中央通路 PP、合流予定 QQ、記念館の玄関前通路 

 概要と感想

 本日は、第一回目の授業参加の前に、記念庭園内の様子が現在どのような状態になっているのかを見に来ました。
 本日は、造園デザイン科の尾畑先生・板野先生・太田先生と、造園工学類型の吉村先生が応対してくれました。

 尾畑先生から、今年度は「記念庭園のバリアフリー化」パート3ということで、昨年度パート2で作られた広場から2方向に園路をのばす予定だと聞きました。
 日本庭園のなかで、どこまで車いすが通れる園路をつくってくれるのだろうか、大いに気になるところであります。

 左上写真NNは、昨年度施工の広場から池沿いの方へ向かう園路のようです。

 中央上写真OOは、昨年度施工の広場から庭園の中央に園路をのばす予定ということです。

 中央上写真PPは、昨年度施工の広場から2方向に園路をのばして、雪見灯籠の辺りまで園路をつくると聞きました。雪見灯籠の向こう側に分かり易いように、太田先生に立ってもらいました。

 右上写真QQは、興陽館側から記念館の玄関に行く園路でありますが、飛石が取り除かれて更地になっていました。記念館入口までの園路の整備を考えているようです。下写真のように飛石がありましたので、それを取り除く作業も大変労力がいったのではなかろうかと想像しております。

 左下写真RRは、施工前の玄関前園路であります。右下写真SSは、玄関前園路のアップでありますが、飛石があり車いすでは入って行けない場所でありました。

 第一回目授業参加の6月1日に訪問した時に、どのくらい作業が進んでいるのか楽しみであります。

 6月1日の第一回目の授業参加で、バリアフリーとユニバーサルデザインの説明ということで、岡山県作成のパンフレットがとても参考になりますので県庁で頂き、パンフレットを尾畑先生に渡しました。

(5階:保健福祉部障害福祉課にて、バリアフリーー社会のおもいやりのパンフ20部、バリアフリー社会をめざして(岡山県福祉のまちづくり条例の施設整備マニュアル)20部(コピー)を頂戴する。8階:岡山県 県民生活部 人権施策推進課にて、おかやまユニバーサルデザインのパンフ20部を頂戴する。

RR、施工前の玄関前園路  SS、玄関前園路のアップ 
平成30年3月23日 撮影  平成29年10月20日 撮影 

 平成31年 3月 下旬現在

 

バリアフリー庭園について 

まくあいのこかげの入口  各庭園のイラスト
平成26年3月31日 撮影  平成26年3月31日 撮影

※上写真は、バリアフリー庭園十ヶ所の位置と様子を描いた案内板ですが、「まくあいのこかげ」の入口にあります。

※案内板は、下記説明の「山野草園」「実のなる庭の実のなる木」「四季を彩る庭」流れのある庭」「バリアフリー展望台「友集の丘」和楽の庭」「見本庭園のバリアフリー化」「干拓地の生き物を知る」「万葉の小径」「まくあいのこかげ」の10庭園の位置情報であります。

 私はたまに京都の観光地(神社や寺)や町を散策することがありますが、古い建物とバリアフリーとの融合の難しさを感じます。ここの「バリアフリー庭園」では当初から和風テイストのうえにバリアフリーやUD(ユニバーサルデザイン)をうまく融合させているように思います。京都の観光地(神社や寺)や町とは趣が違いますが、和風テイストとともにここ独自の庭づくりに挑戦していて本当に素晴らしい庭(空間)が出来上がっていると感じております。

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 バリアフリー庭園は平成13年度から作庭していますが、高齢者や車いす利用者や視覚に障がいがある方そして子供さん達などが容易に庭園内を散策できるようになっています。
 このサイトでは3年目の平成15年度から庭園の紹介をしております。

 平成13年度の「山野草園」では「露地門」や「灯籠」や「水琴窟」、平成14年度「実のなる庭の実のなる木」では「四つ目垣」や「スロープ」、平成15年度の「四季を彩る庭」では「木製のかけ橋」や「石積み」や「花時計」、平成16年度の「流れのある庭」では「浅瀬の細長い池と石橋」や「乱杭(木製)で車いすの前輪止め」、平成17年度の「バリアフリー展望台「友集の丘」では「らせん状の石垣」と「長いスロープ」、平成18年度の「和楽の庭」では「石の顔」にこだわり「矢掛の青御影や万成石や豊島の石」などを配置したり、パーゴラと長いすの周りに集うことがでるスペースをつくったり「盆栽」置場として整備してきました。

 平成19年度の「見本庭園のバリアフリー化」では、「露地門」や「建仁寺垣」や「腰高麗袖垣」そして「山目地の工法による石畳のバリアフリー化」をし、平成20年度の「干拓地の生き物を知る」では、絶滅危惧種に指定されている魚や植物の保護のために細長い池をつくり、各庭園を石橋やインターロッキングブロック舗装で結び一つの庭として高齢者や車いす利用者や子供さん達などが容易に散策できるようにしました。

 平成21年度の「万葉の小径(まんようのこみち)」では、時という壁(バリア)を超えて万葉人(まんようびと)の心に触れられるような庭園をつくりました。石の桁と板をつかった橋や転落防止の竹の柵、インターロッキングブロック舗装、縁石・乱杭・低い四つ目垣・太い竹の車止めなど、これまでの庭園施工の技術面がまとめて取り入れられています。
 万葉集で詠まれた花を庭や植枡に植栽し、生徒さん達や先生方の短歌も紹介しています。

 平成22年度の「まくあいのこかげ」(「幕間の木陰はひらがなで明記」)は、バリアフリー庭園をつくり始めてこの周辺の区画では10年目の最後の年で、バリアフリー庭園全体の入口となる庭園をつくることになりました。車いす利用者が使用できる洗面台や子供さんのための足洗い場や長いす、滝や大きな樹木の木陰などがあり、皆さんがくつろげる広場となっております。

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 平成23年度は「50周年記念庭園のバリアフリー化」ということで、40年前に「50周年記念庭園」として先輩方が寄贈してくれた庭園を、先輩方の思いを大事にしたいと考え、噴水や樹木(ワシントンヤシ・フェニックス・ヒラドツツジ・サツキなど)を残しながら、いかに自分達らしい庭園のバリアフリー化をすることでありました。
 正面入口通路の他3つの通路も通路幅を広げゆるやかな勾配のスロープになっていて、噴水周りの通路とともにインターロッキングブロックを敷き詰めています。水槽の内側にネットを張って安全性を確保する方法に大変驚きそして大変感心いたしました。大変素晴らしいアイデアだと思っています。
 正面入口のアーチや屋外に常時設置の石のテーブルがあることで、癒される空間になっていますので高齢者・車いす利用者・子供さん達など皆さんがこのスペースで憩うようになると想像しております。

 平成24年度は「50周年記念庭園のバリアフリー化」に隣接するスペースで、こちらも「50周年記念庭園」として先輩方が寄贈してくれた庭園でした。「50周年記念庭園のバリアフリー化パート2」として作庭しましたが、平成15年度「四季を彩る庭」にある「かけ橋」の作り直し、大きな石の上に日時計がある石碑とその周り、そして大きな日時計がある広場など、離れた三ヶ所のスペースを施工しております。
 広場のインターロッキングブロック舗装にはハートマークを多用して、時には癒される空間、時にはアクティブな空間として、使用する人の気持ちしだいで様々な空間としての顔を見せてくれる楽しみな庭園であります。

 平成25年度「LINK〜時を刻む〜」は、中庭にあります「80周年記念庭園(くじらの庭)」の横区画のスペースで、庭園内に農業機械科の生徒さん達が製作した「UDのテーブル&いす」を置いたり、家政科の実習授業のためにカラフルな植筒にハーブの植栽や、支柱が御影石の大小の流し台を設置したりと、造園デザイン科だけでなくそれぞれの科との「つながり」を考えて作庭した庭園であります。

 クジラのいすやテーブルが置いてあるところから、周りが石積みされ中心に植栽された各樹木を見渡すことができ、春夏秋冬の時を刻むことのできるとてもゆったりした趣のある大変素晴らしい庭園になっています。 カラフルな植筒は、車いす利用者や背の低い子供さん達の目線の高さのことを考え、様々な高さにしています。

 平成26年度「香楽園(こうらくえん)」は、「香り」がテーマで多くの方がこの庭園内で季節に応じた花の香りを楽しめるようになっています。大き目の「植え筒」にはメインの樹木とその周りに寄せ植えの花があり、車いすで容易に近づいて花の香りを楽しむことができます。
 「50周年記念庭園のバリアフリー化パート1」と違和感なく融合して、教室の生徒さん達から見て、心が落ち着く癒される空間になっているのではないかと思っています。

 「緑のカーテン」とか、排水のために庭園全体に勾配がついていたりとか、言われて気が付くような細かなところにも工夫があります。
 コンクリート舗装の通路を板石の幅広い通路に変更しましたが、御影石の板石は、表面がツルツルで光沢がありましたが、安全のためにバーナーの火で表面を飛ばしザラザラになっていますので滑りにくくなっています。

 平成27年度「鳥達の集う滝」「クジラの庭のスロープ」は、80周年記念庭園の「クジラの庭」にスロープを二ヶ所つくるとともに、教室脇のコンクリートの廊下と庭の通路の段差解消ということでスロープをつくってくれました。

 また、「鳥達の集う滝」は、大きな石の配置を「天」「地」「人」の基本形をもとにして「滝石組」を作りました。水が流れるように「滝石組」の石を配置し、実のなる樹木を植栽して、その実を食べに来た小鳥の囀り(さえずり)が聞けるような庭になっていて、コンパクトなサイズの庭に盛沢山の工夫が凝縮された大変素晴らしい庭が出来上がっておりました。
 一日中観ていても飽きないと思わせるほど、大変素晴らしい風情がある滝石組だと感心しております。 

 平成28年度は、「見本庭園の東西の門」の作成、クジラの庭の頭側のスロープの改修、そして「記念庭園のバリアフリー化」パート1の三ヶ所です。第一回目の授業時には前記の二ヶ所は終了しており、三ヶ所目の「記念庭園のバリアフリー化」で、「あずまや」まで車いすで上がれるようにスロープを作ってくれました。そして、傾いた大きな石灯籠を修復しました。
 スロープの勾配は、1/15以下、 入り口からの園路幅は車いすと人とがすれ違える幅になっており、途中の2ヶ所の踊り場スペースでも、車いすと車いすとがすれ違うことができるようです。転落防止の竹垣やキャスター(車いすの前輪)止めとして太い孟宗竹を設置していました。
 同窓会記念館のお茶室を意識して、心を落ちつけ静かに庭のなかで楽しんでもらえるようなスロープにするために、ブロックの色合いは渋めにし「固まる土」などを採用しています。スロープの入り口から「あずまや」まで上がる過程について、皆さんが池周辺や大きな石灯籠や小さな滝などの風景が楽しめるよう、見え易くするために石を移動したり樹木の枝を切ったようです。

 昨年度は、引き続き「記念庭園のバリアフリー化」パート2ということで、「あずまや」の床(三和土)の改修と、「あずまや」西側の築山(つきやま)の土留めのために野面石積みをしました。野面石積みは、石一つ一つの顔の表情を生かしながら美しく積み上げております。それから、「しがらみ」の柵沿いの園路と広場のインターロッキングブロックは、機械を入れられず人の力だけの作業ですから、この園路のかたちをつくるまで、そして広場の盛り土をするために大変な労力がいったと想像しています。

 この築山の上に小石でつくったサークルがあり、その中央に記念樹のヤエザクラの木が植栽されています。柵の園路沿いにも2本目の記念樹が植栽されています。
 インターロッキングブロック施工も大変美しい出来栄えだと思うのですが、個々の「あずまやの三和土(たたき)」・「しがらみ」・「野面石積み」・「挿し石」などの伝統技術の質も高く大変美しいと感じさせてくれます。  園路は、「あずまや」西側の園路から広場まで、車いすで進んで行けるようになりました。

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 大変残念なことですが、平成22年度「まくあいのこかげ」・平成24年度「50周年記念庭園のバリアフリー化パート2」・平成25年度「LINK〜時を刻む〜」に設置されていた「休憩することができる建物」は、傷みが激しいということで現在は撤去されております。

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 区画ごとにテーマは違いますが、興陽高校では各庭園を「バリアフリー庭園」と呼んでおります。では、なぜバリアフリー庭園と呼んでいるのか。それは、物理面でUDを目指した作庭というだけでなく、バリアフリーをより広くとらえて、人の心・自然保護・伝統的文化・時を超えて歴史的文学や香り等、様々なバリアに対応しながら作庭に取り組んでいますので、この学校ではUDではなくバリアフリー庭園と呼んでおります

 また、造園デザイン科だけでなく農業機械科とのコラボや家政科との合同授業など、一つの学科にとどまらず他の学科との壁を作らないということでも、ある意味でバリアフリーであると考えています。

 どうぞ、「バリアフリー庭園」の個々の庭を散策して、生徒さん達の作品と「思いやり」を堪能していただきたいと思っております。

 

平成15年度「四季を彩る庭」  / 平成16年度「流れのある庭」 / 平成17年度の「バリアフリー展望台「友集の丘(ゆうしゅうのおか)」

平成18年度「和楽(からく)の庭」 / 平成19年度「見本庭園のバリアフリー化」 / 平成20年度「干拓地の生き物を知る

平成21年度「万葉の小径(まんようのこみち)」 / 平成22年度「まくあいのこかげ」 / 平成23年度「50周年記念庭園のバリアフリー化

平成24年度「50周年記念庭園のバリアフリー化パート2」 / 平成25年度「LINK〜時を刻む〜」 / 平成26年度「香楽園(こうらくえん)」 

平成27年度「鳥達の集う滝」「クジラの庭のスロープ」 / 平成28年度「記念庭園のバリアフリー化」パート1  / 平成29年度「記念庭園のバリアフリー化」パート2

平成30年度「記念庭園のバリアフリー化パート3」 / 令和元年度「記念庭園のバリアフリー化パート4」と記念碑周りの整備 

日本における住環境の現状 / 福祉住環境コーディネーター / 住環境の整備について

介護保険制度と住生活との関係 / 町角のバリアフリーの意識 / 住環境についての質問コーナー